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第12話 こうズバッと
しおりを挟む「なぁ悪かったって」
「うぅ……もう最悪だよぉ……」
無事?男達を撃退してクリムゾンドラゴンの討伐に向かう2人。しかし雰囲気はいつも通りギクシャクしていた。
「減るもんじゃないんだからさぁ」
「色々減ってるよ!」
「まぁ何でもいいけどさ、お前がドラゴンぶっ倒すんだからシャキッとしてくれよ」
「わ、私が!?む、無理に決まってるよ!」
「無理も何もお前が俺の身体使ってるんだからこう……ドカン!とでもズバッ!とでもいいから倒してくれればいいからさ」
「無理です無理です無理です無理です無理です無理です!そもそも普通の人間がドラゴンに挑む事自体無謀って気がついてよ、私はシンに何か倒す為の手段があるんだと……」
「手段も何も俺なら余裕だ、だから任せた」
「不安しかないんですけど!?」
実際シンはドラゴン程度なら何度も戦ってそして倒してきている、それに世界を回っていればドラゴンなんて可愛く見えてしまうほど理不尽な存在だって存在するのだ。
けれども幾ら最強のシンの身体だからと言っても亜里朱自身は戦いとは無縁の平和な地球で生まれ育った正真正銘の一般人。最強キャラを初めてコントローラーを握った人間が操作しているようなものだから本人が不安になるのは仕方がない。
そして2人が討伐に向かうのは太古の昔から生きていると言われているクリムゾンドラゴン。
全長90m以上という巨体を持ちあらゆる物理攻撃、魔法攻撃を受け付けない鋼のような鱗。人より強大な爪は見るものを恐怖させる。そんなクリムゾンドラゴンにこの世界の人類は今の今まで敗北を繰り返してきた。その巨体から放たれる炎のブレスは全てを灰に変える。
数々の歴史に名を残してきた騎士達が挑んできたが結果は惨敗。刃も通らず魔法も効かないクリムゾンドラゴンに打つ手はなかった。
そのクリムゾンドラゴンは意外と大都市であるエルミナーゼに近い場所で眠っているらしく隣山の火山口の中、マグマの中にいて普段は姿は見えない。しかしその山にはモンスターという類は存在せず皆クリムゾンドラゴンの存在に恐れをなしてそこには近寄らないのだろう。
という噂だけ聞いていれば勝てる気がしないのも無理もない話だ。実際亜里朱は微塵も勝てると思っていない。
「ねぇ、ほんとに勝てるの?……」
「大丈夫大丈夫。ズバッとしてバシュ!だから」
「私にも分かるように話してよっ!」
「わかんねぇかなぁ。えっと……こうバシュッ!ズバッ!だよ」
「ごめん。何が違うか分からないや」
安心して欲しい。多分誰にも分からないと思うから。
2人があーだこーだ言ってる間に山に入っており途中の上り坂でシンがバテたり亜里朱が引き返そうと駄々をコネながらも火山口付近まで辿り着いた。
「ここ……だな」
「うわぁ、暑いね」
「まぁ本物のマグマだからな。俺でも落ちたら死なないとは思うけど超熱いと思うから気を付けろよ」
「死なないんだ……それはそうとこの中にドラゴンがいるんでしょ?これじゃ倒すも何もこっちから手を出せないんじゃ?」
だから帰ろ、と懇願するような目線を向ける。だがしかし身体が入れ替わった今全くもって効果はない。寧ろキモいまである。さぞ普段の身体であれば絵になっていただろうが今は男だ。
「お前武器……いや無理か」
「??私武器なんて持ってないよ」
きょとん、と首を傾げる亜里朱。何度も言うが今は男である。
「いやなんでもない。一応あるっちゃあるんだが……これだな」
「これって……ナイフ?」
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