猫耳のおじさん護衛騎士

関鷹親

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17 侍従は見た

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「な、なんてこと……なんてことだっ」

 カステルは口に手を当て、必死に声を出さないように努めていた。著書缶を訪れ暫くしてから、ケインズから飲み物を頼まれ図準備をして戻ってきてみれば、あり得ない光景を見てしまったのだ。
 声を掛けようと開いた口を手で押さえ、慌てて本棚の間に身を隠す。己の存在を気づかせてはいけないと、呼吸すらも浅くした。

 落ち着きを取り戻してから、こそりと本棚から覗き見れば、そこにはケインズが熱い眼差しでソルドを見つめ、ソルドは蕩けたような恍惚とした顔をケインズに向けていた。
 こんな光景をカステルは今まで見たことがない。一体何がどうなってこうなったのか。そもそもいつから二人はそんな関係になっていたのか。
 ソルドの頭を撫でるケインズの手に摺り寄せるソルドの表情はとても緩んでいて、いつもの表情とは違う。
 更に近づく二人の距離に、カステルは顔を真っ赤にさせ静かにその場を離れた。図書館の扉をゆっくりと閉め、息を吐き出す。未だ心臓は驚きすぎてバクバクと痛いくらいに脈打っていた。

「すまないが、そこをどいてはくれないか」
「!?」

 文官だろう男が扉の前で塞がるように立っているカステルを、訝し気に見てきた。だがカステルはそれどころではない。
 今中では主君とその騎士が愛を育んでいるのだ。それを踏みにじられるなど、もってのほかだ。

「今は殿下が使用中です。お帰りを」

 にこりと笑む顔に圧を込めたカステルは、ここは誰も通さないぞと気合を込めた。カステルは非常に優秀な侍従である。例え盛大な勘違いをしていようとも。

 二人は暫くして図書室から出て来た。ケインズはまるで花を飛ばさんばかりに上機嫌。対してソルドは、顔を僅かに赤くさせそわそわとどこか落ち着きがない。
 まさか致してはいないだろうな!? と要らぬ心配をするカステルであったが、顔には動揺を悟られないように笑みを張り付ける。
 下手に第二王子の侍従を長年務めているだけあって、ポーカーフェイスはお手の物だ。好奇心を抑えつつ、カステルはケインズに付き従い執務室へと戻るのだった。



 いつもより早く執務を終えたケインズは、カステルを下がらせると圧を込めてソルドを見た。
 ソルドはとても気まずそうに、そして恥ずかしそうに視線を彷徨わせている。椅子に座るよう促せば、尻尾が邪魔になるのか上手く座ることができないようで、何度も座りなおしていた。
 その姿が微笑ましく、ソルドが困っているというのに小さく笑みを漏らしてしまう。

「んんっではその耳と尻尾がなんなのか、僕に詳しく説明してもらおうか」

 ソルドは諦めたように、ジェスと出会った経緯から話していった。そんなことをするような人ではないとわかってはいるが、鼻で笑われはしないか、信じてもらえないのではないかと、内心泣きそうになりながらも、ソルドは業務報告をするようにケインズに話した。

「なるほど、魔法猫……私はてっきり、過労で倒れた時に頭を打って幻覚が見えているのかと思っていたよ」
「まさかそんな……それにしては日が経ちすぎているでしょう」
「? ソルドが帰って来た日から、君の頭と尻にはしっかりとその耳と尻尾が見えていたけど?」
「……はい?」

 そんな前からこの姿を見られていた? ソルドの頭はまたもや混乱陥る。猫の姿になってしまったのも、耳と尻尾だけが残されてしまったのも今朝が初めての出来事だ。それに昨日までは確かに自分自身にはこんなものは着いてはいなかった。
ケインズの視線が気になってからというもの、念には念を入れ身だしなみを気にし、鏡を以前より見るようになっいていたのだから間違いない。

 ジェスに事の次第を問いただせねば……そう心に決意するソルドの耳と尻尾の動きを、目を細め観察しているケインズに、ソルドは気が付いていなかった。
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