僕の番が怖すぎる。

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二章 あいつの存在が災厄

俺は黒も、勿論お前も守り、愛していくから。

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 そろそろこのボトルも空くな…

 さて、皆の中には出産経験者も幾人かはいるかと思う。
 子を持つものもいるだろう。

 陣痛から出産までの時間は長く感じ、生まれてからは慌ただしく過ぎる。

 そんな日々が百合にも訪れたが、周りと違い私は育児をいうほどすることが出来なかった。
 呪いもあったし、身分的にそういったことはしないというのもあった。

 だから、こちらでは息子を手ずから育てることに意外と苦戦した。 

 どの子も可愛いが、それでも初めての子はやはり特別なものがあった。


 ◇◇◇


 陣痛が始まり、昼だった時刻も夜が更け一夜かかり、男の子を出産した。

 黒髪のとても大きな赤ん坊だった。

 産声をあげたときは本当にホッとした。

 後産の始末などを終え、産湯に浸からせ浄められた僕の子を抱く。

 眼を閉じ、を開く。

 Ωの眼でた子のは…


 様々なものが凝縮し煮詰まった果てにあるような、すべてを内包する深い深い色。 
 それは始まりと終わりの【色】だった。


 それを見て僕は泣いた。

 どうしてこんな色なのか?

 こんな色を持つものは、きっと途轍もない苦しみや、悲しみを味わうことになるだろう。

 あいつみたいな、昏い顔も悲しい苦しい顔もこの子にして欲しくない。

 ボロボロと涙が溢れて止まらない。

 Ωに分化してからどうにも涙もろすぎて、本当にままならない。

 ずっと付き添ってくれていた姉が、泣き続ける僕をそっと抱きしめ話す。

百合ユリ、良く頑張ったね。
この子のが悲しかったんだね?
もう、そんなに泣いて…お母さんなんだからね?
この子に私の加護を与えるから安心しなさい。」

 姉はそう言って黒の額に印を刻み、最後に口付ける。

「【ギューフ(愛情)】の贈り物を甥っ子に。
この子が愛される度に幸せになりますように。」

 僕を宥めながらも姉は続ける。

「どんなに辛いことでも、この子を慈しみ愛する限りは大丈夫。
お前の手を離れても、この子を愛するものがいれば大丈夫だから。」

 本当に姉様は僕のお母様だ。
 僕を産んですぐに亡くなった、儚く脆すぎた僕らの母はどんな人かはわからない。
 でも、姉が僕にしてくれた様に、僕はこの子を慈しみ育てていきたい。


 ◆◆◆

 出産の終わった僕にお義母様が祝ぎにいらしてくれた。

「【名】を決めたのですか?」

 お義母様が問う。

クロにします。」

「旦那様によく似ています。
あなた達にあまり似ていなくて、特に朱点シュテンは残念がるかもしれませんが、私はとても嬉しいです。
良く頑張りましたね、百合。」

 お義母様はスメラギ様…お義父さまを深く愛していらっしゃる。
 だからより、嬉しいんだろう。

 その美しい銀髪や銀色の瞳は僕とそっくりの色合いだが、あいつと同じように、男とも女とも見れる美しいお顔と耳長エルフの様な体つきをされている。

 彼は沢山の子を産んだが、皇様や彼自身に似た子はいなかったと聞いた。
 良くないものを産まされ続けた彼らに 
 黒の存在が…疲弊した彼らを癒やしてくれると良いと思う。

 あいつのことで色々と思うところはあるけれど、共にこの子を慈しんで育てていきたい。

「私が成長しきり、亜神となってからまた子を儲ける予定です。
まだまだ沢山、朱点に家族を作りたいので…これからに期待します。」 

 そんなことを言ったが、どんな子だってきっと可愛いし、黒もすっっっっごく可愛い。

「あなたはこれでさらに亜神に近づきました。
そのうちにもっと色々と教え、私の【名】も伝えましょう。
あなたは朱点あの子の伴侶ですからね。」
 
 そうか、あいつに近づいたならそれは嬉しいことだな。
 もう寂しい想いもさせなくて済む。
 この子も加えた三人で仲良く暮らして、もっと家族も増やして皆で幸せになるんだから。


 ◆◆◆

 最後に朱天シュテンと二人にさせてもらった。

「名前はクロか…犬っころみたいだな。」

 お前なぁ!自分の子だろう!
 確かにスメラギ様によく似ているから、マザコン拗らして嫌っている相手に、よく似た黒の事が苦手なのかもしれない。

 黒は黒髪だし、まだ開いていない眼の色はきっと、皇様由来の金色だと思う。

朱天シュテン…お前の発言に僕は怒りを覚えている。
ちょっと殴らせてもらっても良いだろうか?」

「どうした?百合ユリ??」

 こいつ!なんでそんな不思議そうな顔するんだよ!!
 普通に駄目だろうが!
 滅茶苦茶痛かったし、物凄く疲れたんだからな!!

 これはあれだな、僕は子供を二人育てる感覚でいないといけない。

 おっきい子供、朱点(百歳と少し)。
 ちいさい子供、かわいい黒(数えで一歳)。

 うん、頑張るしかないな。

 僕の【実家】から乳母とか教育係を連れてきたし、なんとかなるよね?


