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第3章 白薔薇を赤く染めて
3-2.いつだって図々しいのは
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朝陽が差し込む部屋で、大きな天蓋つきベッドで目覚めた。
相変わらず、天井を見た瞬間にドキッとするのは変わらない。すでに毎朝の光景になっているのに、3年目の今でも慣れていなかった。
どうにも…違和感があるんだよなぁ。豪華すぎて落ち着かないっていうか…。
心の中でぼやいて、小さく溜め息を吐いた。
柔らかい絹の感触に手を滑らせ、同等の滑らかさを誇る白い肌に指を触れる。
隣で眠る主はしっかりウィリアムの髪を握り締め、まだ目覚めの兆候はない。
側近であり、執政という立場を預かるウィリアムが起こすまで、エリヤの朝は来ないのだ。
本来、執政とは側近の中でも政治面だけを預かる身分だった。それとは別に警護用の騎士を選び、プライベートを任せる近従を傍に置く。
しかし、多くの者が近くにいることを好まないエリヤは、すべてをウィリアムに与えてしまった。
つまりウィリアムは非常に忙しく、またとんでもなく強大な権力を手にしている。
政治の頂点である執政、軍事で最上階級の騎士、貴族から選出されプライベートにおいて国王をサポートする近従。
彼らは側近として国王の権力を肩代わりすることが出来た。それだけの実力と信頼を得た者が、側近という地位を得られるのだ。
エリヤに何かあれば、国王代理としてウィリアムが仕切らねばならない。
重圧を感じるほど、己の能力に不安はなかった。
任せても平気だと判断したから、エリヤも側近の頂点たる3つの地位をウィリアムに与えたのだ。その期待に応える日々は充実しているし、常に側に立つことを許される今に満足していた。
「エリヤ……もう起きて」
誰も彼の寝顔を見ることは許さない。
目覚めの柔らかい微笑みも、赤い唇から零れる吐息も、開かれた瞬間に心を射る蒼瞳も、自分だけが知っていればいい。
これは特権なのだから。
国王の寝所に侍るのは、本来ならば美女達。
正妻の王妃はもちろん、王宮公認の愛人である夜姫が伽をするのが当然だった。だが、幼いエリヤが部屋に呼ぶのはウィリアムのみ。
男色という噂が立つほど、公然と出入りしていた。
恋人であり、親代わりであり、兄の様でもあり……そして己の半身と認める最高の者を見つけてしまえば、それ以外の他人を侍らせる気はエリヤにない。
「……ん…」
まだ目覚めたくないのか、甘い吐息を漏らして唇が薄く開く。
ゆっくりと瞼が上がり、焦がれて止まない鮮やかな蒼が見えた。ふわり微笑んで、エリヤが手を差し伸べる。
「おはよう、エリヤ」
「おはよう……」
寝起きに掠れた声の恋人が強請るまま、そっと抱き起こしてやる。絹の衣がしゃらりと音を立てた。
抱き着いた小柄な体は、普段から体温が高い。
「……着替えようか」
こくんと頷く仕草を無言で行い、ぎゅっと抱きつくエリヤ。
どうやら今日は機嫌が悪いらしい。
親の庇護に守られる年齢で国王の地位に就いた彼は、甘えるのが酷く下手だった。どうしたらいいのかわからない……というのが、正直なところだろう。
そんなエリヤがここまで解りやすく甘えるのは、何か気に入らない証拠だった。その原因が自分でないことは、考えるまでもない。
ウィリアムに不満があるのなら、少年は手を伸ばしたりしないのだから。
長いブラウンの髪を抱き締めて、首筋に顔を埋めてくる。黒髪に指を絡めて梳いてやりながら、ウィリアムは口元に笑みを浮べた。
本当に可愛い……。
両親である国王夫妻が暗殺されてから、エリヤは誰も信じない。それ故に周囲が進める側近候補を無視し続けた。
エリヤの叔母、すなわち先代国王の妹姫が嫁いだ公爵家の跡取りとなる長男が、ウィリアム・シャーリアスだ。
彼が公爵家を継げないのは、母親が妹姫ではなく庶出の愛人だったからだろう。存在すら抹消され、戸籍も与えられなかった。
そんなウィリアムの才能に気づき、光の当たる場所に戻したのがエリヤなのだ。
