♂入れ替わりゆうしゃさま♀

シュテ

文字の大きさ
2 / 26

第1話 ここは何処ですか?

しおりを挟む





「またこの夢……」



重い身体をベッドから起こし充電中だったスマホを手に取り時刻を確認する。7時27分、どうやら目覚ましより早めに目が覚めてしまったらしい。何だかいつも同じ夢を見た時はこうして早く目が覚めてしまう、と言っても内容は朧げで上手く思い出せないのだが何となくあ、今日も見たなというのは分かってしまう。

2度寝してしまいたい衝動を抑えながら身体を起こし、んーっと伸ばす。気怠い身体を無理やり動かし顔を洗う。そしてリビングに向かい慣れた手付きでパンを焼いて冷蔵庫から取り出したジュースを飲む。
これがずっと続けてきた私の朝のルーチンワーク。女の子らしくないなぁと思いながらも朝はどうしても弱く簡単に済ませてしまう。

ぱぱっと身嗜みを整えて用意してあった鞄を持てば準備完了。女の子は準備が長いって良く言うが私はそれにあまり時間をかけない、幸いな事に容姿は整っていて化粧がしなくても見栄えがいい私はよくモテる。自分で言うとナルシストのように聞こえるかも知れないけど過ぎた謙遜は失礼とも言うし。と言っても特定の誰かとお付き合いをした事はないのだが。

そんな事はさておき私は幾分か目覚めてきた身体を動かしながら家を出る。

目的地は高校、今日も私 更西 亜里朱の1日が始まる。

















勇者ルーンのお話は国際的にも有名な話で誰もが知っている。

その昔世界は1つで繋がっていて侵略者から守り抜いてまた世界を救った、そんな話が現実だなんて思わない。けれどもやれ勇者さまは存在しただの、昔はこの地球もその世界の1部だっただの言われ続けている。

どの国もここが勇者さまの出身地だ、と言い合うように議論や出土物などを見せ合う展覧会は幾つも存在する。この日本でもそういう風潮は珍しくなくやれ島根がどうたら青森がどうたらと激しく各都道府県が凌ぎをけずっていたりする。


「ねぇほんともう飽きたくない?」

「勇者さまが偉大なのは分かったけどさぁ、そんないない人の事こんな勉強してもねぇ」

「だよねぇー」


そんな何処と無く聞こえてきた話し声を亜里朱は全くその通りだと思う。とてつもなくメジャーな勇者さまのお話は迷惑な事に自分たちが学習する範囲にまでくい込んできている。小中高とずっと聞かされ続けてきた生徒が飽きた、と言ってしまうのも無理もない。

英雄だか勇者さまだか何だか知らないがここまで来るといい迷惑なのだ。しかも存在するかも怪しい、というより殆どの人が存在すらしていないと思っているそんな勇者さまの話をここまで引っ張らないで欲しいものだと亜里朱は思う。

窓際の席で晴れた空をぼーっと見ながら亜里朱は思う、きっと勇者っていうのは夢の中に出てくる人の事を言うんだろうなと。
殆ど思い出せない夢の中で一際大きく脳裏に、けれども掠れているある男の子の背中を思い出しながら亜里朱は思った。



亜里朱は特に部活動には所属していない。なので学校が終わればそそくさと帰路につく。友達も多かれ少なかれいるが皆部活動をしていて一緒には帰れない。亜里朱も部活動やればいいのに、と口を揃えて友達は言うが何となく自分はやる気になれなかった。

将来の夢もなければ何かを生きがいにして生きている訳でもない。ただ何となく生きてそれなりに幸せになってそれなりの人生を歩んでいくんだろうと自分でも思っている。
そんなちょっと今どきの女子高生の思考から離れた亜里朱に彼氏持ちの友達が良く、出会いがあれば変わるよー、だなんて言われるが生憎と運命の出会い何てものは信じていない。

そんなロマンチックな想像は小学生で卒業したのだ。さて、今日は何のご飯を作ろうかと歩きながら考える。冷蔵庫には何が残っていただろうか、それによっては作るものを変わってくる。むむむ、と唸りながら歩いていると突然視界がボヤける。


「あれ、なんだろう」


ぱっと前を向くと光り輝く渦のようなものが見える、しかしちょっと遠くにあり過ぎて良く分からない。少し気になった亜里朱は寄り道して帰ろう、そう思った。
いつもは使わない道、少しドキドキするなぁなんて思ってしまった。もしかしたら冒険家とか向いてるのかもなんて思ってそれはないかとクスクスと笑う。

