僕の番が怖すぎる。

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二章 あいつの存在が災厄

蒼と紫に梔子と白練

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 ご覧頂きありがとうございます。
 *綱と茨木の話の綱視点になります。
 *誤字脱字修正などを致しました。
 ───────────

 ◆◆◆


 ──それは幼い頃、いつものように共に祖父の道場で扱かれ、その後の片付けをしたあとのことだった。

 着替えるのも面倒なくらいに疲れてしまい、師範たちなどがいないのを確認した自分たちは、二人して綺麗にしたばかりの床に大の字になって寝そべっていた。
 物心ついたときから自分と2歳上の従兄はこんなふうに祖父たちのもとで鍛えられていた。
 その時は足の裏に出来たタコや水ぶくれが酷く痛み、それが辛かった。
 いつも母に潰してもらい手当てしてもらうか、同じように寝そべっている従兄がしてくれていた。
 
『ヤバい!おれのみぎあしのおやゆびのみずぶくれがマジにいたい!』
『僕が手当するよ。』

 従兄は針を指し水を抜き、消毒をしてから絆創膏を貼ってくれた。
 とても手際が良くて自分で出来るようになっても頼んでいた気がする。

『いつもありがとうな。』
『大事なヨメのためだからね。
あのクソジジイ!かわいいアオにこんな事をさせるからタコもできてる。
手の皮もかたくなっているし…
キレイ・・・な体でいなきゃだめだよ、アオ。』

 礼を言った自分の手を取り、そちらの手当もしてくれる。

『ヨメ?』
『そうだよ、お前は僕のものだからね、アオ。大好きだよ。』
『おれもみつくんがすき!』
『うれしいよ。ぜったい・・・・にお前をあきらめないから。』

 そう言って彼は自分にキスをした────


 ◆◆◆


 幼児の筈なのにその思考は怖気が走る。本当に怖ろしい会話だ。

 今でも時々思い出す。
 フラッッシュバックというやつか?

「どうしました?私の良人おっと。」

 隣には永らく恋人であった自分にとっての運命。十八年前にやっと妻になった美しい女がいる。
 彼女は医術の心得があるので、色々と心配になったようだ。
 脈などを測ろうとしたのでそれを制する。

「いや、少し夢見が悪かった。」 

 美しい弧を描く眉を歪め、赤みを少し帯びた金の瞳も曇る。

「また『光貴みつき』ですか?
恋人はいない清い身だと、私に随分な虚偽を言っていましたね、貴方は。」
「今の生ではな…」
「転生したものを伴侶にするなど…本当に面倒です。」

 呆れた口調でそんなことを話すが、その顔はいつものように微笑んでいる。

 彼女ほど懐が深く、母性というものに溢れたものをおれは知らない。
 自分と共に生きることで子を持つことも諦めさせてしまうような状態だったが、十七年ほど前に自分たちの間に生まれた子を慈しみ、とても可愛がっている。

 彼女は何百年、何千年共にいて、子が生まれた今も出会った頃と変わらず美しい。
 親友を物凄い面食いだと散々茶化してやったが、自分も大概だ。
 みつもとても綺麗な顔をした優しい兄の様な存在だった。

 まさか自分にそんな欲を抱き、強引にあんなことをされるとは思わなかった。

『なぁ…お前はαとしての欲求もある時、おれを抱いても良いんだからな。
Ωじゃねぇから、抱き心地は悪いかもしんねぇけど。』

 関係を持ってすぐに、こんな事を彼女に話したら驚かれた。
 自分はあの方などに『無理無理無理無理』と言っていたが、本当はどうでもいい。
 なし崩しに結ばれ強要された関係や愛が嫌なだけだ。
 そのことで親友に同情もしたし、あの方に腹も立てた。
 あの方とサシで話して行方不明の一月のことと、そのどうしょうもない欲求を聞いた。
 だから彼女が望むなら構わなかったし、腕を落とした詫びみたいな気持ちもあった。
 それ・・を知っているから、親友の気持ちも良くわかったりする。

 おれ快楽に弱かった。

 マンネリに悩んだアイツに色々と吹き込み教えたのは自分だ。
 そのことが彼女にバレて二人してかなり絞られたが。
 (流石にスカとかアブノーマルでSM的なやつはヤバ過ぎて、まだ教えてないから許してくれ。)

