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66.処刑でもうひとつ欲張った

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 やると決めたら容赦しない。邪魔が入らないよう迅速に、準備を進めた。ほとんどはママとパパが手配したけど、仕方ない。まだ6歳の女の子が、処刑の手配するのは変だもん。

 公開処刑にしたのは、彼を助けようとする愚か者を出さないためだ。孤独と飢えに耐えかねて泣き叫んだ男を引き摺り出す。過去にこの男がやらかした罪を募集したら、思いの外大量に集まった。

 税金の不当な吊り上げから始まって、婦女暴行、子どもの誘拐事件も絡んでいたらしい。人身売買の証拠を持ち込んだ男は、アディントン侯爵に娘を売り払われた過去を持つ。必死で探した娘は自殺しており、泣きながら遺体を持ち帰ったと恨みをぶちまけた。

 アディントンの侯爵位は剥奪、ラッカム伯爵位も同じ。ラッカム伯爵は聖女リリアンの義父になっただけで、大きな罪に絡んでいないと考えていた。でも告発者は、ラッカム伯爵の罪も並べ立てた。証拠や証言で裏付けが取れたので、処刑も付き合ってもらう予定よ。

「こういうのって、付き合いが大事なのよね」

「うん、私もそう思う」

 メイベルと頷き合い、用意された見学用の席に落ち着いた。元からこの国は公開処刑が行われている。罪を裁くことで、見せしめにしてきた。

 元公爵が王家滅亡と王位簒奪を企てた話は、あっという間に貴族の間に広まる。彼らの爵位が落ちた原因であり、安定した暮らしを奪った原因……そう考えるから、罵声が飛び交う。

 以前は王族用の席だった壇上で、私はママのお膝に座っていた。ここが中央の席なの。処刑の号令は私が下し、ママが最終決定の合図を送る。やっぱり6歳の体は不便だ。

「連れてきて」

「罪人を前へ」

 ママの言葉の方がカッコいいな。でも私には似合わないから、いいか。隣でパパが手を握り、反対側はにぃにとメイベルが並ぶ。

 連れ出されたアディントン元侯爵とラッカム元伯爵は、捕えられた時の服を着ていた。豪華な貴族らしい服なのに、薄汚れて皺だらけ。没落感が滲んでるね。

「罪状の読み上げを」

 権力を使い女性を無理やり襲った罪、子を身籠った女性を殺した罪、平民の子を攫って売り払った罪……並べればキリがない。これだけでも数十回死刑にするレベルだよ。そこへ王位簒奪を企み、聖女リリアンを利用した罪が重なる。

「ママ」

「分かったわ、あなたの思うままにしましょう」

 この処刑で、私はもうひとつ欲張った。聖女リリアンの名誉の回復――ママは渋い顔をしたけど、メイベルやにぃには背を押してくれた。だってね、どんなに調査が進んでもリリアンの悪い話は出てこなかったの。

「前王家の第二王子メレディスに汚された、リリアンを改めて聖女に認定する。これは教会が認めた正式な通達よ。彼女の名誉を貶めることは、神とブラッドリー王家に弓引く行為である」

 なぜかな、嬉しいはずなのに胸が詰まって……鼻の奥が痛くて……差し出されたハンカチで顔を覆った。これで良かったんだよね?
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