上 下
14 / 72

14.想像よりエグい復讐されていた

しおりを挟む
 ママはその後も説明を続けた。全員の朝食が終わり、お茶が出て冷める頃、ようやく一段落する。

 結論として、爆発で吹き飛ばされた私の魂は、聖女リリアンの胎児に宿った。納得できないママは、爆発で死んだ王族の魂を代償に、魂の固定を妨げたらしい。この辺の技術は、お祖父様の許可がないと話せないのだとか。王族に伝わる秘術かしら。

 人には魔力の色や質がある。それは生まれ変わっても変化しない本質と呼ばれ、ママは私がリリアンの中に宿ったことを確信した。だからリリアンは幽閉の塔へ入れられたのだ。その間に新しい器を宿して、魂を移し替えようと考えた。

「ただね、さっきも話した通り……この人が失敗したの。キースは相手がいなくて作れないし、焦ってる間にあなたが定着してしまったわ」

 ママが使えた魔法では定着を遅らせるだけ。パパがママを妊娠させることができず、さらににぃにも奥さん不在で失敗した、と。なんとも我が家族らしい顛末ね。いつも最後の一押しが足りないのよ。

「すまなかった。さすがに三日三晩頑張ったら、枯れた」

 パパ、表現が露骨すぎるわ。親の寝室事情なんて、娘に語るものじゃない。情事中にうっかり足を踏み入れたみたいで、恥ずかしくなっちゃう。もっと包んで表現して頂戴。睨む私の視線に気づいたにぃにがフォローを入れる。

「父上は頑張ったんだ!」

 絶妙にフォローしきれていない。そっちじゃなくて、表現の仕方が問題なのよ。指摘するのも面倒なので、にぃにが剥いた蜜柑を口に投げ込んだ。うっ、酸っぱい。

「王族って代償になるの?」

「ええ。人の魂を動かすために、人の魂を消費するわ。王族を使ったのは、償わせるためよ」

 ママの説明で、王族を使う理由は復讐だと知れた。消費された魂は長い時間苦しんで、元の形に戻る。その間は生まれ変わることも出来ないし、世界に干渉も不可能だった。そこまで聞いて、嫌な考えが浮かぶ。

「ママ……メレディスの魂も使った?」

「もちろんよ! 念入りにすり潰して最後の一滴まで絞ってやったわ」

 得意げなママが怖い。なにそれ、他の魂よりズタボロにされたって意味よね。

「私が復讐したかったのに」

「私達の小さなお姫様、あなたが手を汚すことないの」

「そうだぞ、クズのためにグロリアの魂が傷付いたら取り返しが付かない」

 ムッとした口調で、にぃにも付け足した。愛されてるなぁ……前世以上にそう思う。ともあれ、私は勢いでリリアンの胎児に宿り、その後取り出し損ねて今に至ったわけで。出会えてよか……あれ?

 違和感を覚えた。順番に考えていくと何かおかしい。だって、リリアンの胎児が私だと知ってるのに、どうしてすぐに保護しなかったんだろう。

 この疑問を素直にぶつけた。

「私をすぐに迎えに来なかったのは、どうして?」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

私はモブ扱いで結構です

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:1,307

悪役令息の義姉となりました

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:19,533pt お気に入り:1,480

私の初恋の人に屈辱と絶望を与えたのは、大好きなお姉様でした

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:4,552pt お気に入り:113

【完結】巻き戻りましたので、もれなく復讐致します!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:177pt お気に入り:897

側妃に最愛を奪われました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,072pt お気に入り:485

私だけが家族じゃなかったのよ。だから放っておいてください。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:134pt お気に入り:2,882

処理中です...