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第6章 聖獣、一方的な契約
21.呼ばれぬ客の想定外(2)
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即答で切り返す。会話が出来ることに驚いたのか、騎士が少し剣先をおろした。話したとしても獣なので、ちゃんと迎撃体制は整えておいて欲しい。
この場面で襲われたら、間違いなく噛まれるのオレじゃん。走れなくて正面にいて血の臭いがする獲物――オレだよね?
「セイ」
「なに?」
「この黒豹に何か命じてみよ」
リアムの提案に目を瞬く。確かに主従ならば、命令に従うはずだ。それで契約成立の有無を確認しようという考えは正しい。だが簡単な命令じゃ、従った判断する材料としては弱いだろう。猫が嫌がる自発的にしないことを命令する、とか。
ゆっくり首をかしげて考えて、猫が嫌がりそうな命令を思いついた。
「おいで、ここで腹見せて寝転がって」
しゃがみこんでひらひら手を振れば、素直に歩いてくる。その顔がすごく嫌そうなのだが、逆らう気はないようだった。ぺたんと座り、続いて伏せの形をとり、心底嫌そうにごろんと腹を見せた。犬ならばともかく、猫は通常嫌がる。そもそも呼ばれて近寄ったりしない。
猫の常識が豹に適用されるなら……だが。
『もうよいか?』
「あ、ああ……いいよ」
黒豹がおとなしく従ったため、騎士は従魔と判断したらしい。その剣は鞘に収められた。穏やかな日差しが柔らかくなってきた中、豹はぐるぐる喉を鳴らしながら近づき、大きな身体でのしかかってくる。
「お、重い……っ」
しゃがんだオレを押し倒す形で上に乗っかるが、誰も助けに来ない。契約が済んでいるという奴の言葉を信じる根拠があるんだろう。そういえば、勉強の中で従魔とやらの講義はなかった。まだ教えてなかったのか、普通はいらないと判断されるような珍しい事例かも知れない。
「キヨ、大丈夫か? にしても、西の聖獣様と契約するなんて凄いな」
無邪気なユハの発言に、豹を引き剥がそうとしていたジャック達が一斉に声をあげた。下敷きになったオレは顔も身体も手もあちこち舐められて、唾だらけだ。
「「「「「聖獣様!?」」」」」
「あ、あれ? 知らないで契約した、のかな」
「だって、コイツはオレを誘拐して追い掛け回した奴だぞ?」
反射的に指差して叫んでいた。ちなみに豹はまだ上に乗っている。契約がどうなってようが、名前すら知らないのが現状だった。
『ふむ……どうやら話が混乱しておるな』
「いや、爪で攻撃したよな?」
『そなたも我に火球を放ったであろう』
「そりゃそうでしょ」
『鉛玉まで飛んできた』
「肉食獣に追われたら反撃するわ!」
身を起こして言い争うオレに、リアムが後ろから抱きついた。体重をかけてしっかりのしかかっている。前から豹、後ろから黒髪美人。挟まれたオレは幸せなのだろうか。リアムにふくよかな胸があったら、きっと幸せだと断言できた。
「どうしたの?」
「……痛くないようだな」
この場面で襲われたら、間違いなく噛まれるのオレじゃん。走れなくて正面にいて血の臭いがする獲物――オレだよね?
「セイ」
「なに?」
「この黒豹に何か命じてみよ」
リアムの提案に目を瞬く。確かに主従ならば、命令に従うはずだ。それで契約成立の有無を確認しようという考えは正しい。だが簡単な命令じゃ、従った判断する材料としては弱いだろう。猫が嫌がる自発的にしないことを命令する、とか。
ゆっくり首をかしげて考えて、猫が嫌がりそうな命令を思いついた。
「おいで、ここで腹見せて寝転がって」
しゃがみこんでひらひら手を振れば、素直に歩いてくる。その顔がすごく嫌そうなのだが、逆らう気はないようだった。ぺたんと座り、続いて伏せの形をとり、心底嫌そうにごろんと腹を見せた。犬ならばともかく、猫は通常嫌がる。そもそも呼ばれて近寄ったりしない。
猫の常識が豹に適用されるなら……だが。
『もうよいか?』
「あ、ああ……いいよ」
黒豹がおとなしく従ったため、騎士は従魔と判断したらしい。その剣は鞘に収められた。穏やかな日差しが柔らかくなってきた中、豹はぐるぐる喉を鳴らしながら近づき、大きな身体でのしかかってくる。
「お、重い……っ」
しゃがんだオレを押し倒す形で上に乗っかるが、誰も助けに来ない。契約が済んでいるという奴の言葉を信じる根拠があるんだろう。そういえば、勉強の中で従魔とやらの講義はなかった。まだ教えてなかったのか、普通はいらないと判断されるような珍しい事例かも知れない。
「キヨ、大丈夫か? にしても、西の聖獣様と契約するなんて凄いな」
無邪気なユハの発言に、豹を引き剥がそうとしていたジャック達が一斉に声をあげた。下敷きになったオレは顔も身体も手もあちこち舐められて、唾だらけだ。
「「「「「聖獣様!?」」」」」
「あ、あれ? 知らないで契約した、のかな」
「だって、コイツはオレを誘拐して追い掛け回した奴だぞ?」
反射的に指差して叫んでいた。ちなみに豹はまだ上に乗っている。契約がどうなってようが、名前すら知らないのが現状だった。
『ふむ……どうやら話が混乱しておるな』
「いや、爪で攻撃したよな?」
『そなたも我に火球を放ったであろう』
「そりゃそうでしょ」
『鉛玉まで飛んできた』
「肉食獣に追われたら反撃するわ!」
身を起こして言い争うオレに、リアムが後ろから抱きついた。体重をかけてしっかりのしかかっている。前から豹、後ろから黒髪美人。挟まれたオレは幸せなのだろうか。リアムにふくよかな胸があったら、きっと幸せだと断言できた。
「どうしたの?」
「……痛くないようだな」
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