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第4章 奪われる恐怖
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※流血表現があります。
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叫んだアイザックの声の直後、肩に鋭い痛みを感じて膝を付いた。庇おうとしたアイザックの長身が覆い被さり、膝を付いたシリルの体を包み込む。
「……アイザックっ?」
痛いほど抱き締められた腕の中で、シリルはズキズキと痛む肩を庇いながら、顔だけで振り向いた。額に汗を滲ませたアイザックの苦しそうな顔と、彼と自分を貫いている槍のような物の存在に、目を見開く。
アイザックの背中から胸にかけて貫かれた槍は、そのままシリルの肩を突き抜ける寸前で止まっていた。
このまま引き抜けば、一気に血が流れ出すのは明白で、シリルは動けずに唇を噛む。
―――油断した。
不死の民の血を体内に宿していても、アイザックは純血種ではなく、元人間なのだ。このままでは彼の命も危険だった。もちろん、血を流し切ると滅びてしまうシリルも。
「……っ、ィア……ン」
守護者の名を呼ぶ。普段と違う声色で、吸血鬼としての力を込めた呼びかけは、距離や時間に関係なく言霊の力で届く筈だ。
「神祖を捕らえたぞ!」
叫んだ男が、次に口にしたのは絶叫だった。断末魔の叫びが部屋に乱反射する。どうやらシリルが虜にしたシドが、槍の持ち主である男を殺したらしい。
後顧の憂いを絶つ為に、シドに自殺を命じ……シリルは床に崩れ落ちた。
「……ッ!」
角度の変わった槍の先が、シリルの肩を惨く抉る。激痛による悲鳴を噛み殺したシリルの上に、温かい血が滴り続ける。自分に力を与える血なのに、アイザックの体から流れている事実に恐怖を覚えた。
失ってしまう。
心地よい空間を作り出す総てが、手の中を零れ落ちる気がした。リスキアがプライドより優先して手に入れたアイザックも、やっと素直になれそうな自分も……このままでは消えてしまう。
「……ラ、ィ……ア……っ……んッ……」
一生、俺を守ると誓ったのだろう?
愛していると囁いた筈だ。
ずっと一緒にいてやると偉そうに告げた癖に!
だったら、今すぐここに来て抱き締めろ。
ふと、呼ばれた気がした。
間違いなくシリルの声で、切羽詰った響きだったと思う。オレの名を呼んでいたけれど、掠れていて……切実な。
「シリルっ?!」
振り返った瞬間、右二の腕を焼けるような痛みが走った。
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叫んだアイザックの声の直後、肩に鋭い痛みを感じて膝を付いた。庇おうとしたアイザックの長身が覆い被さり、膝を付いたシリルの体を包み込む。
「……アイザックっ?」
痛いほど抱き締められた腕の中で、シリルはズキズキと痛む肩を庇いながら、顔だけで振り向いた。額に汗を滲ませたアイザックの苦しそうな顔と、彼と自分を貫いている槍のような物の存在に、目を見開く。
アイザックの背中から胸にかけて貫かれた槍は、そのままシリルの肩を突き抜ける寸前で止まっていた。
このまま引き抜けば、一気に血が流れ出すのは明白で、シリルは動けずに唇を噛む。
―――油断した。
不死の民の血を体内に宿していても、アイザックは純血種ではなく、元人間なのだ。このままでは彼の命も危険だった。もちろん、血を流し切ると滅びてしまうシリルも。
「……っ、ィア……ン」
守護者の名を呼ぶ。普段と違う声色で、吸血鬼としての力を込めた呼びかけは、距離や時間に関係なく言霊の力で届く筈だ。
「神祖を捕らえたぞ!」
叫んだ男が、次に口にしたのは絶叫だった。断末魔の叫びが部屋に乱反射する。どうやらシリルが虜にしたシドが、槍の持ち主である男を殺したらしい。
後顧の憂いを絶つ為に、シドに自殺を命じ……シリルは床に崩れ落ちた。
「……ッ!」
角度の変わった槍の先が、シリルの肩を惨く抉る。激痛による悲鳴を噛み殺したシリルの上に、温かい血が滴り続ける。自分に力を与える血なのに、アイザックの体から流れている事実に恐怖を覚えた。
失ってしまう。
心地よい空間を作り出す総てが、手の中を零れ落ちる気がした。リスキアがプライドより優先して手に入れたアイザックも、やっと素直になれそうな自分も……このままでは消えてしまう。
「……ラ、ィ……ア……っ……んッ……」
一生、俺を守ると誓ったのだろう?
愛していると囁いた筈だ。
ずっと一緒にいてやると偉そうに告げた癖に!
だったら、今すぐここに来て抱き締めろ。
ふと、呼ばれた気がした。
間違いなくシリルの声で、切羽詰った響きだったと思う。オレの名を呼んでいたけれど、掠れていて……切実な。
「シリルっ?!」
振り返った瞬間、右二の腕を焼けるような痛みが走った。
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