 本当に、ここに来るまで色々と大変だった。
 色々と愚痴りたいけど、我慢も必要だし、嫁いだ以上は大人としてみられている。
 黒を産んだ今では僕は母親だ。
 これくらい頑張れないとこれからやっていけない。

 でも、お前もそんな事を言いながらも、黒のことをおっかなびっくりしつつ、抱いているし、嬉しいんだな…

「少し疲れたから寝かせてもらう。
なぁ…いつもみたいに抱きしめて、頭を撫でて欲しい。
それから添い寝して。」 

 本当に疲れたから、これくらいのわがままを言っても良いよね?

「乳母に黒を渡してくる。」
 

 黒を連れ出て行く朱天。
 すぐに戻ってきて二人だけになった。

「俺のお姫様、良く頑張った。
母上からもよく労えと言われた。
とても大変らしいから心配だった。 
そんなに苦しいなら次は俺が産んでも良いが?」

 本当に心配そうな顔をしてくれているからわかるけれど。

 だからお前のそれはだめだからな!
 その発想を持つなと何度言えばわかる!!
 僕はΩだぞ!!!

 お前もΩでもあるけど、今はα性の方が強いだろう?
 そういう考えは無理過ぎるとか言われてたぞ…

「お前さ…僕を抱くほうが好きなんだから無理をするなよ…」

 とにかく、この考えをなんとか無くさなければいけない。
 こいつは僕に無茶苦茶甘いから、本当にやりかねない。
 痛みとかそういう感覚がおかしいから、
 簡単に代わりに引き受けるとか言ってるんだろうな…
『構わん。』とか言って何でも受け入れそうだから怖い。

 そういう発言は周りが困惑するから、ほんとうにだめだからな!!

「百合、俺のお姫様…本当に感謝する。
俺は黒も、勿論お前も守り、愛していくから。」

 いつものように、にこにこと笑った。
 そして僕を抱きしめ頭を優しく撫でる。

 本当にこうやってもらうと落ち着く。
 こいつの大きな体もその【華】から薫る匂いも、もう僕だけのものということが本当に嬉しい。

 これが愛なんだろうか?
 恋も愛も知らず、いきなり色々とすっ飛ばして結ばれてしまったから、
 理解できていなかった。

 でも、こいつに抱かれて子を産み、こうやっている今。
 これを失うなんてことは絶対に嫌だ。

「うん。」


 ◇◇◇


《出産までの時間は本当に心配しかないから、シュテンの気持ちもわかる。》

 確かにね。
 そうなんだけれど、あいつはやろうと思えばできるから怖いんだ。

《気になっていたけれど、本当に両性ってそうなんだ?》

 何度も言ったが、夫はαであり、Ωでもある。
 そんな存在はあいつしかいなかった。 

 それから義母は男で私と同じΩ性のものだったが、義父は単為生殖をする一族の出身でね。
 クローンではないが、そうやって固体を増やしていたそうだ。
 だから義父も亜神の定義に入るらしい。

《オオゥ……》

 ちょっとあり得ないと思うよね。
 こちらではそれはマウスでしか、哺乳類は成功していない。

 あちらは本当にそのへんがファンタジーとかを超越していたよ。

 例えば鬼の乳児は、生後十日程で首もすわり、三ヶ月もすればハイハイもしだす。
 知能も高く、喋ったりするのも早いが、加齢は人と同じようにしていく。
 年齢固定の歳までは人と変わらず同じようなスピードで歳をとる。

 外敵というか『』がいたからそうなったのかもしれない。

 ボトルも空いたけれど、次はひとまず水でも飲んでから何かを食べたい。
 なにか肉気のものとかある?


 ◇◇◇


 黒を産んでから、一月程経った。

 医師茨木からも許可が出たので、そろそろ…

 あいつのでっかいちんちんで可愛がってもらえる様になりました!

 うん、我慢するのが物凄くきつかった。
 本当に辛かった。

 もう認めるよ、
 僕は『俺のエロいお姫様』だと。

 あいつもかなり辛かったらしいから、何なら囲っているところに行っても良い、とまで言ってやったけれど、
 これまでの行状はどこに行ったのか?というくらい、清くしていて、
 皆が、驚愕していた。

『お前のは気高く、近寄り難い程に潔癖だ。』

 そんな事を言われた。
 確かに僕は鬼族ではあり得ない貞操観念らしい。
 姉にそう育てられたからだろうか?
 僕の持つ【】がそうさせるのだろうか?

 
「百合、優しく、優しくする。」

 物凄く嬉しそうな顔で迫ってくる僕の夫、朱天。

【域】で暮らすことも楽になって来たこの頃は、こいつのこういった笑顔を見ることも多くて嬉しい。

 耐えきれない欲求や衝動に悩まされ、囲っている者たちを片っ端から抱き潰し壊したり、血を飲みすぎたりして殺してしまったり、
 ろくでもないものを手当たり次第に潰し、喰らっていた頃の様な危険さも成りを潜めてきた。

 自分たちを庇護している亜神が、危険な存在として見られていることに不満を覚えるが、
 未だに一族のものには伝えないつもりらしい。

 なぜそこまでこいつを抑圧するのか?
 本当に腹が立つ。
 けれど【至】らない身ではまだ教えてもらえない。

 姉は『亜神とは生贄のようなものでもある。』と話してくれた。
 彼女には同じように亜神の伴侶を持つもの同士の、不安なども相談している。
 それでもまだ納得できないから、急いで【昇神】を望んでいる。

 でも今の僕に出来るのはこいつに愛を返すことだけ。

「朱天…僕の大好きなソレで僕を沢山可愛がってよ…」

 我慢できない『エロいお姫様』は夫を押し倒して、ソレにしゃぶりついた。


 ───────────
 次は少し時間が進みます。
 黒も少しだけ大きくなります。
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