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98.誰も反対しなかった理由
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誓約の儀が終われば、そこからは宴となる。昼間からワインや果実酒が振る舞われ、用意された軽食を摘んだ。形式ばったコース料理ではなく、並んだ大皿から好きなものを取り分ける形にしたのは、祝ってくれる人の大半が貴族ではないから。
彼や彼女らは心から私達の結婚を祝ってくれる。形だけ口先だけの貴族とは違う。だから、気兼ねなく手を出して食べられるよう、席を設けなかった。街の屋台のように、好きなものを持って空いているテーブルや椅子で食べられるように。
「夜会みたいね、晩餐会より素敵だわ」
意外にも王妃シャルロッテ様は大喜びだった。国王陛下も同じ。大公家に勤める庭師と薔薇の話で盛り上がっている。
「本来、ラインハルトは国王になるはずじゃなかった。第三王子で末っ子だからね。庭師の仕事を真似て遊んでいたっけ」
昔の話を懐かしむように口にしたヴィルに頷く。ロッテ様は用意された大きめのソファに腰掛け、楽しそうにお菓子を口に運んだ。最近は太り過ぎないよう侍医に食事制限をされていたとか。ここで食べてしまって平気かしら。
「安心して、今日くらいは平気よ」
ふふっと笑うロッテ様は、ぽんと大きなお腹を叩いた。心配なので近くにいた方がいいかしら。でもご挨拶もあるし。
「私がお側に控えております」
アンネがそう申し出たので、任せることにした。私とヴィルは腕を組んで庭の中を周り始める。大公家の臣下に当たる侯爵や伯爵が、こぞって集まった場なのだ。本邸に出向いていない今、顔合わせに最適だった。
お祝いの言葉を受けながら、誰もが歓迎してくれる。それが不思議だった。
「ねえ、ヴィル。私のことを嫌がる人っていないのね」
リヒテンシュタイン公爵家に嫁いだ後で、結婚を無効にして出戻った。そう判断したら、総領である大公家の嫁に相応しくないと考える人がいるんじゃない? 素直に尋ねたら、ヴィルは驚いた顔をした。
「いるはずがない。独身で過ごすと宣言され、一族の直系が絶えると青ざめていたんだ」
びっくりした私に、彼は困ったような顔で笑った。
「ローザと結婚できないなら、誰とも結婚しないつもりだったから。分家から養子を取ればいいと言ったら、精霊と交流できる血筋が絶えると泣かれた」
付け足された説明は続いた。今は血が薄まった一族の中で、精霊と交流する能力を持っているのはヴィルだけ。その彼が子を残さないなら、もう呪術は使えなくなってしまう。一族が弱体化すると嘆かれたらしい。それでも意思を曲げなかったヴィルが、突然妻にしたいと女性を連れてきた。
もう誰でもいいと大歓迎で、一族は湧き立った。さらに私が精霊を見て触れて話せる女性と知り、反対出来る親族はいないとか。血筋より実力を重視する呪術師らしいわ。
「王妃殿下?! お、奥様! 大変です。誰か、手を貸して」
叫ぶアンネの声に、びくりと肩を震わせて振り返る。先ほどまでケーキを美味しそうに食べていたロッテ様が、お腹を抱えて丸まっていた。
「ロッテ様!」
ヴィルと駆け寄った私は、すぐに気づく。これは……産まれるわ!
彼や彼女らは心から私達の結婚を祝ってくれる。形だけ口先だけの貴族とは違う。だから、気兼ねなく手を出して食べられるよう、席を設けなかった。街の屋台のように、好きなものを持って空いているテーブルや椅子で食べられるように。
「夜会みたいね、晩餐会より素敵だわ」
意外にも王妃シャルロッテ様は大喜びだった。国王陛下も同じ。大公家に勤める庭師と薔薇の話で盛り上がっている。
「本来、ラインハルトは国王になるはずじゃなかった。第三王子で末っ子だからね。庭師の仕事を真似て遊んでいたっけ」
昔の話を懐かしむように口にしたヴィルに頷く。ロッテ様は用意された大きめのソファに腰掛け、楽しそうにお菓子を口に運んだ。最近は太り過ぎないよう侍医に食事制限をされていたとか。ここで食べてしまって平気かしら。
「安心して、今日くらいは平気よ」
ふふっと笑うロッテ様は、ぽんと大きなお腹を叩いた。心配なので近くにいた方がいいかしら。でもご挨拶もあるし。
「私がお側に控えております」
アンネがそう申し出たので、任せることにした。私とヴィルは腕を組んで庭の中を周り始める。大公家の臣下に当たる侯爵や伯爵が、こぞって集まった場なのだ。本邸に出向いていない今、顔合わせに最適だった。
お祝いの言葉を受けながら、誰もが歓迎してくれる。それが不思議だった。
「ねえ、ヴィル。私のことを嫌がる人っていないのね」
リヒテンシュタイン公爵家に嫁いだ後で、結婚を無効にして出戻った。そう判断したら、総領である大公家の嫁に相応しくないと考える人がいるんじゃない? 素直に尋ねたら、ヴィルは驚いた顔をした。
「いるはずがない。独身で過ごすと宣言され、一族の直系が絶えると青ざめていたんだ」
びっくりした私に、彼は困ったような顔で笑った。
「ローザと結婚できないなら、誰とも結婚しないつもりだったから。分家から養子を取ればいいと言ったら、精霊と交流できる血筋が絶えると泣かれた」
付け足された説明は続いた。今は血が薄まった一族の中で、精霊と交流する能力を持っているのはヴィルだけ。その彼が子を残さないなら、もう呪術は使えなくなってしまう。一族が弱体化すると嘆かれたらしい。それでも意思を曲げなかったヴィルが、突然妻にしたいと女性を連れてきた。
もう誰でもいいと大歓迎で、一族は湧き立った。さらに私が精霊を見て触れて話せる女性と知り、反対出来る親族はいないとか。血筋より実力を重視する呪術師らしいわ。
「王妃殿下?! お、奥様! 大変です。誰か、手を貸して」
叫ぶアンネの声に、びくりと肩を震わせて振り返る。先ほどまでケーキを美味しそうに食べていたロッテ様が、お腹を抱えて丸まっていた。
「ロッテ様!」
ヴィルと駆け寄った私は、すぐに気づく。これは……産まれるわ!
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