互いが互いを必要とし、補い合い、時に奪い合うようにして隣にいる。
「着替えるから離して?」
頼むように告げれば、ムッとした顔で首を横に振る。離れるのは嫌だと意思表示する主に、苦笑してウィリアムはベッドから降りた。
舞踏会の翌日は、基本的に休みになるのが通例だ。
さまざまな理由はあるが、出仕する貴族がほとんどいないのは事実である。しかし国王たるエリヤの執務室は、普段通りの光景が繰り広げられていた。
「……都合のいい嘆願だな」
隣国オズからの要請を鼻で笑う。
幼い外見に似合わぬ優秀な頭脳と政治の才を誇る国王が、ひらりと書類を1枚捨てた。
「一応『親書』ですよ……」
足元に落ちたそれを拾い上げ、ウィリアムが溜め息をついた。
すでに目を通した書類に何が書かれているか、思い出すまでもなく浮かんでくる。
親書を送った相手を敬う気もないくせに、心にもないことを吐き出す唇を、エリヤが睨んで溜め息をついた。
――2年ほど前、この国はオズに攻め込まれた。
国境を越えた侵略者達は田畑を荒らし、罪もない民の命を奪ったのだ。
騎士としてウィリアムが出向き、軍を指揮して敵を退けたばかりだというのに……。彼らは恥知らずにも、この国に援助を要請した。
理由は、まったく降らない雨による旱魃だ。大きな山脈によって両国の国境は保たれている。そして、その山脈が両国の運命を分けた。
水分を含む海風は山脈で冷えて、雨となって落ちる。今まではそれが隣国オズにも降り注いでいた。
しかし、数年前から雨の量は減る一方だ。灌漑設備を国策として命じた国王の英断で、この国は乾かずに済んでいた。
「雨が減っているのは事実だが、手を講じなかった奴らが悪い」
雨の量が減ったのはどちらの国も同じ。
どんな手を打って雨水を確保し、均等に配分できるかが政治を司る国王の力だった。
「どうされますか?」
執政としての顔でしれっと尋ねるウィリアムを上目遣いに見つめ、少年は口角を持ち上げた。
「助ける理由がない」
未だ失われた家族の命を悼む民の心の傷も、踏み躙られた大地も癒えていない。
傷つけられた痛みを消化できていないこの国が、加害者であるオズを助けるのは『お人好し』過ぎるだろう。含まれた意味を間違いなく読み取り、三つ編みの青年がくつりと喉を震わせて笑った。
「結構辛辣だな、エリヤ」
言葉遣いが普段のウィリアムに戻る。
「お前もだ」
肩を竦めて賛否を交わしたウィリアムだが、最初からオズを助ける気などない。
隣国の国王の親書であった為、一応目を通してもらったに過ぎなかった。その証拠に、すでに書面に大きな×印が記されている。
「それと……これは今日届いたんだけど?」
くすくす笑いながら、さらに親書を胸元から取り出す。
どうやら、エリヤの反応次第では捨てられる運命にあったらしい。ウィリアムは常にエリヤ優先で動く為、国王に害が及ぶと考える書面や人物を勝手に処分することも少なくなかった。
目を通したエリヤが眉を顰め、書類を丸めて放り出す。
「くだらない」
「確かに……」
同意したウィリアムの手が、床の上でゴミになった2通目の親書を拾い上げた。
なりふり構っていられないのだろう。
娘である皇女をエリヤに嫁がせたいと書かれていた。だが「正妃に」という文章がない。つまり金を引き出せるなら、別に夜姫であっても構わないと考えたのだ。
国の為とは言え、売られる皇女がひどく哀れになる。
「急ぎの案件は?」
「これと、これ……あとはオレが処理した」
頼もしい側近の言葉に、静かに頷いたエリヤが新たな書類へ目を向けた。
俯き加減の艶やかな黒髪に光が当たって、僅かに緑がかって見える。
ウィリアムはその髪色がとても好きだった。初めて見た時から触れたかった髪に手を伸ばし、何度も感じた柔らかい感触に目を細める。
「ウィリアム……」
突然髪に触れたウィリアムの行動は、国王に対する不敬に当たる。
近くに親衛隊や貴族が居れば、大騒ぎになっただろう。
だが当のエリヤに咎める気はまったくなかった。逆に、もっと触れて欲しいのだと手に擦り寄る。
甘える仕草にくすくす笑うウィリアムの腕が、エリヤの細い肩に回された。
