20 / 135
第一章
20.まずは先制攻撃から
しおりを挟む
「ぐぁああああ!」
艶のある銀色ドラゴンに向けて唸り声をあげ、近くの木に飛び移った。木の枝を渡るときの技術を利用し、忍者のように2本の木を利用して縦に駆け上がる。左右に飛び移りながら上まで登ると、今度は両手を空に伸ばした。
滑降してきたドラゴンがオレの腕を掴み、高く舞い上がる。ぶわっと腹の下がざわつき、上空で放り出された。今度は落下する体を、下に滑り込んだドラゴンが嘴で掴み直した。日本で見るとしたら、西洋風のトカゲが立ち上がったようなドラゴンなので、顔はワニに近い。鋭い牙が首筋から肩にかけて触れるのは、どきどきした。噛まれる心配はしないが、本能的に攻撃しないように注意しないと。
ぐるるっ、喉を鳴らして着いたと知らせる銀ドラゴンへ向け、大量の矢が飛んできた。怒号と興奮した兵の叫びが煩い。多少悲鳴も混じっているが、関係なかった。足元の集団に、同じ紺色の制服を着た連中がいる。あれがアーベルライン国のお抱え魔術師だ。
直接攻撃に弱い魔術師は目立たないのが原則だが、軍属に関してはお揃いの軍服があった。おかげで見分けが楽で助かる。一般の魔術師だと蝋石で白くなった指先くらいしか特徴がなかった。
アーベルライン国が動いたなら、近日バルト国も動くだろう。隣国同士で何かと張り合う彼らだが、オレを追放して殺そうとしたのはバルト国だった。アーベルラインは直接手を下さず、見殺しにしただけ。まあ同罪だけどな。
にやりと笑って着地点を決める。ドラゴンを守るために強い風の流れを作り、オレを離したらすぐに上昇気流で逃げられるようにした。その上で、矢を弾いていく。風の流れへ故意に穴を作り、そこへ落としてくれるよう唸って伝えた。心配そうにするものの、彼女は穴の上でオレを離してくれた。
切り裂くような空気の圧力を受けながら真っすぐに落下し、両手を前に突き出す。飛んできた矢がオレのすぐ脇を抜けた。だが恐怖心はない。復讐を決めたこのオレが、ここで死ぬならそれも運命だった。何より魔力を纏って壁を作ったオレは、矢も魔術も弾く。
半分ほど距離を詰めたところで、乾いた唇をぺろりと舐めた。
「敵を切り裂く風!」
両手から吐き出した魔力が、風の魔法を構築する。この手順は何度もたたき込まれた。厳しさも半端ないが、リリィの技術は確かだ。イメージを頼りに具現化するために、魔力を消費する。その仕組みが反射的に使えるようになるまで、オレは文字通り血反吐を吐いて覚えた。
風が収束して真下の魔術師を数人吹き飛ばす。螺旋を描くように渦巻き、周囲を巻き込んだところに新しい魔法を展開する。
「炎よ、この身を守れ」
何もない地面が発火する。吹き飛ばされて転がった魔術師を巻き込んだ炎は、踊りながらオレの着地点を確保した。炎の壁に遮られた真ん中に着地し、頭上に上げた右手を下に振り下ろす。魔法を打ち消す呪文を省略し、動作と連携させた。同時に遮断された魔力が体の周囲に戻り、炎が姿を消す。
気を付けないとオレが窒息するからな。炎が燃えるのに酸素を使う、この辺の知識は異世界人ならではだった。まあ逆を言えば、炎の筒を作ってその真ん中に降りる馬鹿はオレくらいだ。火が消えた途端、周囲をぐるりと敵に囲まれた。
残った魔術師の数は半分程度。風で切ると血が飛び散って臭いから魔獣に評判が悪い。後で焼き払うか埋める必要があるから……うーん。見た目はえぐいが、恐怖心を掻き立てる方向性で行ってみよう。そうと決まれば、もたもたする時間はなかった。
ぱちん、指を鳴らして魔力を流す。オレの立つ大地が大きく波打った。
艶のある銀色ドラゴンに向けて唸り声をあげ、近くの木に飛び移った。木の枝を渡るときの技術を利用し、忍者のように2本の木を利用して縦に駆け上がる。左右に飛び移りながら上まで登ると、今度は両手を空に伸ばした。
滑降してきたドラゴンがオレの腕を掴み、高く舞い上がる。ぶわっと腹の下がざわつき、上空で放り出された。今度は落下する体を、下に滑り込んだドラゴンが嘴で掴み直した。日本で見るとしたら、西洋風のトカゲが立ち上がったようなドラゴンなので、顔はワニに近い。鋭い牙が首筋から肩にかけて触れるのは、どきどきした。噛まれる心配はしないが、本能的に攻撃しないように注意しないと。
ぐるるっ、喉を鳴らして着いたと知らせる銀ドラゴンへ向け、大量の矢が飛んできた。怒号と興奮した兵の叫びが煩い。多少悲鳴も混じっているが、関係なかった。足元の集団に、同じ紺色の制服を着た連中がいる。あれがアーベルライン国のお抱え魔術師だ。
直接攻撃に弱い魔術師は目立たないのが原則だが、軍属に関してはお揃いの軍服があった。おかげで見分けが楽で助かる。一般の魔術師だと蝋石で白くなった指先くらいしか特徴がなかった。
アーベルライン国が動いたなら、近日バルト国も動くだろう。隣国同士で何かと張り合う彼らだが、オレを追放して殺そうとしたのはバルト国だった。アーベルラインは直接手を下さず、見殺しにしただけ。まあ同罪だけどな。
にやりと笑って着地点を決める。ドラゴンを守るために強い風の流れを作り、オレを離したらすぐに上昇気流で逃げられるようにした。その上で、矢を弾いていく。風の流れへ故意に穴を作り、そこへ落としてくれるよう唸って伝えた。心配そうにするものの、彼女は穴の上でオレを離してくれた。
切り裂くような空気の圧力を受けながら真っすぐに落下し、両手を前に突き出す。飛んできた矢がオレのすぐ脇を抜けた。だが恐怖心はない。復讐を決めたこのオレが、ここで死ぬならそれも運命だった。何より魔力を纏って壁を作ったオレは、矢も魔術も弾く。
半分ほど距離を詰めたところで、乾いた唇をぺろりと舐めた。
「敵を切り裂く風!」
両手から吐き出した魔力が、風の魔法を構築する。この手順は何度もたたき込まれた。厳しさも半端ないが、リリィの技術は確かだ。イメージを頼りに具現化するために、魔力を消費する。その仕組みが反射的に使えるようになるまで、オレは文字通り血反吐を吐いて覚えた。
風が収束して真下の魔術師を数人吹き飛ばす。螺旋を描くように渦巻き、周囲を巻き込んだところに新しい魔法を展開する。
「炎よ、この身を守れ」
何もない地面が発火する。吹き飛ばされて転がった魔術師を巻き込んだ炎は、踊りながらオレの着地点を確保した。炎の壁に遮られた真ん中に着地し、頭上に上げた右手を下に振り下ろす。魔法を打ち消す呪文を省略し、動作と連携させた。同時に遮断された魔力が体の周囲に戻り、炎が姿を消す。
気を付けないとオレが窒息するからな。炎が燃えるのに酸素を使う、この辺の知識は異世界人ならではだった。まあ逆を言えば、炎の筒を作ってその真ん中に降りる馬鹿はオレくらいだ。火が消えた途端、周囲をぐるりと敵に囲まれた。
残った魔術師の数は半分程度。風で切ると血が飛び散って臭いから魔獣に評判が悪い。後で焼き払うか埋める必要があるから……うーん。見た目はえぐいが、恐怖心を掻き立てる方向性で行ってみよう。そうと決まれば、もたもたする時間はなかった。
ぱちん、指を鳴らして魔力を流す。オレの立つ大地が大きく波打った。
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる