懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話

六剣

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第493話 相当に歪んじまった様じゃな!

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 オレとアヤさんは和服が渇いたタイミングで滝壺から去る事にした。
 程よく空腹感も得られたのでそろそろ昼飯にありつきたい気持ちもあっての帰路である。

「『長老』様。皆様、ありがとうございました」
「また来るから」

 アヤさんの一礼と、軽く手を上げたオレに『長老』は、ぼっふ、と鼻を鳴らす。
 小動物や小鳥達は最後までアヤさんと戯れていたものの、この場所から離れるオレらには着いては来ず、見送るに留まった。

 皆、ここだけが特別であると言うことを知っているからこそ、この別れは仕方がないと受け入れている。次は果物でも持ってきてあげよう。

「アヤさん。帰りはちょっと滑るから気をつけてね」
「ケンゴお兄様。一つよろしいでしょうか?」
「なに?」
「“アヤさん”と言う呼び方は少々おかしいと思われます」
「え? あ、そうだね……」

 確かに妹を“さん”付けで呼ぶのはおかしいな。これからは――

「帰ろうか、アヤ」
「はい!」

 嬉しそうに返事をするとオレも笑顔になっちゃうなぁ。可愛いんだよ、これがねぇ。

 アヤに手を貸しながら森の斜面を下っていると、ウゥゥゥゥ!! と里全体にサイレンが鳴り響く。これは――

「! また何か驚異が!」
「いや……たぶん、違うよ」

 恐らく、全部終わった事を知らせるモノだろう。鳴らしたのは恐らく、ジジィだ。





『総理、『神島』様からお電話が入っています』
「ああ、回してくれ」

 執務室に居た王城は内線を通じて回ってきた連絡を取る。すると、返事をする前に開口一番、

『終わった。国は出動させるな』
「――そう。良かったよ。ケンゴのおかげだね」
『少しはな。昨日はすまなかった』
「君が無事で良かったよ。もう少しだけ『神島』の威光は日本に必要だからね」
『そうか……まだしばらく迷惑をかける』
「気にしないでくれ。何せ――」

 王城はジョージのと出会いを思い出す。

「君が居なかったら僕はここには居なかったし、アイを抱き抱える事は出来なかった」
『人殺しに恩を感じるな』
「君は誰よりも優しい人間だからね。不器用だけど」
『……まったく、どいつもコイツも……ふざけた事を言いやがる』
「ハハ。長期の休暇を取ったらそっちの山に川釣りにでも行くよ」
『その時は事前に連絡を寄越せ』

 その言葉を最後に通話が切れた。
 律儀なモノだ。報告だけなら他の誰かでも良かっただろうに。

「早く、彼の重荷は家族だけにしてあげたいものだ」





「肉って焼けば何でも旨いよな」
「あ、それ、全面的に同意です」

 お昼時。昨晩の熊吉を含む、計5頭の熊を仕留めた『神ノ木の里』では、豪華な熊肉BBQが開催されていた。
 公民館には今、里に居る者たちが全員集合し、談話しながら今回の事を話し合っている。
 その輪の中心に居るのはアヤだ。彼女の活躍も凄まじかったし、ミーハーなジジィ共が群がるのも解らんでもない。

「流石はアヤたんじゃ!」
「あの熊吉を前に刀一本で戦るとは!」
「ワシらのアイドルは最強じゃな!」
「今度の地酒のパッケージはアヤたんで飾るぞい!」

 などと、いつの間にかアイドル認定されている。解らんでも無いが、アヤたんって……
 対するアヤは、お上手ですね、とジジィ共の言い寄りに微笑んでいた。

「人気だなお前の嫁」

 七海課長は熊肉を食べながらオレを見る。

「あー、その事なんですが……もう彼女はオレの許嫁じゃないですよ」

 その言葉に会場のざわつきが止まった。え……? オレなんか変な事言った?

「な、なんだとぉ!?」
「どういう事じゃ! ケン坊!」
「なんでじゃ! アヤたんのどこに不満がある!?」
「貴様ぁ! さては里の外に女をはべらせておるなぁ!」
「まぁ、間違っては居ねぇよな? 鳳」

 七海課長がニヤニヤしながら言う。

「いやいや! 間違ってますよ! 女なんて侍らせるワケ無いじゃないですか!」

 確かに……色んな女性のおっぱい触ったり、混浴したりはしましたよ? けど全部合法! 合法だから!

「そうです、皆さん。お兄様はその様な不誠実な方ではございません」

 と、アヤさんの言葉にまたも、ピタリ、とざわつきが止まった。

「お、お兄様……じゃと?」
「ケン坊! 貴様っ! アヤたんに何言わせてるんじゃ!」
「お兄様プレイとか、レベル高過ぎじゃろ!」
「里を出て、性癖は相当に歪んじまった様じゃな!」
「あぁもう! うるせぇなぁ! 黙って肉でも食ってろよ!」

 ホント、ちょっと若くて可愛いい女の子を見かけると、ちやほやしやがって。
 年末にリンカとセナさんを連れてきた時にはどうなる事やら……

 するとじっ様が間に入り、お前らアヤを困らせるな、と場を諌める。それにもモノも押そうとしたジジィ共は、各々の奥方の眼光にようやく黙り込んだ。やれやれ……

「七海課長……勘弁してくださいよ」
「別に嘘は言ってねぇだろ」
「それは……そうなんですけど……解釈の違いと言うものもあるかと……」
「お前、リンカの事はどうすんだ?」

 オレとアヤの関係が落ち着いたモノとなった様子に七海課長はリンカの事を引き合いに出す。

「こっちから連絡してるんですけど……出てくれないんですよ」
「こっちに行くって事は話してんのか?」
「アヤが迎えに来てくれた時に簡単に話しました。急ぎだったんで、一方的に言った形ですけど」
「直接会ったのか? アヤも一緒に?」
「? そうですよ?」
「…………鳳」
「はい」
「あえて言わせて貰うけどよ、リンカはお前の事、好きだぞ。LIKEじゃなくてLOVEだ」
「え? そ、それは……正式に告白されましたけど……」

 オレの返答に、ふぅ、と七海課長は一度息を吐く。

「まぁ頑張れよ。多分、色々と拗れてんぞ」
「……はい」

 リンカが電話に出てくれないからどうしようも無いんだけど……帰ってからちゃんと説明しよう。

「俺は飯食ったら帰る事にするよ」

 七海課長はそう言って、熊肉を口に運んだ。
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