「……どうした? 何か気になってるんだろ?」
促す態度は子供をあやす様で気に入らなかったが、エリヤは素直に口を開いた。
相変わらず、天井を見た瞬間にドキッとするのは変わらない。すでに毎朝の光景になっているのに、3年目の今でも慣れていなかった。
どうにも…違和感があるんだよなぁ。豪華すぎて落ち着かないっていうか…。
心の中でぼやいて、小さく溜め息を吐いた。
柔らかい絹の感触に手を滑らせ、同等の滑らかさを誇る白い肌に指を触れる。
隣で眠る主はしっかりウィリアムの髪を握り締め、まだ目覚めの兆候はない。
側近であり、執政という立場を預かるウィリアムが起こすまで、エリヤの朝は来ないのだ。
本来、執政とは側近の中でも政治面だけを預かる身分だった。それとは別に警護用の騎士を選び、プライベートを任せる近従を傍に置く。
しかし、多くの者が近くにいることを好まないエリヤは、すべてをウィリアムに与えてしまった。
つまりウィリアムは非常に忙しく、またとんでもなく強大な権力を手にしている。
政治の頂点である執政、軍事で最上階級の騎士、貴族から選出されプライベートにおいて国王をサポートする近従。
彼らは側近として国王の権力を肩代わりすることが出来た。それだけの実力と信頼を得た者が、側近という地位を得られるのだ。
エリヤに何かあれば、国王代理としてウィリアムが仕切らねばならない。
重圧を感じるほど、己の能力に不安はなかった。
任せても平気だと判断したから、エリヤも側近の頂点たる3つの地位をウィリアムに与えたのだ。その期待に応える日々は充実しているし、常に側に立つことを許される今に満足していた。
「エリヤ……もう起きて」
誰も彼の寝顔を見ることは許さない。
目覚めの柔らかい微笑みも、赤い唇から零れる吐息も、開かれた瞬間に心を射る蒼瞳も、自分だけが知っていればいい。
これは特権なのだから。
国王の寝所に侍るのは、本来ならば美女達。
正妻の王妃はもちろん、王宮公認の愛人である夜姫が伽をするのが当然だった。だが、幼いエリヤが部屋に呼ぶのはウィリアムのみ。
男色という噂が立つほど、公然と出入りしていた。
恋人であり、親代わりであり、兄の様でもあり……そして己の半身と認める最高の者を見つけてしまえば、それ以外の他人を侍らせる気はエリヤにない。
「……ん…」
まだ目覚めたくないのか、甘い吐息を漏らして唇が薄く開く。
ゆっくりと瞼が上がり、焦がれて止まない鮮やかな蒼が見えた。ふわり微笑んで、エリヤが手を差し伸べる。
「おはよう、エリヤ」
「おはよう……」
寝起きに掠れた声の恋人が強請るまま、そっと抱き起こしてやる。絹の衣がしゃらりと音を立てた。
抱き着いた小柄な体は、普段から体温が高い。
「……着替えようか」
こくんと頷く仕草を無言で行い、ぎゅっと抱きつくエリヤ。
どうやら今日は機嫌が悪いらしい。
親の庇護に守られる年齢で国王の地位に就いた彼は、甘えるのが酷く下手だった。どうしたらいいのかわからない……というのが、正直なところだろう。
そんなエリヤがここまで解りやすく甘えるのは、何か気に入らない証拠だった。その原因が自分でないことは、考えるまでもない。
ウィリアムに不満があるのなら、少年は手を伸ばしたりしないのだから。
長いブラウンの髪を抱き締めて、首筋に顔を埋めてくる。黒髪に指を絡めて梳いてやりながら、ウィリアムは口元に笑みを浮べた。
本当に可愛い……。
両親である国王夫妻が暗殺されてから、エリヤは誰も信じない。それ故に周囲が進める側近候補を無視し続けた。
エリヤの叔母、すなわち先代国王の妹姫が嫁いだ公爵家の跡取りとなる長男が、ウィリアム・シャーリアスだ。
彼が公爵家を継げないのは、母親が妹姫ではなく庶出の愛人だったからだろう。存在すら抹消され、戸籍も与えられなかった。
そんなウィリアムの才能に気づき、光の当たる場所に戻したのがエリヤなのだ。
互いが互いを必要とし、補い合い、時に奪い合うようにして隣にいる。
「着替えるから離して?」
頼むように告げれば、ムッとした顔で首を横に振る。離れるのは嫌だと意思表示する主に、苦笑してウィリアムはベッドから降りた。
