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第二章
83.時間ならたっぷりあるさ
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各国を結ぶ街道において貿易の拠点となり、同時に攻め込んでくる他国に対する要塞として建設された都市は堅固だ。簡単に攻め落とされる造りはしていない。
エイシェットに近づきすぎないよう指示したのは、対空装備の存在だった。弓矢の原理を応用した装置がある。槍の強度がある矢をつがえ、3人で引く設置型の弓の攻撃力は高かった。銀竜の羽でも破るかも知れない。
まあ、物理的な話に限ればの話だが。魔力膜による結界もどきが機能していれば、手前で弾くので関係なかった。ただ……ドラゴンが恐れて近づかないという誤解を与えるのは重要だ。実際にエイシェットがあの都市を落とすなら、夜闇に紛れて近づき、ブレスで弓矢を焼き払えば済む。外壁の上部に設置されているため、一瞬で燃え尽きるだろう。
不満そうに喉を鳴らしながらも、エイシェットは手前でターンした。ドラゴンを退けたと喜ぶ兵士の様子に、オレの口元が緩む。門を開いて友軍の兵を迎え入れる彼らの愚かさ、ドラゴンを制したと勘違いする単純さ、どちらも作戦通りだった。
「いい子だ、エイシェット。よく我慢できたな」
褒めると嬉しそうに尻尾を揺らし、ゆっくりと木々の間に降りていく。森の中に姿を消したドラゴンは、そのまま人化して愛らしい少女となった。すっぽり被るワンピースはお気に入りのようで、色違いが数枚あるらしい。今日は水色だった。
「このあと、いつ攻める?」
「7日もすれば、また病が蔓延する。その頃かな」
「時間、かかる」
夜に私が攻撃すれば一瞬なのに。唸る彼女を手招きし、木の根元に並んで座った。2人きりの状況が嬉しいと腕を絡める彼女の好きにさせ、説明を始める。
「オレは苦しくて嫌な思いをさせられた。すぐに殺して楽にしてやる気はない。だから時間をかけて、じっくりいたぶる……これからも、だ」
今後も一緒に行動するなら、すぐに相手を即死させる戦力は制御しておきたい。オレの考えを理解しなくていいから、話を聞いて納得して欲しかった。なんだかんだ、寂しいのかも知れない。リリィは師匠で家長だが甘える対象じゃない。イヴは面倒見のいい姉のような存在だが、意外と厳しい。双子は兄弟と同じで、同列だった。
「時間かける、残りが減る」
エイシェットの思いがけない発言に、目を見開いた。そうか、彼女の目的は人間への復讐ではない。オレと番になることだ。だから、オレの復讐に時間がかかれば、一緒に暮らせる時間が減ると心配した。早く解決して、番として暮らしたいと考えたのだ。
「平気だよ、魔力量が多いのわかるだろ? 普通の人間より長生きのはずさ」
何らかの理由で流れの滞っていた魔力量が扱えるようになった頃、リリィに指摘された。この世界でオレは人間より魔族に近い寿命を持っている。前例がないのではっきりと数字は出せないが、この魔力量が尽きるまでは生きられるらしい。戦いで消耗する魔力は、考え方を変えればオレの生命力そのものだった。
皮肉にも、その膨大な魔力量が友人を失う原因になったのだが。
「それならいい」
納得してくれたエイシェットの額にキスをして、抱き寄せた。そういや、日本でいつも一緒にいた幼馴染に似ているよな、こいつ。甘え上手の猫みたいな感じ。銀髪を撫でながら、休憩のために目を閉じた。
失われた日本での夢が見られるといい、珍しくそう思った。
エイシェットに近づきすぎないよう指示したのは、対空装備の存在だった。弓矢の原理を応用した装置がある。槍の強度がある矢をつがえ、3人で引く設置型の弓の攻撃力は高かった。銀竜の羽でも破るかも知れない。
まあ、物理的な話に限ればの話だが。魔力膜による結界もどきが機能していれば、手前で弾くので関係なかった。ただ……ドラゴンが恐れて近づかないという誤解を与えるのは重要だ。実際にエイシェットがあの都市を落とすなら、夜闇に紛れて近づき、ブレスで弓矢を焼き払えば済む。外壁の上部に設置されているため、一瞬で燃え尽きるだろう。
不満そうに喉を鳴らしながらも、エイシェットは手前でターンした。ドラゴンを退けたと喜ぶ兵士の様子に、オレの口元が緩む。門を開いて友軍の兵を迎え入れる彼らの愚かさ、ドラゴンを制したと勘違いする単純さ、どちらも作戦通りだった。
「いい子だ、エイシェット。よく我慢できたな」
褒めると嬉しそうに尻尾を揺らし、ゆっくりと木々の間に降りていく。森の中に姿を消したドラゴンは、そのまま人化して愛らしい少女となった。すっぽり被るワンピースはお気に入りのようで、色違いが数枚あるらしい。今日は水色だった。
「このあと、いつ攻める?」
「7日もすれば、また病が蔓延する。その頃かな」
「時間、かかる」
夜に私が攻撃すれば一瞬なのに。唸る彼女を手招きし、木の根元に並んで座った。2人きりの状況が嬉しいと腕を絡める彼女の好きにさせ、説明を始める。
「オレは苦しくて嫌な思いをさせられた。すぐに殺して楽にしてやる気はない。だから時間をかけて、じっくりいたぶる……これからも、だ」
今後も一緒に行動するなら、すぐに相手を即死させる戦力は制御しておきたい。オレの考えを理解しなくていいから、話を聞いて納得して欲しかった。なんだかんだ、寂しいのかも知れない。リリィは師匠で家長だが甘える対象じゃない。イヴは面倒見のいい姉のような存在だが、意外と厳しい。双子は兄弟と同じで、同列だった。
「時間かける、残りが減る」
エイシェットの思いがけない発言に、目を見開いた。そうか、彼女の目的は人間への復讐ではない。オレと番になることだ。だから、オレの復讐に時間がかかれば、一緒に暮らせる時間が減ると心配した。早く解決して、番として暮らしたいと考えたのだ。
「平気だよ、魔力量が多いのわかるだろ? 普通の人間より長生きのはずさ」
何らかの理由で流れの滞っていた魔力量が扱えるようになった頃、リリィに指摘された。この世界でオレは人間より魔族に近い寿命を持っている。前例がないのではっきりと数字は出せないが、この魔力量が尽きるまでは生きられるらしい。戦いで消耗する魔力は、考え方を変えればオレの生命力そのものだった。
皮肉にも、その膨大な魔力量が友人を失う原因になったのだが。
「それならいい」
納得してくれたエイシェットの額にキスをして、抱き寄せた。そういや、日本でいつも一緒にいた幼馴染に似ているよな、こいつ。甘え上手の猫みたいな感じ。銀髪を撫でながら、休憩のために目を閉じた。
失われた日本での夢が見られるといい、珍しくそう思った。
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