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みつばちの国の騎士
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みつばちの国の女王様には一匹の騎士様がいました。彼は国一番の剣使いで女王様を護る為常に彼女の側にいました。
そんなある日、ハチミツ泥棒が現れました。泥棒はこっそり倉庫に入り込むとバレないように少しずつハチミツを盗んでいきました。
そのせいか、気がついたのは何日か経った後でした。ハチミツはみつばち達にとって大事な食糧です。犯人がこのまま捕まらずにいるとごはんを食べられない子が出てきてしまうかもしれません。倉庫番は焦りました。何とかしなければと。
そして呼ばれたのが女王様の騎士でした。
騎士様は倉庫の中に隠れて泥棒を待つことにしました。
ですが、待てども待てども泥棒は現れませんでした。
一時間ほど経った頃でしょうか、ゴトゴトッと物音がしました。騎士様は音のした場所を探ります。
置いてあった箱がグラグラと揺れていました。騎士様は遠くから注意深く見守っていると、地面からひょこっと毛むくじゃらな生き物が顔を出しました。なんと犯人はモグラだったのです。
騎士様はこちらに気づかず壺のフタを開ける泥棒にゆっくり近づくと手に握るレイピアを泥棒へと向けました。
「うごくな」
その声に驚いた泥棒はハチミツのフタを盾のように持ち、振り返りました。
「まってくだせえ」
逃げるそぶりが無い事がわかると騎士様はレイピアを下ろしました。
「おらあ、ある人に頼まれてここのハチミツを運んでいるんでさあ」
「だれに」
騎士様は声を低くしたまま短く問いただします。
「この国の女王さまだ」
騎士様はとても驚きました。
モグラはフタを元の場所に戻すと、その場にどかっと座りました。
「この国がなんと言われているか知っとりますかい?」
騎士様は首を横に振ります。
「宝をひとりじめしているはしたない国」
騎士様は、月明かりできらきらと輝くハチミツをみつめました。
「女王様はずっと他の国におどされていたんだ。ハチミツをよこさなければこの国に攻め入ると」
騎士様はとてもショックを受けました。女王様がひとり苦しんでいたこと、そしてそのことに気づけなかった自分に。
「最初は自分のおまんまを渡してヤツらを止めていた。女王様だけが食べられるローヤルゼリーはハチミツよりも高価だったからな。だがそれだけじゃ足りなくなったあいつらはあんた達の食糧も要求しだしたんだ」
女王様は誰にも相談できずにいました。
ですが、それは仕方のないことだったのです。ここは女王様とその子ども達だけで治める国。母親でもある女王様は自分の子ども達を危険な目にあわせるなどどうしてもできなかったのです。
騎士様は走りました。女王様に一秒でも早く会う為に。
上を見上げると女王様はお城のバルコニーにいました。
バルコニーにたどり着くと一人ぽつんと星を見ていました。
「黙っていてごめんなさい」
女王様はすべてわかっているのか、顔をふせてこちらを見ようとしませんでした。そんな女王様に騎士様は膝をつきます。
「わかっています。あなたの気持ちは痛い程わかるのです」
女王様は騎士様の言葉に胸を詰まらせました。
「なのでもう良いのです。一人で抱え込まないでください。わたし達は家族なのです。女王陛下とわたし達兄弟でこの国を支えていきましょう」
「ですが、もうこの国はわたくし達だけで生きていくには……」
「それならおらにおまかせくだせぇ」
声のする方を見ると、そこには先程のモグラがいました。
生きるということは、共存するということでした。力だけで解決できることはあまり無く、小さいみつばちの国は他の生き物達と助け合う道を探りました。
今のみつばちの国はハチミツが不足していました。ハチミツを作る為の花がほとんど枯れてしまっていたのです。
女王様はモグラの手を借り、ハチミツを分ける代わりに遠くまで花を探してもらうよう他の生き物達に頼みました。
そして数週間後、無事花を見つける事ができました。みつばち達は大いに喜びました。そしてその花を見つけたというのがなんと、あの時乱暴にハチミツを奪おうとした国だったのです。これをきっかけに争いはなくなり、二つの国の仲を取り戻す事に成功しました。
騎士様はバルコニーから見える町を見下ろしました。色々な生き物達がみつばちと楽しそうに笑っています。
「結局わたしは剣だけで、国の為に何かをすることができなかった」
暗い表情の騎士様にモグラが言いました。
