雨の日に名を呼んで

ナガミ

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1話「雨の前触れ」

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雨の中、
教室に粘り着くような音が規則的に鳴り響く。

2人の男子の息遣いと共に。


「…っ、はっ…うっ…….」
組み敷かれた男子生徒は腕で目を覆っている。
声を抑えようとしているのか、
うまく呼吸ができないのか、胸が上下する度にかすれた声が漏れる。

「ふぅ………ん……ふ、……….」
一方の声は低く落ち着いてる。
乱れる気配もなく、ゆっくりと息を吐く。

「せ、先輩…鳴海、先輩…もう…やめっ…おね、がい….」

鳴海と呼ばれる男。顔、首を覆う長い金髪。
その隙間から、人を寄せ付けさせない鋭い目つきが時折覗かせていた。
細身ではあるがその腕は筋肉質で、
組み敷かれた華奢な男子生徒では抵抗もできない。

凛也「まだ…もう少し、。南雲くん・・・だっけ?」

千夏「そ…うっ…そんな…」

懇願は届かない。
短い黒髪は全てかき上がり、
いつも隠れている額も露わになっている。


ほんの数時間前___


授業も終わり帰る準備を済ませ、教室を出る。
廊下でクラスメイトから呼び止められる。

「お、南雲。お前、ノートはもう提出したか?」

千夏「え?、、、あ!」

「・・・今日までだぞ。期限」

千夏「提出だけ忘れてた!すぐ出してくるわ!」

「急げよ。あと危ないから廊下は走らねぇようにな」

千夏「おう、ありがとう!」

そのまま走る千夏。
階段を一気に駆け降りる。

角を曲がると同時に大きな影が眼前に広がる。
やばい。
そう思った時には遅い。
ドン、と鈍い音がし千夏は尻餅をつく。

「おい」

千夏「え?」

その声に顔を向ける。

千夏「げっ!」

でかい。身長は170後半だろうか。
金髪セミロング。鋭い目つき。
この男子校で1番有名な生徒。

千夏「鳴海・・・先輩・・・?」

遠目から見かけたり、噂を聞いたりはしていた。
なんで金髪が野放しにされているのか疑問に思った事もあった。
ただ、関わることはないとも思っていた。

千夏は恐怖からか、それ以上声をあげる事も出来ずにいた。

ほんの5秒ほどの沈黙。
破ったのは凛也からだった。

凛也「・・・大丈夫?」

千夏「え?・・・あ、え」

素っ頓狂な声を出してしまう。

凛也「走ると危ないよ。こんなふうにぶつかるから」

凛也は話し始めると同時に手を差し伸べる。
空気が和らいだと感じたのか、
千夏は無意識に止めていた呼吸をし始める。

千夏「あの、すいません!急いでて!職員室に向かってて!」
  「前、ちゃんと見てなくて!」

凛也「そう。それよりこの手、掴んでくれないと恥ずかしいんだけど」

軽く微笑む凛也。
その表情に千夏は見惚れながら手を掴む。
凛也は軽々しく引き上げる。

凛也「よっ」

千夏「おわっ!」

思っていた以上の力に、今度はそのまま前に倒れ込んでしまう。
結果、凛也に抱き付く形になってしまった。

凛也「軽いね、君」

千夏「すいません何度も!」

凛也「いいよ。急いでたんでしょ?職員室に」

ゆっくりと引き離され、そのまま階段を降りていく凛也。

千夏「なんか、思ってたのと・・・違う人だったな」

握った手を見返し、あの微笑んだ表情を思い出していた。
すぐにハッとし、我に帰る。

千夏(なに男の顔じっくり思い返してんだ俺は!しかも手の感触まで!)

頭を左右に振り記憶を払う。

それでも、

千夏(・・・綺麗な顔してたけどさ)

決して離れなかった。
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