少しずつ光が強くなっていく。
もう少しで何か分かるかも、そう思った瞬間暖かい光が視界全体を覆う。


何かに包まれた感覚があり、何のことか全く訳が分からない亜里朱は突然襲ってきたとてつもない風と浮遊感に閉じていた目を開ける。




「って何で落ちてるんですかぁぁぁ!?」




気が付いたらお空の上だった。
なんのこっちゃ分からず不意に見てしまった下に広がる光景を見てしまって、あこれはダメだと亜里朱の意識は遠のいていく。

亜里朱は高いところがダメなのだ。












――――――――








「あぁ~、だりぃ、しんどい、寝たい」

ふわぁ、と気の抜けた欠伸をする。
何度繰り返しても次元移動というのは慣れない。というより前いた所では時間的にも夜に該当していた訳で、そしてその時間までやるべき事をしていた彼がそう言うのは仕方がないのかも知れない。

「まぁそうは言ってられないよなぁ、さてとお仕事しますか」

そう言って人気のない森の中で目を閉じる。傍から見れば立ちながら寝ている不審者そのものだが別に寝ている訳ではない。

「ふむ、文明レベルはBってとこか?生活基準も悪くない、ただまぁ身分制度かぁ久しぶりにみたな」

そう言って彼はぼりぼりと頭の後ろをかく。

「魔法技術はC、基礎中の基礎だなこりゃ。別段他からの干渉もないしこりゃ久しぶりに楽な仕事かもな」

目を開ける。彼が何をしていたのか、簡単に言えばこの世界そのものを見ていたのだ。別次元からやってきた彼はこの世界について何も知らない、だからこの世界を直接『みた』のだ。とある事情で数多の世界を回ってきた彼はこうして世界にそれぞれの格付けを行う。

どうやら今回の世界はとても平均的な世界らしく比較的平和らしい。

前いた所では文明らしき文明はほぼ存在せず生きる為には人から奪う、そんな事が当たり前な世界だった。そんな世紀末のような世界で立て続けに仕事をしてきた彼にとって今回の世界はとても平和的で欠伸が出るほど簡単に終わりそうな仕事だ。


「ん、なんだあれ?」


遠くの方に何が落ちていってるのが見てる。


「って人じゃんか、ていうかどっから落ちてきたんだろうなぁ」

そんな呑気な事を言いつつふわぁ、と欠伸をする。この世界には空から飛び降りるのが流行っているのだろうか。

「意識ないっぽいし、助けないと不味いよなぁ。めんどくせぇ」

はぁ、と一つため息をする。しゃあねぇか、そう言うと彼は跳んだ彼とその落ちていく人にはかなりの距離がある、それを彼はただ跳んだだけで追い付いて見せた。それもかなりの上空でだ。

頭から落下していっている人を抱き抱えようとしたその時だった。


「ってなんだ、これ!?」


一瞬で視界が光で覆われた。
罠か、そう思ったが優しく暖かい光が全身を包み込むような感覚がしてそれはないとそれを否定する。じゃあそう思わせる為の精神干渉系魔法か、そう思うがこの世界にそんな高度な魔法技術は存在しない。なら、と次の思考にうつるまえに視界が晴れた。


「……なんじゃこれぇぇぇぇぇ!」





















ぼやけた視界で辺を見渡す。
はて、私はいつ寝てしまったのだろう。確か私は……


「よう、目覚めたか」


そうやって私が話しかけてくる。
ん?

「あれ、私?」

「そうだな、この身体はお前のだ」


可笑しい、なんだか声が低くなっているような……というより男の人の声になってるような。ていうか何故私は私と話してるんだろう。

ってえ?


「な、なんで私!?」

「やっと意識がはっきししてきたか。取り敢えず、言わせてもらおう」



身体を見る、それは私のいつも見ている身体じゃなくて黒っぽい服にローブのような服を着ているがっしりとした男の人の身体だ。脳内でパニックに陥っている亜里朱をほっといて構わず目の前の私は口を開く。



「お前にはこれから世界を救ってもらう」



もう脳内で処理しきれなかった私はまた気絶した。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜

タナん
ファンタジー
 オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。  その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。  モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。  温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。 それでも戦わなければならない。  それがこの世界における男だからだ。  湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。  そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。 挿絵:夢路ぽに様 https://www.pixiv.net/users/14840570 ※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...