【完結】虐待された幼子は魔皇帝の契約者となり溺愛される

綾雅(りょうが)今月は2冊出版!

文字の大きさ
80 / 214

79.お勉強前に触ってもいいの?

しおりを挟む
 お部屋に戻って、パパはアガレスに渡された書類を書き始める。僕は用意された小さな机と椅子に目を輝かせた。

「これ、僕の?!」

「そうですよ。ここでしっかりお勉強してください」

 マルバスはもうお仕事終わって帰ったから、この部屋は4人だけ。机と椅子を皆に見せたいけど、明日にしよう。

 僕が座ると、プルソンは用意されたクッションの上に座った。高さがぴったりだ。僕とプルソンの目が同じ高さだった。にっこり笑ったプルソンは、片方だけ眼鏡をしてる。鎖が出ていて、耳に掛かってるのかな。気になった。

「カリス様……カリス様?」

 じっと見ていた僕は、何度も呼ばれたみたい。慌てて返事をする。

「何か気になるなら先にどうぞ」

 促されて、初めて見た片方の眼鏡が気になること。それからプルソンのツノや蹄も触りたいと口にした。ダメならそう言ってくれると思う。ドキドキしながら待つ僕に、全部いいとプルソンは笑った。

「全部いいの?」

「ええ。どれを先にしますか」

「お手手がいい」

 プルソンが手を机の上に置いて、蹄にしてくれた。掛けてある魔法を解くと、この姿になるみたい。さっきと同じように優しく包んで触る。両手で撫でて包んで、先が二つに割れてるのだと知った。

 今度はツノを見せてもらう。木の枝みたいな色と形だけど、これは鹿という動物のツノと同じだって。今は硬いけど、少ししたら抜けて生え変わると聞いた。その時は丸くて小さいツノがぽこっと頭に残るから、また触らせてもらう約束をした。抜けたツノは売るとお金になるんだよ。

 最後は眼鏡だった。僕の机の上にカタンと音をさせて置いた眼鏡を、優しく持ち上げる。落とさないようにしながら縦にする。覗いたら、向こう側が歪んでいた。

「歪んでるよ」

「そうですね。私はその歪みがあるから綺麗に見えます」

 よく分からなかったけど、プルソンはちゃんと説明してくれた。僕は目がいいから真っ直ぐ見ている。でもプルソンは目が悪くて、物が歪んで見えちゃう。だから先に歪んだ眼鏡をすることで、真っ直ぐに見える仕組みなんだよ。詳しくはもっとお勉強したら教えてもらう。

 覚えることがたくさんだけど、僕はちゃんと頑張れるよ。パパのお手伝いができるようになりたい。そうしたら、ずっと隣にいられるでしょう?

「賢いですね、その通りです」

 プルソンがそれでいいと言った。だから僕はお勉強用の黒い板を机に乗せる。プルソンと一緒に数えるお勉強を始めた。片方の手は5まで。それを両手にしたら数え方が変わる。

「ろく、なな、はち、きゅう、じゅう……指を折りながら数えてみましょう」

 5の後は6、それから8? 7が先? 何度も声に出して練習して、やっと覚えた。10は5が2つ。前に銀1つと茶色5が2つを交換したけど、あれは茶色10だったんだ。数字はもっとたくさんあるけど、書くのは1から0までだった。プルソンが書いてくれた見本を見ながら、僕は白い棒でがりがりと数字を書く。

「いま、部屋に何人いますか?」

 パパ、僕、アガレス、プルソン……4つ! 4の数字を大きく書いたら、プルソンの手が撫でてくれた。お仕事やお勉強の時は僕達と同じ手の形をしてる。魔法を使いながらお勉強も教えるなんて、プルソンは凄い悪魔なんだね。

「パパも凄いぞ」

「うん! パパもアガレスも凄いよ」

 褒めたら、喜んだ後で難しい顔をしてた。パパだけ褒めた方がよかったの? でもアガレスが可哀想だから、全員順番に褒めた。アガレスやプルソンも嬉しそうに笑ってくれて、僕も幸せだ。
しおりを挟む
感想 493

あなたにおすすめの小説

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない

百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。 幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。 ※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜

しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。 高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。 しかし父は知らないのだ。 ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。 そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。 それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。 けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。 その相手はなんと辺境伯様で——。 なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。 彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。 それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。 天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。 壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

処理中です...