婚約破棄を喜んで受け入れてみた結果

宵闇 月

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「リリアナ・バレンシア侯爵令嬢!僕はお前との婚約を破棄してこのマリアナ・オニール男爵令嬢と婚約する!これは決定だ!反論は許さない!」

いきなり名前を呼ばれたと思ったらこれですか。

別に反論なんかないですけどね。

むしろありがたいというか。

ただ場所は考えて欲しかったですね。

現在私は婚約者に婚約破棄を告げられていた。

確かにいろいろ思うところはあるがこれはある意味チャンスでもあった。

イヴァン様から離れられる最高の。

だから私は怒り狂ったお父様を見ない振りをして答える。

「喜んで受け入れます」

と。

それはそれは極上の笑みを湛えて。

それなのに何故かイヴァン様は納得のいかない顔をして私を見ている。

何故かしら?

私は首を傾げた。

が、次の言葉に驚いた。

「イヴァン様ぁ~、リリアナ様が強がっておいでですよぉ。本当は悔しいくせにぃ」

なんとも間延びした話し方で勘違いも甚だしい言葉を発したのはイヴァン様にベッタリと寄り添っているマリアナ様だった。

そしてそれに続くようにイヴァン様までが

「そうだろうな。この女はプライドが高いから泣き縋りたくてもできないのだろう。まあ、泣き縋ったところで結果は変わらないがな」

などと言い出した。

誰が誰に泣き縋るというのだろう?

プライドが高い?

それはあなたでは?

私の中に様々な感情が渦巻く。

だけどここは王家主催の夜会。

私は淑女。

その矜持で私はグッと耐えた。

周りからはヒソヒソとした話し声が聞こえる。

チラリと見るとお父様が怒りで真っ赤になっていてマクドネル公爵は真っ青になっていた。

そりゃそうだ。

金銭的な問題で結ばれた婚約なのだから。

しかもここは王家主催の夜会会場だ。

まともな親なら愚息が繰り広げているこの茶番が何をもたらすかくらいは分かるはずだ。

とにかくこれ以上騒ぎを大きくする訳にはいかない。

私は淑女然として開いていた扇をパチンと閉じ真っ直ぐに二人と向き合った。

そして

「とにかく、この話は受け入れますのでまた日を改めて」

とこの場を収めようとする。

が、またしても間延びした声に邪魔をされる。

「え~、泣きそうだからってぇ~そんなに強がらなくてもいいじゃないですがぁ~」

あり得ない。

ここがどういう場か分からないのだろうか?

私の中で何かが切れそうになった時、背後から凛とした声が響く。

「我が王家主催の夜会で何やら楽しいことをしてる人たちがいるね?」
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