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第一章
19.前哨戦が始まる
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オレの穴だらけの計画は、予想外にうまく回った。魔族の領域である黒い森に入ってくる大軍を感知した魔獣が、伝令を飛ばす。巨大な飛竜が気を引く隙に、小型の鳥達が複数飛び立った。飛んで来る矢を飛竜が叩き落とす間に、伝令の小鳥達は必死に距離を稼ぐ。誰かがたどり着けばいい。
魔獣であるとバレたら、魔石目的に殺される。その話は魔族の間で共有されてきた。生きたまま体を裂かれ利用されるくらいなら、と自爆を試みる者が出る始末だ。実際、回収した魔石を使って同族への攻撃魔術に使われると考えれば、自害の選択を責めることは出来なかった。
圧倒的不利な状況でも、互いに協力し合って仲間を守ろうとする。人間よりよほど情に厚いのが魔族で、彼らを見捨てる選択肢はオレになかった。訓練がてら森を駆けていたオレを見つけ、舞い降りた小鳥は鳩に似た小柄な種族だった。人間達が大軍で攻め込んだことを伝え、飛竜が囮になったと泣く。
「安心していいぞ。助けるから」
小鳥を近くの木の枝に下ろし、口笛を吹いて近くで狩りをする双子を呼ぶ。待っている時間が惜しいので先に走り出した。後ろから巨大な魔力が近づいてくる。黒狼のフェンリルだ。双子が後ろから追いつき、アベルがオレを咥えて投げた。くるっと回転して、後ろのカインの背に降りる。
「何度やってもドキドキする」
「僕らは落としたりしないよ」
「わかってるけどさ」
軽口叩きながらも、状況の共有をした。アベル達も別の小鳥から話を聞いたらしく、残りの小鳥は魔王城までの間にいる種族に報告しながら城を目指すらしい。オレ達が最前線に出れば、堰き止められる。人間を挑発して森の入り口で叩く案はリリィにより告知されたため、戦えない種族は城に逃げ込む手筈が整っていた。
「数はおよそ1000」
「ん? 意外と少ない」
「魔術師が30前後だとさ」
空から調べてくれたので、ある程度の布陣は確認済みだった。ばさっと飛竜の羽ばたき音が聞こえる。もうすぐ森を抜けそうだ。そこでカインとアベルが速度を緩めた。
人間は魔力に鈍い。オレは魔王城で暮らした期間で、魔力によって相手を見極める訓練をされた。そうでなければ、視力に頼って戦うしかないのが人間だ。
飛竜もランクがあり、いわゆる西洋風ドラゴンからワイバーンのような翼のみの軽い種族まで含まれた。通常の人間がお目にかかるのはワイバーンなので、今回のように上位のドラゴンが出現すると混乱するだろう。今のうちに作戦を確認してしまおう。
魔法で地図を作り上げる。立体の模型に似た地図は、オレの専売特許だった。何しろイメージ力が人間や魔族とは格段に違う。ゲームで鍛えた感覚はこの世界でも有効だった。敵の数を配置し、魔術師が目撃された場所を指さす。
「魔術師はオレが叩く。ど真ん中だったな」
「魔術師の壊滅を待って、中央を突破してUターンで追い込みだったか?」
歴史の授業で聞いた知識を披露して、彼らに中央突破作戦を提示した。多少危険を伴うが、双子は構わないと頷いた。というのも、フェンリルの毛皮は鎧以上でドラゴンの鱗並みの硬さを誇る。人間の攻撃で注意すべきは、魔石で魔力を補充した魔術だけなのだ。そこを先にオレが叩いたら……あとは蹴散らすだけだった。
わずか1000人の兵士で、オレ達3人を出し抜こうなんざ無理がある。にやりと笑ったオレに、頭上でドラゴンがぐぁああ! と声を上げた。どうやら彼女も協力してくれるらしい。力強い援軍に口笛で答え、オレは地図を消した。
「行こうぜ」
「「おう」」
魔獣であるとバレたら、魔石目的に殺される。その話は魔族の間で共有されてきた。生きたまま体を裂かれ利用されるくらいなら、と自爆を試みる者が出る始末だ。実際、回収した魔石を使って同族への攻撃魔術に使われると考えれば、自害の選択を責めることは出来なかった。
圧倒的不利な状況でも、互いに協力し合って仲間を守ろうとする。人間よりよほど情に厚いのが魔族で、彼らを見捨てる選択肢はオレになかった。訓練がてら森を駆けていたオレを見つけ、舞い降りた小鳥は鳩に似た小柄な種族だった。人間達が大軍で攻め込んだことを伝え、飛竜が囮になったと泣く。
「安心していいぞ。助けるから」
小鳥を近くの木の枝に下ろし、口笛を吹いて近くで狩りをする双子を呼ぶ。待っている時間が惜しいので先に走り出した。後ろから巨大な魔力が近づいてくる。黒狼のフェンリルだ。双子が後ろから追いつき、アベルがオレを咥えて投げた。くるっと回転して、後ろのカインの背に降りる。
「何度やってもドキドキする」
「僕らは落としたりしないよ」
「わかってるけどさ」
軽口叩きながらも、状況の共有をした。アベル達も別の小鳥から話を聞いたらしく、残りの小鳥は魔王城までの間にいる種族に報告しながら城を目指すらしい。オレ達が最前線に出れば、堰き止められる。人間を挑発して森の入り口で叩く案はリリィにより告知されたため、戦えない種族は城に逃げ込む手筈が整っていた。
「数はおよそ1000」
「ん? 意外と少ない」
「魔術師が30前後だとさ」
空から調べてくれたので、ある程度の布陣は確認済みだった。ばさっと飛竜の羽ばたき音が聞こえる。もうすぐ森を抜けそうだ。そこでカインとアベルが速度を緩めた。
人間は魔力に鈍い。オレは魔王城で暮らした期間で、魔力によって相手を見極める訓練をされた。そうでなければ、視力に頼って戦うしかないのが人間だ。
飛竜もランクがあり、いわゆる西洋風ドラゴンからワイバーンのような翼のみの軽い種族まで含まれた。通常の人間がお目にかかるのはワイバーンなので、今回のように上位のドラゴンが出現すると混乱するだろう。今のうちに作戦を確認してしまおう。
魔法で地図を作り上げる。立体の模型に似た地図は、オレの専売特許だった。何しろイメージ力が人間や魔族とは格段に違う。ゲームで鍛えた感覚はこの世界でも有効だった。敵の数を配置し、魔術師が目撃された場所を指さす。
「魔術師はオレが叩く。ど真ん中だったな」
「魔術師の壊滅を待って、中央を突破してUターンで追い込みだったか?」
歴史の授業で聞いた知識を披露して、彼らに中央突破作戦を提示した。多少危険を伴うが、双子は構わないと頷いた。というのも、フェンリルの毛皮は鎧以上でドラゴンの鱗並みの硬さを誇る。人間の攻撃で注意すべきは、魔石で魔力を補充した魔術だけなのだ。そこを先にオレが叩いたら……あとは蹴散らすだけだった。
わずか1000人の兵士で、オレ達3人を出し抜こうなんざ無理がある。にやりと笑ったオレに、頭上でドラゴンがぐぁああ! と声を上げた。どうやら彼女も協力してくれるらしい。力強い援軍に口笛で答え、オレは地図を消した。
「行こうぜ」
「「おう」」
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