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30.神様の無駄に大きなお家
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「おいで。着替えるぞ」
言われるまま両手を広げる。着替えるときはセティがしてくれる。僕はボタン上手にできないから、セティが上に着せる服に袖を通して待っていた。魔法みたいにするするとボタンが終わり、僕は着替えた服でくるりと一回転する。
裾がひらひらした服は、膝の下まで上着がある。下にズボンを履いて、長い髪をてっぺん近くで結んでもらった。白い服は怖い、そう言ったら色のついた服ばかりになった。今日は緑の葉っぱと同じ色だ。
「完璧だ、可愛いぞ」
可愛いはいい言葉みたい。よく言ってくれるけど、その度に笑ってるし頭も撫でる。だから笑ってセティに抱き着いた。セティも服を着ていない。お風呂の後、そのまま寝たっけ? ご飯食べたとき、服着てた気がするんだけど。
こてりと首を傾けて考えるが、よく覚えていないので終わりにした。口の中の飴が小さくなって、隙間ができる。転がす飴は甘くて、果物の匂いがした。
手早く着替えたセティが僕を抱き寄せて、唇にキスをする。飴の間から舌を差し出して絡めると、ぺろりと舐めたセティが「柑橘系か」と呟いた。飴の果物の種類みたい。果物の名前は知らないから、赤くて丸いとか黄色くてうっとなる味って言うけど、本当は全部名前がある。覚えることはまだたくさんあった。
「急がなくていいぞ。ゆっくり覚えればいい、時間はあるからな」
タイフォン様の贄だった僕の考えは、声にしなくてもセティに届く。セティが神様で本当に良かった。僕は言葉をたくさん知らないから、伝えるときに困る。覚えてる形や色を伝えられれば、セティに説明できるよね。
それでも言葉は覚えた方がいいんだって。からころ、口の中で割れた飴が転がった。
「半分こ」
口を開けて見せれば、困ったような笑い方をしてキスする。舌で押し出して半分に割れた飴を渡した。ついでに口の中も舐められてから、セティは「甘い」と笑う。
今日は神殿に行く。靴を履いてセティと手をつないだら準備終わり――宿を出てすぐに左に曲がった。右はいつもセティと手をつないでいる手で、左は何も持ってない方。僕は覚えたばかりの言葉を繰り返しながら、まだ人の少ない道を歩いた。
街は人が多い場所なのに、今朝は人がいない。飴がどんどん小さくなり、最後にどこかに消えてしまった。見上げるとセティがぺろっと舌を出す。セティも食べちゃったみたい。一緒だった。それが嬉しくて笑う。
「神殿ってどこ?」
「あの一番大きい建物だ」
セティが指さしたのは、大きくて広い道の突き当りにある家だった。神様の家は大きいって聞いたけど、セティは普通の人と同じ。なんで大きい家にしたんだろう。変なの。そう思った僕にセティが肩を竦めた。
「オレは住んでないけどな」
神様であるタイフォン様の家なのに、神殿にセティが住んでない。でも一番大きなお家なんだよね? たまにしか来ないなら、小さいお家でいいと思う。くしゃりと髪を撫でるセティが、僕の髪にキスをした。赤くなっていた髪が黒くなる。元通りだった。目も同じ紫なのかな。
「本当に無駄遣いばっかしやがって、しょうがねえ奴らだ」
セティの言葉はよくわからなかったけど、機嫌が悪そうな声にびくりと肩を揺らした。
言われるまま両手を広げる。着替えるときはセティがしてくれる。僕はボタン上手にできないから、セティが上に着せる服に袖を通して待っていた。魔法みたいにするするとボタンが終わり、僕は着替えた服でくるりと一回転する。
裾がひらひらした服は、膝の下まで上着がある。下にズボンを履いて、長い髪をてっぺん近くで結んでもらった。白い服は怖い、そう言ったら色のついた服ばかりになった。今日は緑の葉っぱと同じ色だ。
「完璧だ、可愛いぞ」
可愛いはいい言葉みたい。よく言ってくれるけど、その度に笑ってるし頭も撫でる。だから笑ってセティに抱き着いた。セティも服を着ていない。お風呂の後、そのまま寝たっけ? ご飯食べたとき、服着てた気がするんだけど。
こてりと首を傾けて考えるが、よく覚えていないので終わりにした。口の中の飴が小さくなって、隙間ができる。転がす飴は甘くて、果物の匂いがした。
手早く着替えたセティが僕を抱き寄せて、唇にキスをする。飴の間から舌を差し出して絡めると、ぺろりと舐めたセティが「柑橘系か」と呟いた。飴の果物の種類みたい。果物の名前は知らないから、赤くて丸いとか黄色くてうっとなる味って言うけど、本当は全部名前がある。覚えることはまだたくさんあった。
「急がなくていいぞ。ゆっくり覚えればいい、時間はあるからな」
タイフォン様の贄だった僕の考えは、声にしなくてもセティに届く。セティが神様で本当に良かった。僕は言葉をたくさん知らないから、伝えるときに困る。覚えてる形や色を伝えられれば、セティに説明できるよね。
それでも言葉は覚えた方がいいんだって。からころ、口の中で割れた飴が転がった。
「半分こ」
口を開けて見せれば、困ったような笑い方をしてキスする。舌で押し出して半分に割れた飴を渡した。ついでに口の中も舐められてから、セティは「甘い」と笑う。
今日は神殿に行く。靴を履いてセティと手をつないだら準備終わり――宿を出てすぐに左に曲がった。右はいつもセティと手をつないでいる手で、左は何も持ってない方。僕は覚えたばかりの言葉を繰り返しながら、まだ人の少ない道を歩いた。
街は人が多い場所なのに、今朝は人がいない。飴がどんどん小さくなり、最後にどこかに消えてしまった。見上げるとセティがぺろっと舌を出す。セティも食べちゃったみたい。一緒だった。それが嬉しくて笑う。
「神殿ってどこ?」
「あの一番大きい建物だ」
セティが指さしたのは、大きくて広い道の突き当りにある家だった。神様の家は大きいって聞いたけど、セティは普通の人と同じ。なんで大きい家にしたんだろう。変なの。そう思った僕にセティが肩を竦めた。
「オレは住んでないけどな」
神様であるタイフォン様の家なのに、神殿にセティが住んでない。でも一番大きなお家なんだよね? たまにしか来ないなら、小さいお家でいいと思う。くしゃりと髪を撫でるセティが、僕の髪にキスをした。赤くなっていた髪が黒くなる。元通りだった。目も同じ紫なのかな。
「本当に無駄遣いばっかしやがって、しょうがねえ奴らだ」
セティの言葉はよくわからなかったけど、機嫌が悪そうな声にびくりと肩を揺らした。
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