【完結】聖獣もふもふ建国記 ~国外追放されましたが、我が領地は国を興して繁栄しておりますので御礼申し上げますね~

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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15.聖獣ノエルの得意技で解決ね

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「お願いよ、ノエル。ルール違反があったみたいなの」

 じっくりと狼の足元を眺めた後、白猫はやたら人間臭い所作で溜め息を吐いた。助けてあげる、恩着せがましい口調で呟くと巨大化する。聖獣達に怯むが、ボス狼は群れを守る気なのだろう。引かずに唸り声をあげた。

 自分が死んでも子狼を逃がすつもりで牙を剥く。圧倒的強者に対し、ケガをした自分が勝てないと承知で勝負を挑もうとした。その芯の強さは立派で、狼の誇り高さを窺わせる。この子達にこんな非道な仕打ちをした奴は、必ず天罰を下してやるわ。

「大丈夫よ、すぐに治すから動かないで」

 私の言葉に怪訝そうな顔をする。やっぱり知能は高いのね。だから子ども達を守るために人間の馬車を襲おうとした。人間は傷を治す薬や食料を持ち歩いてることが多いもの。群れのボスが戦えなければ、どうしたって戦意は下がる。他の獣を襲うのは無理よね。

 警戒されないよう、私は一歩下がる。その脇でシリルがくるんと丸まった。彼は治癒が得意じゃないから、ノエルにお任せ。威嚇する狼に平然と近づくノエルは、元の大きな姿に戻っていた。魔狼を見下ろしながら、ゆったりと尻尾を振る。

 がううっ! 馬車を襲うために散っていた仲間の狼が駆け戻ってきた。私やシリルも一緒に取り囲まれる。カーティス兄様が駆け寄ろうとしたので、制止した。

「カーティス兄様、ダメよ。興奮させてしまうわ」

「だがっ!」

「聖獣の僕がいるのに、変な心配しないでよ」

 不満そうに唸るシリルに押され、兄は口を噤んだ。聖獣はこの世界で神の使いとされる。その聖獣が安全を保障したのに、疑うことは許されなかった。いざという時動けるよう、剣をしまわない兄に微笑んだ。

「すぐ終わるわ」

 ノエルがふわりと魔力を纏う。白い巨大猫の周囲に小さな光が集まってきた。とても幻想的で美しい光景だわ。聖樹の力が満ちた森だからこそ、聖獣も力を振るうことができる。

 魔狼のボスはぺたりと伏せた。降伏を意味する行動に、群れの狼が混乱している。だが迷った末に全頭が従った。それを確認し、ノエルが力を解放する。治癒の温かい光は淡い金色で、傷ついた子狼やボス狼を包んで癒した。

 幻想的な光が消えると同時に、突き刺さっていた矢も消失する。元気になった子狼が転げるように駆け寄り、親狼達の周囲を走り回った。鼻先を寄せて我が子の無事を喜ぶ狼達の姿に頬が緩む。痛くなくって嬉しいと全身で示す彼らに、自然と私達は笑顔になった。

「よかったわ。酷いことをした人間を許してね」

 猟師にしては腕が悪い。騎士だったら逃げられるヘマはしない。そもそもエインズワースの領地内で、獣の子に攻撃する者がいるなら捕えた方がよさそうね。こういう探し物はパールが得意なのよ。白い大きな鳥だけれど、小型化してどこへでも入り込めるし。

「カーティス兄様、メイナード兄様。このままにはしないでね」

「わかっているよ、グレイス」

「処罰対象だからね」

 最後尾を守る叔父に手を振り、狼達に背を向ける。小さな猫に戻ったノエルを抱き上げ、シリルの背に飛び乗った。ふわりと魔法で包まれるのがわかる。

「元気でね」

 狼達がこの先も無事生き延びられるか、それは自然の掟もあるから確証はない。だけど、無駄に命を散らさずに済んでよかった。こちらも損害はない。引き上げていく狼にほっとした馬車の使用人達に「あと少しよ」と声を掛けて、再び街道を走り出した。

 それにしても、誰がこんな酷いことをしたのかしら。子どもへの攻撃だけじゃなく、トドメも刺さずに放置するなんて。きっと最低の奴らね。
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