猫耳のおじさん護衛騎士

関鷹親

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14 尻尾の行方

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 ケインズはすっきりとした朝を迎えていた。ベッドの上で顔を洗い目を覚ましてから、着替えるべく場所を移動した。
 カステルによって次々に衣服を着せられたあとは、長い髪を櫛と香油で整えられる。肩口で綺麗にリボンでまとめられれば、麗しい姿が完成する。

「昨日の猫は可愛かったねキャス。ソルドが連れ帰ったが大丈夫だろうか」
「なんでもそつなくこなせるソルドさんなら大丈夫ですよ。ふふ、それにしても猫が好きだったんですね。あんなに食い気味に自分が預かる! って言ってきたので僕びっくりしちゃいましたよ」
「確かにね。飼い主が見つかってしまったら、落ち込んでしまうかもしれないね?」

 会話に花を咲かせながら、カステルが前後左右に不備が無いか確認し、ケインズ自身も姿見で確認し納得した二人は部屋から出た。

「おや?」

 いつもは真っ先に見えるはずのソルドの顔が見当たらず、ケインズは少しばかり首を傾げる。扉の前を守っていた衛兵は、申し訳なさそうに眉を下げた。

「申し訳ございません殿下、リエング卿はまだ来られていないのです」
「そうなのかい?」

 いつもであるならば、ケインズが部屋を出る十五分前には扉の前に待機しているというのに。

「キャス、少し部屋で待っていようか」
「そうですね、不寝番の護衛も下がっているようですし、ソルドさんのことですからすぐに来るでしょう」

 朝食を部屋へと運ばせ食べていれば、扉がノックされソルドが部屋へと入ってきた。

「遅れてしまい申し訳ございません殿下」
「珍しいこともあるものだね? 今日はどうして……あぁ昨日預かったあの猫のせいかな?」

 生まれてはじめての遅刻に、どう言い訳をしたものかと悩みに悩んでいたソルドは、それだ! とケインズの言葉に乗ることに決めた。
 ジェスの魔法のせいで朝から大混乱に陥ったのは確かで、決してこれは嘘ではない。

「そうですね、朝から色々と大変でした」
「ふふ、君が猫相手に慌てている姿か。ちょっと想像できないね、キャス」
「確かにそうですね。ソルドさんでも手こずることがあるんですねぇ」

 良かった信じて貰えた、と胸を撫で下ろしたソルドだったのだが、反対にケインズは内心首を傾げていた。
 いつもは見える長いふわふわした尻尾が見当たらないからだ。優雅に紅茶を飲みながら、チラリとソルドの頭を見やる。
 そこには変わらず、愛らしい三角の耳がぴこぴこと動いていた。であるにも関わらず、長い尻尾は見当たらない。

「……殿下? 何か私に御用が?」
「ん? あぁいや、少しぼうっとしてしまっただけだよ。まだ眠気が取れなくてね。キャス、コーヒーを頼めるかい?」

 苦し紛れにそう言って危ない、危ないとケインズは朝食を食べすすめた。
 それから執務室で政務を行う合間に、ケインズはチラチラとソルドの様子を窺う。
 もしや尻尾だけ見えなくなってしまったのだかろうか。だがそんなことがありえるのか。あの長くくねくね、ゆらゆらとする尻尾は癒しのひとつであったと言うのに。
 ソルドの後ろ姿を見ようにも、護衛は常に背後に控えるか、扉を背に室内で佇んでいるため、基本的にケインズがソルドの背を見ることはない。

「図書館に行こう」

 よし、と考えを纏めたケインズは席を立つ。背後を見る機会がないなら作ればいいのだ。
 わざと高い場所にある、ケインズではギリギリ届かない場所の本をソルドに取らせればいい。
 我ながら完璧だなと、ケインズは意気揚々と執務室を出た。

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