3 / 26
第2話 入れ替わり
しおりを挟む「つまり貴方にも良くわからないと……」
「まぁそうだな」
「ど、どうするんですかこれ!」
「んー……さぁ?」
空を飛んで挙句に身体が入れ替わるという摩訶不思議体験をした亜里朱の脳内は以前として大荒れだ。
しかも目の前の男……見た目はまんま亜里朱なのだが彼も何故こんな事になったのか全く分からないと言う。何でも助けようと近付いたら光に包まれたとか、自分も同じような光に包まれたのを覚えていた亜里朱は目の前の男が嘘を付いていないのを悟る。
「まぁそんな細かい事はどうでもいいじゃねぇか」
「良くないよ!」
ははは、と笑う目の前の自分。私はそんな大口を開けて笑ったりしない、はしたないのでやめて欲しい。
「一生このままとか絶対ありえないよぉ……」
はぁ~、と長いため息をつく。そうだ、自分はまだ何も出来ていない。これから自分だって人並みに幸せになってそれなりに良い人と一緒になって、子宝に恵まれて……
「夢見るのはいいがちゃんと現実も見てくれよ?というかお前絶対処女だろ」
「ばっ、何言ってるんですか!馬鹿なんじゃないですか!」
「その反応は図星だな。安心しろよ、そうやって夢見てる女ほどろくな出会いはあったもんじゃないから」
顔が真っ赤になっている事を自覚しながら自分を落ち着ける。これ以上まともに相手をしていてはまた墓穴を掘りそうだ。けれども彼の言葉を聞いてむっ、としてしまう。私だって女の子なのだ。少しは夢見たってバチは当たらないはず。
「私だって……女の子なんです。少しぐらい……夢見たって」
「……あー、はいはいわかったわかった。もういいから止めてくれ」
心底嫌そうに言う彼に言葉を遮られる。心なしか彼が私を見る目は凄く冷めたようなものを見るような目をしているように思えた。
「ちっ、どいつもこいつも……」
「何ですか?」
「何でもねぇよ。取り敢えずお前には世界を救って貰う、これは絶対だ。というか強制だな、良かったなこれからはお前が勇者だ頑張ってくれ」
何処か人事のように言う彼。
世界を救え、そんな事をいきなり言われてもまるで意味が分からない。生まれてからずっと平和に流されるように生きてきた亜里朱からしたらまるで想像が出来ないのも無理もない。そんな事はゲームや漫画の世界の話なのだから。
「そんな事言われても……私にはどうすればいいか分からないよ……」
「大丈夫、大抵の事は適当に武器振り回したり魔法使ったりしてたら解決するから」
「魔法使えるんですかっ!?」
「お、おう。というかお前ほんと表情が忙しいな……そうかお前んとこは魔法文明がないのな。身体からは微塵も魔力とか感じないし」
魔法が使える、そう聞いて柄にもなくテンションが上がってしまう。誰だって1度は夢見るものだ。空を飛んだり炎を出したりと1度は想像した事はないだろうか。
「試しにやってみろよ。適当にちっこい火を想像して『ファイア』って言ってみろ」
「えっと……『ファイア』」
柄にもなくテンションが上がりきっている亜里朱は手を突き出しさながら物語に出てくる魔法使いのように右手を突き出しながらそう言った。想像するのは火、取り敢えずライターの炎でいいかな。そう思いながら亜里朱は魔法を発動した。
亜里朱が魔法を発動した瞬間、手のひらからそれは巨大な炎の塊、もはや隕石のように大きなその塊は目の前の草や木あるもの全てを薙ぎ払いながら突き進み遠くの山にぶつかり合い山を跡形もなく消し飛ばした。
流れる沈黙。
「ってこれどうするんですかぁぁぁ!」
「いやいや俺がやったんじゃないし」
「あな、貴方が試してみろって言ったんですよ!責任とって下さいよ!」
「お前が力込めすぎなんだって、だからわざわざちっこい火を想像しろと……」
「ライターの火でこうなるなんて誰も思わないよ!」
「ライター?そりゃ恐ろしい兵器なんだな」
「なわけないでしょう!?」
ふー、ふー、と肩で息をする。この男にまともに付き合っていると此方が持ちそうにない。そもそもこんな事になっているのは誰のせいなのか。しかし彼も悪くなければ自分も悪くない、それどころか彼は自分を助けてくれようとしてこうなったのだからとばっちりも良いところなのだろう。
「もういいです……」
「そうか。取り敢えずあれだ、街に行こうか」
「行けばいいんでしょう……というより貴方の名前を教えて貰えませんか?いつまでも貴方、ってのも可笑しい話ですし」
「確かにそうだ」
そう言って彼はむむむ、と唸る。自分の名前にそんな考える事があるのだろうか。少ししてから自分の中で納得がいったのか彼は口を開いた。
「取り敢えず俺の事はシン、とでも呼んでくれ。そういう訳でお前の名前も教えてくれよ、現状じゃお前の名前を俺が名乗る事になるだろうしな」
「そうですね、私は更西 亜里朱といいます。更西が性で亜里朱が名前になりますね」
「分かった。ひとまずだが亜里朱、名前を借りるぜ。お前も俺の名前使ってくれや、宜しく頼む」
そう言いながら此方に手を差し出すシンにつられて自分もその手を握り返す。
まだ完全に理解に追い付いた訳ではない亜里朱は色々諦め始めていた。きっとこういう不可思議な事はもう考えたら負けなんだと、そもそも異世界に飛ばされた時点で自分の当たり前が通じる筈が無かったのだと自分に言い聞かせるようにした。
異世界に飛ばされただけでなく、異性と身体が入れ替わり何やら世界を救えとわけも分からないことを言われ普通ならパニックになって発狂しても可笑しくないのだがここまで来るとひと回りしてきて諦めの境地に入るというものだ。
以前としてやる気のなさそうにしている男、今は自分の体であるが彼とはウマが合わない。そんな気がする。前途多難だ、これからどうしようか。
何度目か分からないため息をこぼしながら2人は歩いて行く。
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜
タナん
ファンタジー
オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。
その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。
モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。
温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。
それでも戦わなければならない。
それがこの世界における男だからだ。
湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。
そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。
挿絵:夢路ぽに様
https://www.pixiv.net/users/14840570
※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる