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端午の節句

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秋悠と結婚して更に季節が少し巡った頃に私は子供を身籠った。

私はそれを告げた時の秋悠のことは死ぬまで忘れないと思う。

少し熱っぽくて眠気が止まらない日々にお義母さんに勧められて病院に行ったところおめでただと言われた。

そしてそういえばここのところ生理がきてなかったと一瞬納得し、その直後ものすごい勢いで驚いた私は今思い返しても滑稽である。

家に帰ってお義母さんに

「結果は秋悠に一番に伝えたいのでその後でもいいですか?」

と、結果が丸分かりな発言をしたのも忘れていない。

恐らく初めての妊娠発覚に冷静ではなかったのだと思う。

だけど秋悠はそれ以上で、大事な話があるといい、二人きりでお茶を飲みながら伝えると、秋悠は、盛大にそのお茶を吹いた上に、まだお茶が入っている湯飲みを落とし、椅子を倒して、テーブルの脚に自分の足をぶつけ、更に躓きながら短い距離を詰めて来て「やったぁー!!」と叫びながら私をギュウギュウに抱きしめた。

私はそのあまりの力にサバ折りにされると焦ってつい秋悠をぶっ叩いたのに、それでもなかなか放してもらえず、

「そんなにギュウギュウされたらお腹の子供諸共死ぬぅぅぅ!!」

と叫び、慌てて離れた秋悠の頭に何故かタレ耳の幻覚が見えて笑ってしまった。

だけどそれ程に喜んでもらえたことはその時の私の人生の中で一番幸せだと思った。

次の日お義母さんを始め、お義父さんや実家の両親に伝えるとそれはそれはとても喜んでお祝いをしてくれた。

友達ももちろん祝ってはくれたが、それよりも秋悠と私のやり取りに大爆笑していた。

そして更に三つ季節が巡って男の子を生んだ。

ちょうど冬生まれだったことと、私たちの名前に『冬』だけがなかったことから名前は『叶冬(かなと)』と名付けた。

そして現在、五月五日。

端午の節句でいわゆる子供の日。

何ヶ月も前からやれ鯉のぼりだ兜だ鎧だ袴だと祖父祖母が孫の初節句にテンション上がりまくりで大枚を叩いた結果、とても豪華なお祝い…いや…家族の友達から店の常連さんまでを招待したパーティーをお店で開催している。

お食い初めの時も大概だったが、初節句はそれ以上だ。

この様子だと叶冬の一才の誕生日がある意味恐ろしいと秋悠と二人で苦笑したのは昨日の夜のこと。

祖父祖母に抱かれてキャッキャと笑う息子に笑顔で祝ってくれる皆。

私は秋悠と笑い合って「幸せだね」とこっそりと繋いだ手に力を込めた。

間違いなく今までの人生でだ。

私はこうして一番幸せをしながらこの場所で秋悠と家族と皆で生きて行きたいと心から願った。
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