『私は貴方をメスとして見ません。オスとして在りたいとも思いません。母の様に在りたい。』

 そう伝えてきた彼女にまた惚れた。

 自分も本当はずっとオスとして愛したかったし、愛されたかった。
 未だに燻るこの気持ちは親愛や友情と思いたい。

 彼女に猛烈に惹かれるのは、自分の持つ【名】の役割からのものだったが、それが終わった今でも、日々彼女に惚れなおす。

 思えばこの関係のはじまりは欲求に耐えきれない彼女を慰めたことからだった。
 それまではあの方と床を共にしていた彼女は他のものを知らない。
 女やΩメスを抱くのも好まなかった。
 それに彼女はその身に秘めた力が強すぎあの方以外では、本能的に怯える相手であるおれくらいしか抱くのは無理だった。

 彼女と関係を持った翌日、その後も欲求解消に付き合うと約束した自分は、その後すぐに親友の眷属になった。

 既に自分の配下の源氏たちも、他の四天王にその配下も全てアイツの眷属となっていたから、家のことなどの心配もなかった。


◆◆◆


「童貞卒業?ってやつらしいけど、おめでとうツナ。」

 開口一番にこんな発言をする親友。
 あの方に影響されて発言や思考がピンク色になっている。

「エロ姫、お前なぁ…その顔でその発言はないからな!やめとけよ、ホント。」

 あまりにも酷いことになってはいけないので、時々嫌がる『エロ姫』と呼び注意している。

「なんで?事実だろう?」

 (……全然効いていないけどな。)

「とにかく、おれは本気だ。彼女を娶りたい。その為に後押しと身分が欲しい。」
「…待っていたんだよ。本当はお前を僕の一番最初の眷属にしたかったのに。」

 嬉しいことを言ってくれるがこればかりはおれのけじめみたいなものだった。
 強要された愛をおれは好まない。
 愛するものにもそうやって与えたりしない。
 その為遅くなったことは詫びる。

「【お手つき】は最初だったろう?お前の気持ちはわかっているから、おれがそれだと思っとけ。」

 軽くポンポンと頭を叩く。  

「うん…じゃあ、はじめるから。」

 そう言うとおれの首もとに噛みつき、血を飲むコイツ。
 次に自分の手首を噛み切り、血を口に含み…
 そのまま口づけしてきた。

「ぅん…」

 唇から舌を割り込ませ血を渡されるのでそれを「こくり」と飲み込む。
 
「よし、飲んだな?」

 妙に早口のコイツ。
 おれと同じように気まずい気持ちなんだろう。

「こればっかりは何とかなんないかね?お前も旦那サマ以外と口づけとか嫌だろう?」
「そうだけどそういう呪いだから仕方ないだろう!」

 早口でまくし立てるが、それでもちょっと思うところはお互いにあるみたいだ。
 しょっぱいものを食べたかのような微妙な表情をしているし、手をバタバタと振ってご誤魔化している。

「…他のゲンジや四天王の奴らではなんともなかったのに、なんで綱とだけこんな気分になるんだろ?
うううう…もやもやする…。
でも、まだ途中だ!よし、綱やるぞ!」
 
 気を取り直したコイツはその呪い祝福を与えるため、厳かにおれの額に手を翳して言祝ぐ。


 ──百合ユリの名のもとに【青】の名を与える。──

 中指の先をおれの額に付けた

 ──『アオ』──


 おれはと同じ名を与えられた。

「綱、お前の【名】は『アオ』だよ。
これから僕と二人の時や茨木くらいなら言っても良い。
あと…うちの旦那も。」

あの方恋しさに最近はクロと添い寝しているコイツは微妙な顔をしている。

「本当は『アオ』にしたいくらいにお前は凄いを持っているんだ。
でも、不思議なことになんだかこれしか浮かばなかったんだよね。
お前は【青】の魂を持ってるから、この名は【緑】で…ありえないんだけれど。」

 腕を組み顎に手を当て、姉であるフレイヤ様と同じような市草で考え込んでいる。

「お姉サマにも言われただろうけど、
おれみたいな前の生の知識や力が強く残っているやつはそうなるらしい。
今、頭に入ってきたこれはおれの昔の名だ。」
「他の四天王のみんなもそういえばそうだった。」

 ポンと手の平を打ち、納得したのか「えへへ」と笑う。

 コイツは案外うっかりしていてたまにとんでもないボケをする。
 賢いのに抜けてて、道場に通ってきてたチビたちみたいに思え放っておけず、ついつい面倒を見てしまう。

「【角なしβ】でもお前は強いよ蒼。多分、茨木イバラキよりもね。
お前は僕の自慢の友人で、一番の従者だから誇れよ!」
「期待に答えれるように努めて参る所存です。我が君。」

