懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話

六剣

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第298話 地球の言葉を喋れ!

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「コーン……(ふぅ……)」

 『Mk-VI』は壁に力無く座り込んで気を失っているジェットを見下ろして一息つく。

『フェニックス。相当に無茶をしおってからに!』
「やっぱり、今のマズかった?」
『わし出なければ速度調整が追いつかず、『Mk-VI』はオーバーフローを起こしておるところじゃ!』
「ごめんごめん。次は使わない様にするよ」
『そうしてくれ!』

 『骨輪』は古式の中でも正面から相手の意表を突くことが可能な術の一つ。
 しかし、動きを止める必要があり、速度が上がりきる前に相手からも攻撃を受けてしまうので『Mk-VI』の耐久力が無ければ使いどころはなかっただろう。

『しかし、ジェットの奴も相当な使い手じゃった。首と腰に対する負荷が凄まじい数値を出しておる』
「いや、ホントにヤバかったよ」

 ジェットの“毒”にケンゴが耐えられたのはサマーが首と腰を重点的に補佐したからである。ジェットは、牛に殴りかかっているのと変わらなかった。

『じゃが……いくら、わしと『Mk-VI』があるとは言え、ジェット・ベイクを下すとはな!』
「運が良かっただけだって。彼がオレに付き合ってくれたからだよ」

 アウト距離からフットワークを駆使されたら、負けないにしても時間切れになっていただろう。高い実力を持つ故の油断。こちらが素人である事がジェットに隙を生んだのだ。

『お主は油断するでないぞ!』
「そんな余裕はない」

 今の戦いは本当に紙一重だった。調子に乗るのは止めよう……
 『Mk-VI』はジェットの上着で彼を縛り上げてから、先へ進む。
 角を曲がると奥に目的の扉が見えた。

『あの部屋じゃ』
「よし――」

 オレは少し駆け足で先に進む。後はショウコさんを連れて船から脱出だ! 何て言おうかな。助けに来たよ、キリッ! これで行くか――

「――」

 その時、オレは横から凄まじい力で掴まれた。そちらに視線を向けるとT字路から現れたグラサン大男がオレの肩を掴んでいる。

「お前が敵か」
「ユニっ!?(うげ!?)」

 外そうと掴んでいる肩に手を伸ばす。その瞬間、

「セイッ!」

 グラサンの“左鉤突き”がオレの腹に炸裂。ビー! と警告音。総重量80キロを越える『Mk-VI』が浮き上がる。

「ユニユニユニ!(空手マンかよ!)」
「地球の言葉を喋れ!」

 破ッ! とグラサン男の“正拳突き”でオレは吹き飛ばされた。『Mk-VI』が異常負荷を検知し、ビー! と再度警告が鳴る。身体はズザーと滑ってショウコさんルームから遠退いた。

『何があったフェニックス! 乗用車の衝突と同じ衝撃を二度も検知したぞ!?』
「なんでそんなデータがあるの……?」

 オレは仰向けになりながらツッコミを入れる。
 生身なら間違いなく死んでいた。加えて、なんか少し気持ち悪い。おぇ……内臓に少し効かされたか……

「先輩の言った通りになったか……」

 上着を脱ぎ、国尾さんにも引けを取らない体格を搭載したグラサンがショウコさんの部屋の前に立ちふさがる。だから、サングラスを取れって……

『ぬ!? 言語機能の損傷じゃと!? たった二撃でこのダメージ! 次にまともに受ければ終わってしまうぞ!』
「全く……ハードな一日だな!」

 オレは呼吸を整えて立ち上がる。





『ゲイル、敵が侵入した可能性があります。ジェットがそちらへ行くので社長の警護は彼と代わり、貴方も流雲様の警護に向かいなさい。私も今向かってます。5分毎に連絡を入れますが、もしジェットも私からの連絡も無かった場合、流雲様の部屋の前で待機しなさい』

 先輩の読み通りだったと言うことか。
 ゲイルはスマホでカーシャの指示を受けて、ジェットも彼女からの連絡も来なかったのでショウコの部屋の警護に回った。
 すると、目の前を通り過ぎようとしたユニコ君『Mk-VI』を発見、反射的にその肩を掴むと、フルコン空手を叩き込む。

「ここまで侵入するくらいだ。タダの装備じゃないな?」

 ずんっ! とゲイルは重々しく構えを取る。それは巨大な門を彷彿とさせる堅牢な構え。彼を無力化しなければ何人も通る事は許されない。

「ここは通さん」

 油断の欠片もない。ただあるのは目の前の敵を無力化すると言う使命のみ。

「――――」

 と、『Mk-VI』は立ち上がると少し脱力しつつ、ゲイルへと歩み寄る。
 まるでやる気のない様子だが、逆にゲイルの警戒心を強めた。

 何をしてくる? いや……小細工など俺には効かん! 正面からねじ伏せる!

 鍛え抜かれた身体に空手の技量が合わさったゲイルは搦め手などは使わないシンプルな実力者。それ故に、この場面を越える事は容易ではない。

 『Mk-VI』が間合いに入った瞬間に、セイヤッ! と鋼鉄を凹ませる正拳が放たれた。

「――――」

 『Mk-VI』はそれを潜る様にかわすと同時に懐へ入る。

「この距離は俺の距離!」

 残ったゲイルの拳が『Mk-VI』の顔面に鉤突きとなって襲いかかる。

 『Mk-VI』は手刀をゲイルの首筋に叩き込みつつ身を引いて鉤突きの間合いから脱した。
 何だその貧弱な一撃――

「――『脈打ち』」

 次の瞬間、ゲイルはブラックアウトすると、そのまま前のめりに、ずぅぅん! と倒れた。サングラスにピシッとヒビが入る。

“首は人間の急所の一つだ。脳に近い血管の束を適切な角度と力で停止させると、血流が止まり意識を失う。『脈打ち』は鍛えているヤツほど狙いやすい”

「――――ッハァ!!」

 ケンゴはゲイルが意識を失った事を認識し、深い集中から戻ってきた。

『ひやひやしたぞ!』
「オレも猛獣の目の前を歩いてる気分だったよ……」

 ゲイルが堅実に待ち構えるタイプだったので、『脈打ち』が通った。この一撃で決まらなければやられていたのはケンゴの方だっただろう。
 いそいそとゲイルを縛り上げる。

『ようやくゴールじゃな! わしは言語損傷を修正する! 流雲昌子の説得は任せるぞ!』
「今日で寿命が三年は縮まった気がする」

 ケンゴはショウコを不安にさせないように一度呼吸を整えると部屋の扉に手を掛けた。
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