【完結】魔法は使えるけど、話が違うんじゃね!?

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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第2章 危険察知能力ゼロ

06.平和ボケのツケ(5)

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 別の用件で出掛けていたサシャが合流するのを待たず、ジャックとノアは市場へ向かった。

 まだ市場のどこかで迷子になっている可能性もある。誘拐されたと決め付けるのは早計だった。レイルは誘拐犯側から捜索してくれる筈だ。裏社会に通じた情報屋ならではの伝手があるのだから。

 戦場で使う薬や食料品、弾薬、武器まで扱う市場は、常に移動する。シンカーは組織の名前で、彼らは戦の気配を感じ取って店を開くのだ。戦いが始まると姿をくらまし、また戦後処理の中で市場を立てて商品を売りさばいていた。

 上手い商売だが、当然彼らも危険を分担する。彼らの商売は国に寄生するため、寄生先が負ければ戦勝国によって全財産を奪われてしまう。

 シンカーの市場は今回の勝利に沸いて浮かれていた。市場の規模がいつもより大きい。

 別の組織の連中が入り込んで騒動を起こしたとしても、今は抑えが利かないのだ。市場の責任者を責めても、人攫いの情報は期待できなかった。

 人ごみを掻き分けて歩きながら、あまりの混雑振りに舌打ちする。

「ライアンの奴……何をしていたっ」

 ぼやくノアの気持ちも理解できるジャックは、黒髪を慣れた仕草で撫でた。子供扱いに眉を顰めるノアへ言い聞かせる。

「まあ落ち着け。俺は左側の飲食店を中心に探すから、お前は小物や武器を扱う連中に聞き込んでくれ」

「……はい」

 素直に早足で人並みを抜ける部下を見送り、ジャックは呟いた。

「……普通に考えて、誘拐されたんだろうな」

 分かっていても可能性をつぶす必要があった。

 迷子じゃなければ、裏社会は顔の利くレイルに任せた方がいい。いくら優秀で名を馳せたジャックの部隊でも、所詮表の名声だ。顔が利くのは表側の世界だけ……裏はまったく別世界だった。

 人身売買ならマシだ。臓器や珍しい目の色目当てに攫われたなら、あの子供が無傷でいる保証はなかった。

 そんな話をしたら、きっとノアは怒り狂うだろう。

 はあ……大きな溜め息を吐いて、ジャックは市場の中心部へ急いだ。

 それから半日、各々の顔と伝手で調べまくった結果――キヨヒトの誘拐が確定となった。
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