舞踏会の翌日は、基本的に休みになるのが通例だ。
さまざまな理由はあるが、出仕する貴族がほとんどいないのは事実である。しかし国王たるエリヤの執務室は、普段通りの光景が繰り広げられていた。
「……都合のいい嘆願だな」
隣国オズからの要請を鼻で笑う。
幼い外見に似合わぬ優秀な頭脳と政治の才を誇る国王が、ひらりと書類を1枚捨てた。
「一応『親書』ですよ……」
足元に落ちたそれを拾い上げ、ウィリアムが溜め息をついた。
すでに目を通した書類に何が書かれているか、思い出すまでもなく浮かんでくる。
親書を送った相手を敬う気もないくせに、心にもないことを吐き出す唇を、エリヤが睨んで溜め息をついた。
――2年ほど前、この国はオズに攻め込まれた。
国境を越えた侵略者達は田畑を荒らし、罪もない民の命を奪ったのだ。
騎士としてウィリアムが出向き、軍を指揮して敵を退けたばかりだというのに……。彼らは恥知らずにも、この国に援助を要請した。
理由は、まったく降らない雨による旱魃だ。大きな山脈によって両国の国境は保たれている。そして、その山脈が両国の運命を分けた。
水分を含む海風は山脈で冷えて、雨となって落ちる。今まではそれが隣国オズにも降り注いでいた。
しかし、数年前から雨の量は減る一方だ。灌漑設備を国策として命じた国王の英断で、この国は乾かずに済んでいた。
「雨が減っているのは事実だが、手を講じなかった奴らが悪い」
雨の量が減ったのはどちらの国も同じ。
どんな手を打って雨水を確保し、均等に配分できるかが政治を司る国王の力だった。
「どうされますか?」
執政としての顔でしれっと尋ねるウィリアムを上目遣いに見つめ、少年は口角を持ち上げた。
「助ける理由がない」
未だ失われた家族の命を悼む民の心の傷も、踏み躙られた大地も癒えていない。
傷つけられた痛みを消化できていないこの国が、加害者であるオズを助けるのは『お人好し』過ぎるだろう。含まれた意味を間違いなく読み取り、三つ編みの青年がくつりと喉を震わせて笑った。
「結構辛辣だな、エリヤ」
言葉遣いが普段のウィリアムに戻る。
「お前もだ」
肩を竦めて賛否を交わしたウィリアムだが、最初からオズを助ける気などない。
隣国の国王の親書であった為、一応目を通してもらったに過ぎなかった。その証拠に、すでに書面に大きな×印が記されている。
「それと……これは今日届いたんだけど?」
くすくす笑いながら、さらに親書を胸元から取り出す。
どうやら、エリヤの反応次第では捨てられる運命にあったらしい。ウィリアムは常にエリヤ優先で動く為、国王に害が及ぶと考える書面や人物を勝手に処分することも少なくなかった。
目を通したエリヤが眉を顰め、書類を丸めて放り出す。
「くだらない」
「確かに……」
同意したウィリアムの手が、床の上でゴミになった2通目の親書を拾い上げた。
なりふり構っていられないのだろう。
娘である皇女をエリヤに嫁がせたいと書かれていた。だが「正妃に」という文章がない。つまり金を引き出せるなら、別に夜姫であっても構わないと考えたのだ。
国の為とは言え、売られる皇女がひどく哀れになる。
「急ぎの案件は?」
「これと、これ……あとはオレが処理した」
頼もしい側近の言葉に、静かに頷いたエリヤが新たな書類へ目を向けた。
俯き加減の艶やかな黒髪に光が当たって、僅かに緑がかって見える。
ウィリアムはその髪色がとても好きだった。初めて見た時から触れたかった髪に手を伸ばし、何度も感じた柔らかい感触に目を細める。
「ウィリアム……」
突然髪に触れたウィリアムの行動は、国王に対する不敬に当たる。
近くに親衛隊や貴族が居れば、大騒ぎになっただろう。
だが当のエリヤに咎める気はまったくなかった。逆に、もっと触れて欲しいのだと手に擦り寄る。
甘える仕草にくすくす笑うウィリアムの腕が、エリヤの細い肩に回された。
「……どうした? 何か気になってるんだろ?」
促す態度は子供をあやす様で気に入らなかったが、エリヤは素直に口を開いた。
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