「そんなこたねえさ、あんたの言葉で女王様は救われたんだ。十分でさあ」
モグラの言葉に騎士様は顔を上げるると小さく「ありがとう」と答えました。
【完】
そんなある日、ハチミツ泥棒が現れました。泥棒はこっそり倉庫に入り込むとバレないように少しずつハチミツを盗んでいきました。
そのせいか、気がついたのは何日か経った後でした。ハチミツはみつばち達にとって大事な食糧です。犯人がこのまま捕まらずにいるとごはんを食べられない子が出てきてしまうかもしれません。倉庫番は焦りました。何とかしなければと。
そして呼ばれたのが女王様の騎士でした。
騎士様は倉庫の中に隠れて泥棒を待つことにしました。
ですが、待てども待てども泥棒は現れませんでした。
一時間ほど経った頃でしょうか、ゴトゴトッと物音がしました。騎士様は音のした場所を探ります。
置いてあった箱がグラグラと揺れていました。騎士様は遠くから注意深く見守っていると、地面からひょこっと毛むくじゃらな生き物が顔を出しました。なんと犯人はモグラだったのです。
騎士様はこちらに気づかず壺のフタを開ける泥棒にゆっくり近づくと手に握るレイピアを泥棒へと向けました。
「うごくな」
その声に驚いた泥棒はハチミツのフタを盾のように持ち、振り返りました。
「まってくだせえ」
逃げるそぶりが無い事がわかると騎士様はレイピアを下ろしました。
「おらあ、ある人に頼まれてここのハチミツを運んでいるんでさあ」
「だれに」
騎士様は声を低くしたまま短く問いただします。
「この国の女王さまだ」
騎士様はとても驚きました。
モグラはフタを元の場所に戻すと、その場にどかっと座りました。
「この国がなんと言われているか知っとりますかい?」
騎士様は首を横に振ります。
「宝をひとりじめしているはしたない国」
騎士様は、月明かりできらきらと輝くハチミツをみつめました。
「女王様はずっと他の国におどされていたんだ。ハチミツをよこさなければこの国に攻め入ると」
騎士様はとてもショックを受けました。女王様がひとり苦しんでいたこと、そしてそのことに気づけなかった自分に。
「最初は自分のおまんまを渡してヤツらを止めていた。女王様だけが食べられるローヤルゼリーはハチミツよりも高価だったからな。だがそれだけじゃ足りなくなったあいつらはあんた達の食糧も要求しだしたんだ」
女王様は誰にも相談できずにいました。
ですが、それは仕方のないことだったのです。ここは女王様とその子ども達だけで治める国。母親でもある女王様は自分の子ども達を危険な目にあわせるなどどうしてもできなかったのです。
騎士様は走りました。女王様に一秒でも早く会う為に。
上を見上げると女王様はお城のバルコニーにいました。
バルコニーにたどり着くと一人ぽつんと星を見ていました。
「黙っていてごめんなさい」
女王様はすべてわかっているのか、顔をふせてこちらを見ようとしませんでした。そんな女王様に騎士様は膝をつきます。
「わかっています。あなたの気持ちは痛い程わかるのです」
女王様は騎士様の言葉に胸を詰まらせました。
「なのでもう良いのです。一人で抱え込まないでください。わたし達は家族なのです。女王陛下とわたし達兄弟でこの国を支えていきましょう」
「ですが、もうこの国はわたくし達だけで生きていくには……」
「それならおらにおまかせくだせぇ」
声のする方を見ると、そこには先程のモグラがいました。
生きるということは、共存するということでした。力だけで解決できることはあまり無く、小さいみつばちの国は他の生き物達と助け合う道を探りました。
今のみつばちの国はハチミツが不足していました。ハチミツを作る為の花がほとんど枯れてしまっていたのです。
女王様はモグラの手を借り、ハチミツを分ける代わりに遠くまで花を探してもらうよう他の生き物達に頼みました。
そして数週間後、無事花を見つける事ができました。みつばち達は大いに喜びました。そしてその花を見つけたというのがなんと、あの時乱暴にハチミツを奪おうとした国だったのです。これをきっかけに争いはなくなり、二つの国の仲を取り戻す事に成功しました。
騎士様はバルコニーから見える町を見下ろしました。色々な生き物達がみつばちと楽しそうに笑っています。
「結局わたしは剣だけで、国の為に何かをすることができなかった」
暗い表情の騎士様にモグラが言いました。
「そんなこたねえさ、あんたの言葉で女王様は救われたんだ。十分でさあ」
モグラの言葉に騎士様は顔を上げるると小さく「ありがとう」と答えました。
【完】
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