16 / 1,100
第2章 危険察知能力ゼロ
06.平和ボケのツケ(5)
しおりを挟む
別の用件で出掛けていたサシャが合流するのを待たず、ジャックとノアは市場へ向かった。
まだ市場のどこかで迷子になっている可能性もある。誘拐されたと決め付けるのは早計だった。レイルは誘拐犯側から捜索してくれる筈だ。裏社会に通じた情報屋ならではの伝手があるのだから。
戦場で使う薬や食料品、弾薬、武器まで扱う市場は、常に移動する。シンカーは組織の名前で、彼らは戦の気配を感じ取って店を開くのだ。戦いが始まると姿をくらまし、また戦後処理の中で市場を立てて商品を売りさばいていた。
上手い商売だが、当然彼らも危険を分担する。彼らの商売は国に寄生するため、寄生先が負ければ戦勝国によって全財産を奪われてしまう。
シンカーの市場は今回の勝利に沸いて浮かれていた。市場の規模がいつもより大きい。
別の組織の連中が入り込んで騒動を起こしたとしても、今は抑えが利かないのだ。市場の責任者を責めても、人攫いの情報は期待できなかった。
人ごみを掻き分けて歩きながら、あまりの混雑振りに舌打ちする。
「ライアンの奴……何をしていたっ」
ぼやくノアの気持ちも理解できるジャックは、黒髪を慣れた仕草で撫でた。子供扱いに眉を顰めるノアへ言い聞かせる。
「まあ落ち着け。俺は左側の飲食店を中心に探すから、お前は小物や武器を扱う連中に聞き込んでくれ」
「……はい」
素直に早足で人並みを抜ける部下を見送り、ジャックは呟いた。
「……普通に考えて、誘拐されたんだろうな」
分かっていても可能性をつぶす必要があった。
迷子じゃなければ、裏社会は顔の利くレイルに任せた方がいい。いくら優秀で名を馳せたジャックの部隊でも、所詮表の名声だ。顔が利くのは表側の世界だけ……裏はまったく別世界だった。
人身売買ならマシだ。臓器や珍しい目の色目当てに攫われたなら、あの子供が無傷でいる保証はなかった。
そんな話をしたら、きっとノアは怒り狂うだろう。
はあ……大きな溜め息を吐いて、ジャックは市場の中心部へ急いだ。
それから半日、各々の顔と伝手で調べまくった結果――キヨヒトの誘拐が確定となった。
まだ市場のどこかで迷子になっている可能性もある。誘拐されたと決め付けるのは早計だった。レイルは誘拐犯側から捜索してくれる筈だ。裏社会に通じた情報屋ならではの伝手があるのだから。
戦場で使う薬や食料品、弾薬、武器まで扱う市場は、常に移動する。シンカーは組織の名前で、彼らは戦の気配を感じ取って店を開くのだ。戦いが始まると姿をくらまし、また戦後処理の中で市場を立てて商品を売りさばいていた。
上手い商売だが、当然彼らも危険を分担する。彼らの商売は国に寄生するため、寄生先が負ければ戦勝国によって全財産を奪われてしまう。
シンカーの市場は今回の勝利に沸いて浮かれていた。市場の規模がいつもより大きい。
別の組織の連中が入り込んで騒動を起こしたとしても、今は抑えが利かないのだ。市場の責任者を責めても、人攫いの情報は期待できなかった。
人ごみを掻き分けて歩きながら、あまりの混雑振りに舌打ちする。
「ライアンの奴……何をしていたっ」
ぼやくノアの気持ちも理解できるジャックは、黒髪を慣れた仕草で撫でた。子供扱いに眉を顰めるノアへ言い聞かせる。
「まあ落ち着け。俺は左側の飲食店を中心に探すから、お前は小物や武器を扱う連中に聞き込んでくれ」
「……はい」
素直に早足で人並みを抜ける部下を見送り、ジャックは呟いた。
「……普通に考えて、誘拐されたんだろうな」
分かっていても可能性をつぶす必要があった。
迷子じゃなければ、裏社会は顔の利くレイルに任せた方がいい。いくら優秀で名を馳せたジャックの部隊でも、所詮表の名声だ。顔が利くのは表側の世界だけ……裏はまったく別世界だった。
人身売買ならマシだ。臓器や珍しい目の色目当てに攫われたなら、あの子供が無傷でいる保証はなかった。
そんな話をしたら、きっとノアは怒り狂うだろう。
はあ……大きな溜め息を吐いて、ジャックは市場の中心部へ急いだ。
それから半日、各々の顔と伝手で調べまくった結果――キヨヒトの誘拐が確定となった。
42
あなたにおすすめの小説
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。
希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。
手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。
「このまま死ぬのかな……」
そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。
そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。
試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。
「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」
スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。
たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。
※本作は小説家になろうでも投稿しています。
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる