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第4章 やらなきゃやられる!

17.教育は情熱だ!!(7)

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「ごめん、わかんない」

 素直に尋ね直したところで、3本足の椅子が傾いた。さすがの反射神経でそれぞれがコップを掴み、乾パンだけが床に零れ落ちる。硬い音を立てた乾パンを拾い「3秒ルール、3秒ルール」と呟いて埃をはたく。

 子供の頃、親とやらなかったか? 落ちて3秒以内に拾ったら食べてもOK! という、何の科学的根拠もない迷信みたいなの。多少地方色はあるけど、近所の子も普通にやってたな。

 机代わりの椅子がなくなったので、右手のコップを床に置いた。キレイ好きなサシャが渋い顔をするが、さすがに注意まではしない。代わりになる台が手元にないのだから、仕方ないだろう。

「3秒ルールって、何だ?」

「いや、先に読み書きの説明して」

「キヨが呟いたくせに」

 埃をはらった乾パンを口に放り、唾液を吸われながらミルクで喉へ流した。ごくんと無理やり飲み込んだら、喉の奥で違和感がある。変な咳をしながら、残ったミルクを飲み干した。

「順番にいこう。まずは『話せると読める』の説明から。そしたら、『3秒ルール』の説明する」

 混乱してきた状況で、強引に話を分割する。納得したのか、ノアが説明役を買って出た。

「話せる言葉は読める。これは世界のすべての言語に適用される。2ヶ国語話せれば、2ヶ国語読めるという意味だ。逆に話せない言葉は読めない」

 端的に事実を語るノアは、サシャが引き裂いた干し肉をつまんで口に放り込んだ。咀嚼する回数が少ない。うん、次からはオレも裂いて食べよう。

「異世界人はすべての言語が話せるんだっけ?」

「そうだ」

「じゃあ、オレはすべての言語を読めるのか」

 さっきのルールによれば、そういう意味だろう。これは便利だ。すごいチートだった。だって、過去のオレは英語読めなくて話せなくて書けなかったんだぞ? 世界共通語なのに。大半の日本人が同じだろうけど、やっぱり話せたらいいなと思う部分はあったわけで。

「ああ、あと異世界人は書ける奴も多い」

「ん?」

 書ける奴が多いってことは、この世界では文盲もんもうが多いってことか? いや、文盲は読めて書けない人にも使えるのかな? 読めるのに書けない、の状況がわからない。

「読めたら、そっくり同じ形を書けばいいんだから書ける、よな?」

 ジャックが首を横に振った。ライアンがサシャの干し肉に手を伸ばし、大量に掴みすぎて手を叩かれている。なんか欲張りだな、ライアン。

「普通は読めても書けない」

「オレのいた世界だと、読めれば書ける人が多いから理解しがたいけど……そういうものか」
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