 臣下の礼を取り、恭しく頭を下げる。

 あの方から自分はコイツを守るようにとも強く言われている。
 自らの配下の四童子やおれ以外の四天王などでは『オスではいかん』と駄目らしい。
 彼女は『あれは番がおらず、もしものことがあってはならん』だそうだ。

 目の前で可愛らしくはにかむコイツは、自分にはかわいい弟分にしか見えないが、他のオスには堪らないごちそうに映るらしく、あの方はそれを大変心配されている。
 もしもの為におれを眷属にすることも考えたらしいから、ブレなさ過ぎて凄いとしか言えない。
 本当にあの方はコイツに過保護で溺愛している。

「アルフヘイムにいると僕は色々とわからないし、引き続きお前はあいつのことを監視しておいて。」

 見張れと言うがその実は、落ちた首などの予後や欲求解消などについてを心配して、つぶさに報告するようにせびるコイツ。
 万が一のときはすぐに帰るとまで言っていた。
 本当に素直じゃない。

 自分とみつとは違いお互いを想い、愛し合っている。
 これから自分は彼女とこの様な関係を築けるのだろうか?

 正直、恋や愛なんてもうよく分からない。
 ヤツとの関係は爛れ過ぎたご主人様とその性奴隷みたいなもんだった。
 二人を見ていると色々と似たことをされているのに全然違うことに驚く。
 自分も素直にヤツに愛を返したらこうなったのか?
 いや、従兄弟であるうえにあちらではマイノリティ過ぎるし、警察官である身内の目は恐ろしく怖い。
 きっと端から無理だった。
 彼女を想う今は、もう忘れるべきだ。
 切り替えた気持ちを声に乗せて

「畏まりました。」

 礼を崩さずそのままの姿勢で返答をする。

「それから蒼、お前に僕の【目】と【耳】の役目を与える。
僕のる力と聴こえる力…それを授けるから!」

 少し不機嫌そうな声に、笑いがこみ上げてくる。

「謹んでお受けいたします……エロ姫!」

 頭を上げ、笑いかけてやる。

 友人でも主従のそれはしっかりと線引をしなければいけない。
 それはおれが武士であった時の心構えだ。
 光もかなりおれに気安くしてきたがそこは守った。
 だが、コイツはそれが嫌みたいでだんだん声が沈んできていた。
 コイツが望まないならもうやめることにした。

「オイ!最後のそれはやめろよな!!」

 思わず立ち上がり、おれに怒る親友。
 
「ハハッ、悪ぃ。でもな、おれらでこんなんずっと続けるのもお前は嫌だろ?
締めるときは締めるから、こんな感じでよろしく頼むわ!エロ姫。」

 ここからはいつものおれらの遣り取りだ。

 拳を作り差し出す。

「もう!それはやめろってば。でも、そうしてくれると嬉しいよ、蒼!」

 それに拳をぶつけて返してくる親友。

 この時から『銀の鬼姫』の腹心の従者『蒼』は生まれ、鬼として歩むことになった。


 ◆◆◆


 リビングにて茶を飲む自分と彼女。
 あの方のところへの食事の手配なども最近は子供に任せている。
 
「貴方といい、あの子といい、転生するものは本当に厄介です。
今日も若から頭の痛いとしか言えない問題を持ち込まれましたしね。」
「あぁ、旦那サマのあれか…」

 ちょっと前までは子を持つことなどあり得なかった自分たちがやっと得た息子。
 魂をる目をあいつからもらってはいるが、自分や彼女には出来ないので、あの方に名付けをお願いした。

「あの子の【名】は若がつけられましたし、可愛がってくれているのはありがたいのですけれど…」
「お前からすげぇセンスのない名前をつけるって聞いていたから、
クロに頼むことも考えたが…あの子も大概だしなぁ。」
アケなどの強い魂を持つものは問題ありませんでしたから、大丈夫だと思いました。
坊ちゃま方も姫様方も若と坊っちゃんの名付けで問題ありませんでしたし。」

