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第七幕
208.女だけで秘密のお茶会も悪くないわ
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ハーゲンドルフ家を退かせるには、彼が何か仕掛けてくれるといいのだけど。そう呟いたら、全員が一斉に反対した。あの下半身緩い男がやらかすとしたら、私の評判にも傷がつきそうだもの。未婚というのは、本当に不便ね。他国に行けば、そこの王侯貴族に言い寄られたり、男と二人になるだけで純潔を疑われる。
前世でもそういう傾向はあったけど、全然厳しさが違った。実際に何もなくとも、押し倒されたように見える状況を作られるだけで、貴族派が有利になってしまう。王太女たる私の立場をもってしても、胸を揉まれたりキスされたように見える状況を作られたら、婚約まで押し通される可能性があった。
手前で不敬だと断じるにしても、婚約者候補という肩書きが邪魔だ。少なくとも私と恋仲になることを望まれる存在なのだから。王宮に入って即日退けられるほど、軽くない。なら、邪魔な肩書きを取り外せばいいのよ。
手詰まりなんてみっともないゲームをする気はないわ。盤が足りなければ足してでも勝つ、これが私流なの。過去に被害に遭った女性がいるなら、当然利用させてもらうわ。補償もしなければいけないし、そんな男が女王になる私の隣にいることに、彼女達も言いたいことがあるでしょう。
「クリスティーネ、夜会の手配をして欲しいの。王宮内で、婚約者候補は全員出席。このリストにある女性に、集まってもらいたいわ」
「お茶会などいかがでしょうか。これから次期女王として伴侶を選ぶ王太女殿下に、既婚者が様々な助言をする会合があっても、いいのでは?」
にっこり笑うクリスティーネは、自慢の黒髪をゆったりと背に流して首を傾げる。意味ありげに言葉を切る話し方は、外交のプロね。強調と誤魔化しのテクニックに感心しちゃうわ。
「そうね。人生の先輩である夫人の意見を聞くのは、とても、とても重要な機会になると思うの」
わざと二度繰り返して強調した。クリスティーネは青い瞳を細めて、緩んだ口元をそっと手で隠す。隣で手配用のリストを作るエレオノールも、ピンクのウサ耳はこちらの話に釘付けだった。
「そういえば、エルフリーデはどうしたのかしら」
尋ねる口調に、知ってる? と無駄話の種を仕込む。
「彼女でしたら、ローゼンベルガー王子殿下のしご……失礼。厳しい訓練に参加すると聞きましたわ」
「ローゼンベルガー王子殿下と意気投合し、婚約者候補達と一緒に鍛えると言っていました」
エレオノールがふふっと笑う。どうやら聞きかじったクリスティーネに補足したらしい。エレオノールの言い方だと、本人から聞いたみたい。エルフリーデったら、おっとりした外見に似合わぬ一面ね。彼らを鍛えるんじゃなく、一緒に鍛えに行ったなんて。
「二人の情報を合わせたら精度が上がるわね。これでテオドールとリュシアン、二人が留守にしている理由が分かったわ」
どうやらお兄様に連れ去られたみたい。一応王位継承権2位だし、逆らえなかったのかしら。テオドールは単に、ライバルを蹴落としに行ったんだと思うわ。彼にとってカールお兄様の訓練なんて、半分眠りながらでもこなすレベルだもの。
窓の外にいる小鳥をじっと見つめたエレオノールが、新しい情報を齎した。
「テオドール殿がローゼンベルガー王子殿下を倒して、訓練は中断したようです」
「……何をやってるのよ」
呆れながらも、エレオノールの能力に興味を引かれた。もしかして、野生の小鳥が見た情報を共有できるの? 獣人ってすごいのね。
前世でもそういう傾向はあったけど、全然厳しさが違った。実際に何もなくとも、押し倒されたように見える状況を作られるだけで、貴族派が有利になってしまう。王太女たる私の立場をもってしても、胸を揉まれたりキスされたように見える状況を作られたら、婚約まで押し通される可能性があった。
手前で不敬だと断じるにしても、婚約者候補という肩書きが邪魔だ。少なくとも私と恋仲になることを望まれる存在なのだから。王宮に入って即日退けられるほど、軽くない。なら、邪魔な肩書きを取り外せばいいのよ。
手詰まりなんてみっともないゲームをする気はないわ。盤が足りなければ足してでも勝つ、これが私流なの。過去に被害に遭った女性がいるなら、当然利用させてもらうわ。補償もしなければいけないし、そんな男が女王になる私の隣にいることに、彼女達も言いたいことがあるでしょう。
「クリスティーネ、夜会の手配をして欲しいの。王宮内で、婚約者候補は全員出席。このリストにある女性に、集まってもらいたいわ」
「お茶会などいかがでしょうか。これから次期女王として伴侶を選ぶ王太女殿下に、既婚者が様々な助言をする会合があっても、いいのでは?」
にっこり笑うクリスティーネは、自慢の黒髪をゆったりと背に流して首を傾げる。意味ありげに言葉を切る話し方は、外交のプロね。強調と誤魔化しのテクニックに感心しちゃうわ。
「そうね。人生の先輩である夫人の意見を聞くのは、とても、とても重要な機会になると思うの」
わざと二度繰り返して強調した。クリスティーネは青い瞳を細めて、緩んだ口元をそっと手で隠す。隣で手配用のリストを作るエレオノールも、ピンクのウサ耳はこちらの話に釘付けだった。
「そういえば、エルフリーデはどうしたのかしら」
尋ねる口調に、知ってる? と無駄話の種を仕込む。
「彼女でしたら、ローゼンベルガー王子殿下のしご……失礼。厳しい訓練に参加すると聞きましたわ」
「ローゼンベルガー王子殿下と意気投合し、婚約者候補達と一緒に鍛えると言っていました」
エレオノールがふふっと笑う。どうやら聞きかじったクリスティーネに補足したらしい。エレオノールの言い方だと、本人から聞いたみたい。エルフリーデったら、おっとりした外見に似合わぬ一面ね。彼らを鍛えるんじゃなく、一緒に鍛えに行ったなんて。
「二人の情報を合わせたら精度が上がるわね。これでテオドールとリュシアン、二人が留守にしている理由が分かったわ」
どうやらお兄様に連れ去られたみたい。一応王位継承権2位だし、逆らえなかったのかしら。テオドールは単に、ライバルを蹴落としに行ったんだと思うわ。彼にとってカールお兄様の訓練なんて、半分眠りながらでもこなすレベルだもの。
窓の外にいる小鳥をじっと見つめたエレオノールが、新しい情報を齎した。
「テオドール殿がローゼンベルガー王子殿下を倒して、訓練は中断したようです」
「……何をやってるのよ」
呆れながらも、エレオノールの能力に興味を引かれた。もしかして、野生の小鳥が見た情報を共有できるの? 獣人ってすごいのね。
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