【完結】帝国滅亡の『大災厄』、飼い始めました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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第二十一章 寿命という概念

第93話 平和なのだが襲撃ラッシュ(2)

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 珍しく丁寧に名乗りを上げるリオネルの声に、ジルが「ああ……酷い殺され方するぞ」と眉をひそめる。ジルの説明によれば、リオネルが異常に丁寧な時は機嫌が悪いのだとか。迷惑なキレ方をする奴なのだと言いながら、テントから首を出して忠告する。

「おい、この辺を汚さないで遠くに捨てろよ」

「承知しております」

 にっこり笑って請け負うリオネルの後ろに、風が刃と化して襲い掛かる。鋭い風が首を落とすかに見えた一瞬で、リオネルの身体は消えていた。転移を使うまでもなく、目の前にあった影に入り込んだのだ。厄介な特技を持つ男は、焦って周囲を見回す魔性の後ろに現れた。

「主の命ですので、灰も残さず燃え尽きてください」

「いや……オレがそう言ったわけじゃないぞ」

 燃やし尽くして灰も残らなければ、周辺を汚したことにならない。曲解した部下の言い分にぼそっと反論するジルだが、咎める気はなかった。リオネルが言う通り、燃やし尽くしてもらえば後腐れなくて結構と首を引っ込める。

「狡いわ!!」

「そうです、我々の獲物ですよ」

 横から攫われた獲物は、より大きく見える。もったいないと飛び出していくパウリーネとリシュアを見送り、ライラはルリアージェの胸元を少し手直しして感心していた。

「こうやって纏うとドレスみたいで素敵ね。こういう形で巻くドレスを作らせたら、すごく似合うわ」

「ん? これは前に泳ぎに行ったときに教えてもらったんだ」

 布の巻き方で盛り上がる2人の隣で、ジルが氷を作って紅茶を用意する。手慣れた様子で取り出した檸檬を風で輪切りにし、カップの上に添えていく。見事な飾り切りに目を輝かせたルリアージェに、冷やした紅茶を差し出した。

「はい、水分補給しててね」

「うん? お前も外に出るのか?」

 言葉の端に含まれた意味に気づいて首をかしげると、苦笑いしたジルが種明かしするように教えてくれた。

「まだ来るからな」

 ジルの言葉に被るように、リシュア達の歓喜の声が聞こえる。

「獲物が増えたわ」

「等分ですからね」

 復讐に燃える魔性の襲来に、倒す対象が増えたと喜ぶのは間違っている。そう思うのだが、彼らが負けるとは思わないルリアージェは「気をつけて」と気軽に送り出した。

「ライラはいいのか?」

「ええ。ジルも出てったから、あたくしがリアを独占出来るじゃない」

 優しい言い方をするライラは、三つ編みを背に放りながら笑う。この場で一番非力で、人質にされかねない人族であるルリアージェを守る存在が必要だ。そう言われても傷つくことはないのだが、一緒に居られて嬉しいから残ると告げるライラは外を窺った。
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