 もう遺伝としか思えない酷いネーミングセンスを黒は持っている。
 あいつに似れば良いのにあの子は悪いところばかりあの方似だ。 

「まだアイツが帰ってくるまで時間はあるな梔子クチナシ
最近はアイツも使えるようになってきたから安心しているが、先日のこともあるからなぁ…」

 鬼の成人年齢はとうに過ぎたが今の世では、自分の前世と同じ二十歳が成人だ。
 小学生時代に問題を起こし過ぎた為か近所の学校は拒否されてしまい、中高一貫の進学校である男子校に突っ込んだが、現在高校生の我が子はとても恐ろしい事件を起こした後、学校を支配している。

 (鬼の子が多い学校に入れるんじゃなかった…)

 度々呼び出される自分と彼女に、先生方や保護者の方々は畏縮してくれるのが悲しくなる。
 それでもやっと授かった子が可愛く、自分も彼女も甘くしがちだ。
 あんな子でもまだまだ子供扱いしてしまいたくなる。

アオ、私の良人。私は今幸せですよ。問題はありますがあの子も可愛いですし…」

 柔らかい笑みを浮かべた愛しい女が嬉しいことを言ってくれる。

「そうか梔子、おれの運命の女。愛してる。」

 彼女を抱き寄せ、その唇にそっとキスを落とそうとすると…


 ─────ガチャ、バターン!


「あー、ウザい!旦那様も無茶言うからほんっとに最悪だよッ!」

 乱暴にドアを開けてリビングに白金の髪を持つ少年が入ってきた。
 制服ではないのであの方のところの帰りだろう。

 少年はおれたちを一瞥し、眉を顰め非常に可愛らしくないことを言う。

「はぁ?万年熱々のカップルがこんな時間からなに盛ってんの?
リビングでせずに自分たちのベッドルームへ行けよ。
これが自分の親だとかマジにありえない。」

 夫婦の甘い時間を邪魔する自分たちの可愛い(と切に思いたい)息子が来た。
 頭の痛いこのクソガキはおれと彼女の一人息子だ。今年十七になる。

 白い二本の角を持ち白金の髪に金色の瞳。顔立ちは自分と彼女の良いとこ取りで、我が子ながら恐ろしいほどの美形だ。
 残念な事に女のαの彼女とβの自分が親の為か、顔立ちも歳より幼く見え、体格は小柄で本人もそれをコンプレックスにしている。
『αなのに』などと言われるとそいつを半殺しのボコボコにしばき倒している。
 しかも恋敵が壮年のそれは立派な体格のαオスだったせいか、以前にも増して気にしている。
 そのうえ内に秘めた狂気ともいえる残虐性が彼を抜き身の刃物の様に見せる。 

 (実際に非常に良く切れる【鬼キラー得物】を持っているしな…)

「これ白練シラネリ。親に対してその態度はなんですか!」

 最近反抗期を拗らしている息子に手こずっている彼女が叱る。 
 自分はコイツの抱えているそれ・・に驚く。

「てか、お前の抱えてるそいつは件の召喚された人族の一般人βじゃねーか!
何してんだこのクソガキ!!
可哀そうに怯えて…もとの場所、旦那サマのとこに返してこい!!」

 息子が肩に担いだ青年はまず間違いなく日本人の大学生で、就活中と思しきスーツ姿が場違い過ぎて哀愁を誘う。
 180cmくらいの身長、清潔に整えられた短めの黒髪に黒目。
 何か武術でもしているのか、それなりに鍛えられた様に見受けられる肉体に、顔立ちも悪くなく、どちらかと言うとイケメンの部類だろう。
 だが、それを台無しにする気弱そうに見せる下がり眉が特徴的だ。

「なにって?コイツのこと?旦那様から面倒見るように言われた。
黒様の【牧場後宮】に納められそうだったから、未処置の犬野郎だけど?
ネコ目的の性奴隷ではないけど、あの方から可愛がれ・・・・って言われた僕のペット・・・。」

 名付け親である為か、元がヤツ・・で危険視しているのか、あの方は息子を可愛がってくださる。

「若が?!」「旦那サマもコイツになに与えてんだよ!」

 親であるおれたちは現在コイツのとんでもない素行に悩んでいる。
 コイツは『運命』をかっ攫われたことで反抗期をさらに拗らせた。

「こんな犬野郎なんてとっとと喰ったりして始末した方が楽なのに、
なんで飼えとか言うのかな、あの方は。」
「白練!」「ハァ?!お前は何言ってんの!かわいそうなこと言うなよ…」

「ひッ!!」

 とんでもない発言をして自分たち親をドン引きさせる我が子。
 人族の青年は息子の発言に真っ青になり、ぷるぷると震えている。

 彼女譲りのαの強い力とおれ譲りの【鬼キラー】もあって、『刑部おさかべの悪魔』に『白い魔王』とまで呼ばれている。

 (今の時代でその歳で二つ名が多数あるとかもうね…
 父さんは頭が痛いし、母さんも嘆いているよ…)

 黒の後宮の管理やゲンジの若い世代を任せているが…
 こんな感じで凶暴過ぎてみんなが参っている。
 一部のドMには大人気なのも頭が痛いが…
 外では彼女の教育で口調も丁寧だが、酷薄な笑みと冷酷な性格と相まってより恐ろしい。
 正に鬼畜と呼べる様な行動ばかりしている。
 親友とあの方の末姫様の従者の予定だったが、あまりにも強烈な性格と素行に黒が『あれはいかんな…』と早々に匙を投げた。

 (正直、最近はおれたちもそうしたい……)

「あの…お、お俺は一応、ちゃん、とした…名前があるんですけど、…ご、ご主人様。」
「うっさいな、黙れよこの犬野郎。静かにしないとまたお前を喰うぞ。勇者ナシ!」
「……スミマセ、んん、んーーーーッ!あああああッ!!!!!」

 そう言って抱えている少し気の弱そうな青年に暴言を吐いたあと、首に噛み付いて飲み始めた。

 (かわいそうにイッたな。ナシ(仮名)くんの着替え用意してやんないとな…)

「あぁ…どうしてこの子はこうなんでしょう?私達は教育を違えましたか?」
「オイ!こら、白練!ペットなら可愛がってやれ!そんなバイオレンスな愛情は駄目だ!!」

 額に手をあてて嘆く彼女と呆れ叱るおれ。

「あー、面倒くさい!匂いをつけとけって旦那様に言われたけど、あの方に【お手つき】してもらえば良かった。
僕がするなら抱いてやればいいのか?4、5発ぶち込んでやったらいけるか?」
「あうえェェーーーッ!!!!!いやいや、お、俺は男だし、君…ご主人様も男でしょう?!」
「は?何言ってんだよ、僕に口応えするなよ犬野郎。
ナシって言うぞ!それともpearか?」

 しかし息子はそんな事を気にせず、気ままにペットのナシ(仮)くんを蹂躙しようとする。
 なんとなく見覚えのある顔立ちだと思い、あいつから与えられた眼でた彼持つとその名に驚く。

 (ハァ?!あの方はまたなんてことをしてくれちゃってんですか!!
 コイツにあの子を与えるとかまた滅茶苦茶なことをして!!)

「こりゃあまたヤバいことしてんな旦那サマは。百合にボコられるぞ…」
「あぁ…若…お妃様が怒られると大変ですのに。」

 (絶対に旦那サマはアイツに【血吸ちすい】を食らうだろうな…)

「あ!白練、やめなさい!こんなところで同衾しようとしてはいけません!!」
「お前、本当にいい加減にしろよな!なんでそう言うことを聞かないんだ?!」

 ナシ(仮)くんの服を無理矢理脱がそうとする息子を彼女が制止して、自分は彼を救出しようと二人に割って入る。

「父上、母上、流石にそれはここではしないけど?
ひん剥いて首輪でも付けて、ちょっとコイツを躾けるだけだから。
セックスするのは僕の部屋のベッドでするから安心しなよ。」

「ヒィーー!!!」

「「白練、無理矢理はいけません!!!」」

 全然安心できないコイツを二人で叱りつけた。

 どうやら息子と彼女と自分はあの方を含め、みんなまとめて親友にボコボコにされるだろう。

 本当に口も性格もとても悪いコイツは【白】の名を持つ。
 無垢、純真などと言われる【白】がコレと言われると驚くが、コイツは元々尖りすぎた【青】だった・・・
 長い年月をかけて浄化され、漂白されたヤツ・・

 俺も昔はその『蒼』の名の通り【緑】に近かったらしい。
 こちらに来て得た力とその在り方が【青】に変えた。

 友人と出会ったのは偶然なのか?
 あの時絡まれていた小さな子が守るべき対象に思えた。
 それは今も変わらない。
 自分の大切な友人で弟分の彼との出会いから、先に見えていた未来で暗かったこの第二の生も輝くものになった。

 光貴。
 光り、貴いはずのお前はどこで足を踏み外したんだろうな?
 今もまだお前は迷っている。

 あの方はそれを憂いていたからこれから何とかしてくれるだろうが、あの方のすることだから自分も彼女もそれに振り回されることだろう。
 
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