♂入れ替わりゆうしゃさま♀

シュテ

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第15話 変化

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帰り道一言も会話はなかった。
シンも会話をする気になれなかったし亜里朱もそういう気分ではなかったのだから当たり前と言えば当たり前だった。
何となく食事をする気にもなれないでただ宿に帰り気が付けばもう夜中。部屋は1つしか取っていないので必然と部屋の中の空気は重くなっていた。
日付が変われば不思議な光が2人を包む。そして本来在るべき姿へと戻る。
そこでやっとシンが口を開いた。

「.......俺ちょっと外出てくるわ」

それは必然でもあった。
ずっとこんな空気の中にいるのも勘弁だし今はお互いに同じ空間にいない方がいいのだろう。
座っていたソファーから腰をあげ扉に行こうとすると引っ張られた。誰が。いやそんなことは分かりきっている。
ただ俯きながら手を伸ばし服を掴んで離そうとしない。
表情は見えない。だから何を考えているのも分からない。強引に引き離す事も出来るがそうはしなかった。

「お願い、傍にいて」

弱々しく今にも消え入りそうな声。
服を掴む手は少し震えていた。
バツが悪そうに頭をかき隣へと腰を降ろした。それでも亜里朱は服を離そうとしない。シンはなにも言わない。ただ隣に座り居心地が悪そうに天井を見上げていた。

「私怖かった」

ぽつりぽつりと亜里朱は語り出す。

「もしかしたら街が無くなってたかも知れない。そう思うと震えが止まらなくなった」

木々がなぎ倒され見るも無残な森。
跡形もなく消し飛んだ山。
亜里朱はそれまで何処かまだ自分が夢でも見ているんじゃないかと思っていた。目が覚めれば自分の部屋のベッドで。いつも通り学校に通う。そんな日常に帰れるんだと心のどこかで信じていた。
でも違った。

「シンがドラゴンと戦っているのを見ているとずっと胸の辺りが苦しくて切なくて.......」

縋る様にシンの服をギュッと握り締め顔をあげる。目尻には涙が溜まり今にも溢れだしそうだった。
シミ一つない白い肌。ぱっちりとした目に腰に届くほど長い栗色の髪。
まるで御伽噺に出てくる聖女のような何処か神聖さを持つ彼女は余りにも似ていた。シンは内心毒づく。
そのアイツにそっくりな顔で。そっくりの声で。悲しそうな顔も今にも泣き出しそうな声も。
分かっている。亜里朱はアイツとは別人でそれでも余りにも似すぎている。これを偶然と言える程楽観視なんてしていない。何故身体が入れ替わったのか、そして何故こんなにもアイツに似ているのか。
けど確実に言えるのは亜里朱はアイツとは別人だと言うこと。

「分かってる。分かってるの。そうするしか無かったっていうのは。けど私にはシンが痛々しく見えた、だからせめて無茶だけはしないで.......」

そう言って自分を見上げる亜里朱を抱き締めようとして、止める。空中で行き場をなくした両手が力なく落ちた。
果たして自分に彼女を抱き締める資格があるのだろうか。男ならここで抱き締めるぐらいの甲斐性見せるべきなのかもしれない。けどこの血で汚れた手でこの汚れなき彼女に触れてもいいのだろうか。
きっとそれは決して許されないのだろう。











(あれ?私.......)

どうやら自分は寝てしまったらしい。辺りはまだ暗く感覚的にもまだ身体は入れ替わる前だと言うのは何となく分かった。
身体を起こそうとして右手で何かを掴んでいる事に気が付いた。

「.......ぁ」

横を見るとシンが静かに寝息をたてていた。そうか、自分がずっと服を離そうとしないからずっと隣にいてくれたのだろう。やっぱり何だかんだで彼は優しい。

「ふふっ」

自然と頬が緩む。
起きていれば生意気で巫山戯た事しか言わない彼も寝ている間は何処か幼くて可愛く見える。そう思うと自然と頭を撫でていた。すると寝苦しそうに顔を顰める彼がまるで「子供扱いすんじゃねぇ」と言ってるようで笑い声が漏れる。
こんな無防備を晒しても何もされなかったのは少し女の子的には頂けないが、いや何かされていたらそれはそれで良くはないのだが乙女心というのは複雑なのである。
それにしてその時は自覚がなかったが少し自分は大胆過ぎたのではないか?
部屋を出ていこうとする彼を引き留めて縋り付くように泣きそして無防備に寝てしまう。
それを今になって自覚した亜里朱は今更恥ずかしくなってきた。
それに今も同じベットで.......

「っ!?」

羞恥が限界までいき反射的に掛け布団引き上げ口元を隠す。


(いやいやいや!?隣でシンが寝てるのにこれじゃ意味が無いでしょ!?)

顔は真っ赤で今彼の顔を見ればもっと自分がパニックになるだろうと何となく分かるので反対側に顔を向けるように寝る。
別に同じベットで寝る必要はもうない。それに年頃の女の子的にはこういう事をするのは良くないのだろう。けれど不思議と移動しようとは思わなかった。
今もドキドキするし顔から火が出るほど恥ずかしい。でも離れたくない。

(不思議.......シンとはまだ会ったばかりなのに。昔から知っているような、そんな感じがする)

紛れもなく2人はまだ出会ったばかりだ。なのにずっと一緒にいたような。そんな懐かしさと安心感がある。
気の所為だよね。そう決め付けると亜里朱は目を瞑るのだった。
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