猫被りの恋。

圭理 -keiri-

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猫被りの出逢い 《高校1年生》

第5話 三日後の結論

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〈SIDE: 蒼夜〉



相手を知るのに必要なのは最初の三日間だ、と思う。

そう。俺は三日で相手を見る。
三日間一緒に行動すれば大体は見えてくるから。
それからどう付き合っていくかを決める。それが俺のクセ。

だから今回も実行。





















氷神ひかみ” “スイ”

そう呼び合うようになってから、スイは休み時間のたびに話しかけてきた。
特に決まった話題があるわけではない。
それに、俺はどちらかといえば聞き役だから、もっぱら話しているのはスイなのだが。






「ねえ、氷神ひかみって好きなアーティストいる?」

「別に。基本的に曲で選ぶから…」








スイが休み時間に話に来るようになっても、俺の行動は特に変わらない。
本を読みながら、話し掛けてくるスイの言葉に応える。
俺の答えを聞くと「あ、同じだ」って笑うスイ。


何だろう。凄く変な気分。
イヤじゃないけど生ぬるい感覚、というか。


こんな対応されたら怒るか距離を取るかする人がほとんどなのに。
スイは全く気にした風もなく、休み時間のたびにやってきては、あれこれ聞いて戻っていく。






「あっ、そーいえばさ。修学旅行どこ行った?」





………なんだこの切り替えの早さは。

俺は本を読んだまま、視線を上げるでもなくただ返事をするだけ。
しかも、自分でもわかるくらい素っ気ないと思う。
それこそその他大勢の前では何十匹も被ってる猫が数匹程度になるくらいは。
とはいえ、彼がどう言う人間なのか見極めたい俺は、そのままの態度を貫く。





「大阪と京都」

「京都、いいよなぁ~。みんな思うんだろうけど…オレ、京都好き」

「…俺も好きだな。落ち着くし」








本当にどうでもいいような会話。
普段の俺なら、いや、他のやつ相手なら、こんな話題つまらなくてどうしようもないのに。
スイと話しているだけで何となく笑いたくなる。
これが『楽しい』ってコトなのかな。











三日なんてあっという間だった。
理由もなく笑いたくなると感じることがたくさんあって…俺は少し戸惑った。
今まで一度も感じたことのない思い。




(スイと一緒にいれば、こういう日々が続くのかな…)




この不思議な感覚がなんなのか知りたくなった。
俺の目に映ったスイは、初めの印象通りだった。
とても面白くて、そして、俺と同じようなニオイのするひと。
本心をその外面で覆い隠して、見えないようにしている。




もう少し近づいてみようかな…。
まずは『友達』から。




俺と向き合って話してるスイの楽しげな瞳を見て心の中で決めた。
これが俺達の一年前の出逢い。




【高校一年生編 終了】


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