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13.お家は明るい洞窟に決めた

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 新しいお家になる洞窟は、お祖父ちゃんが候補を教えてくれた。全部、お母さんの洞窟に近いところ。ベル様は肩を竦めて「まだ子どもだからな」って言った。

 僕はもうすぐ大人になるんだよ。だから子どもは終わりにするの。お母さんと遠い洞窟でも平気なんだからね。尻尾をぶんぶん振りながら、全部「いやだ」で拒否した。離れた洞窟がいいの! 大人だから。

「ここはどうだ?」

 ベル様は踵をとんと鳴らして、いきなり移動した。目を閉じて開いたら、洞窟の中にいる。初めて見る場所だし、匂いも知らない。きょろきょろして、奥が明るいことに気づいた。

「ベル様、あっち……明るいよ?」

「ああ、行ってみるか」

 まるで知っている場所みたいに、ベル様は歩き出した。洞窟の奥は暗いんだけど、なんで明るいんだろう。好奇心で飛び降りて走りたくなるけれど、ベル様と離れるのも嫌だ。結局抱っこで奥へ向かった。

「うわぁ……」

「いい洞窟じゃないか」

 ベル様も気に入ったみたい。洞窟の奥は、縦に穴が空いていた。空が見えるんだよ。光と雨が入るから、木や草が生えていた。森を小さく閉じ込めた感じがする。

 僕を抱いたまま、ベル様は森の奥へ入った。あ、水溜まりがある。お祖父ちゃんが丸まったくらいの、小さめの湖だよ。

「雨水ではなく、湧き水か」

 しゃがんだベル様の手が水に触れる。僕も真似して手を伸ばした。でも届かなくて、仕方なく尻尾を入れる。ここなら長いから水面まで届いた。

「降りるか?」

「やだ」

 ぎゅっとしがみつく。水は気になるけど、ベル様の抱っこの方がいい。今は抱っこの時間なの。子どもっぽいけど、まだ大人じゃないからいいんだよ。言い訳して、ふと気づいた。もしかして、早く大人になったら……僕はベル様に抱っこしてもらえなくなる。

「ベル様、僕……」

「どうした?」

「ずっと子どもでもいい?」

「……っ、理由を話してくれ」

 ベル様は少し悲しそうな顔をする。大人にならないといけないのかな。そう思いながら、考えたことを話した。大きくなれば、ベル様に抱っこしてもらえなくなる、と。

「くくっ、それなら俺を乗せて飛べばいいだろ」

「僕が、ベル様を?」

「ああ。魔王の奥さんなら、いつも一緒が当然だからな」

 そっか。小さい時は抱っこしてもらって、大きくなったらベル様を乗せる。うん、カッコいいと思う。ベル様は黒いから、銀色の僕に乗ったら目立つよね。

「僕、立派な大人になる!」

「俺が我慢できなくなる前に、成長してくれ」

 ぽんぽんと背中を叩かれ、大きく頷いた。ベル様は飛ぶのが苦手なのかも。だから僕が代わりに飛んで、ベル様を乗せる。そうしたら魔法で移動もしなくていいし、僕をもっと好きになってくれるよね。

 にこにこしながら、一緒に洞窟内を探検した。今まで見た洞窟の中で、一番いいと思う。飲む水もあるし、空から光も入ってる。木が生えていて、上から覗かれても見えないし。雨が降ったら横の穴に移動すれば、濡れない。

「どうだ? この洞窟に住むか」

「僕、このお家がいい」

「魔王城にはならんが、いい家になるだろう」

 魔王城は洞窟じゃない。将来は僕もお城に住むよね。魔王のベル様が旦那さんだもん。奥さんの僕はいつも一緒にいなくちゃ!

 でも、僕が大人になるまではこのお家がいい。ここでベル様と暮らす。なんだかワクワクした。
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