僕の番が怖すぎる。

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三章 遂に禍の神にまで昇華される

俺の子を孕ませる…お前が無茶をしないように。心安らかになるように。

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 ご覧頂きありがとうございます。
 ───────────

 
 強引に色々と勝手をされて第二子と第三子を孕まされたんだけど、本当は色々あって息子は望むけど次の子を儲けるのは控えていたんだ。

《なぜなのかしら?シュテンも義理のご両親も賛成しているのに?》
《私達と違ってリスLisは妊娠も出産も問題なかったのだろう?》

 まず百合リスの『神』としての存在が安定しないと子が危なくなる。
 次に百合の実家がまぁ…ちょっとやらかしていてね。
 エルカラートの駆け落ちの時も百合が嫁ぐ前後でも色々としてたんだけど、さらに酷いことになっていたんだ。

 数年我慢していたけれどある日突然とんでもない事件を起こされた。
 それがきっかけで子供が出来るととは思わなかったけど、あいつは本当に無茶をする。


 ◇◇◇


 落ち込んだ僕を大好きな番が慰めてくれていた。

「や、あ、…ん…ぁあ、…」

 いつもなら没頭しどろどろになるまで溶け合うことを望み、色違いの金と銀の瞳を見つめ、もっと欲しいと強請る筈の自分が見つめているのは、
 花瓶に生けられた庭白百合の花。

 それも普段生けている顕現させた【華】ではなく、父が先程訪問した際に実家から持ってきてくれたものだ。

「お姫様…心ここにあらずか?」 

 褥で情を交わし、睦み合っているこの瞬間は本当に幸せだが、とてもじゃないが今日は気分が乗らない。
 どうやらそれがこいつにはわかってしまったようだ。

「…ごめん。」
「構わん。お姫様を蕩かす技が足りぬ様ですまんな。」

 申し訳なさそうにしてくれているが…
 無いとは思うが…僕以外の、それもあのメス共…あいつらに手を出しても困る。
 誤解を招くのは嫌なのでそのことについては強く訂正をする。

「それに関しては特に不満はないから、変に努力とかすんなよ!絶対に駄目だからな!!」

 本当に不安なのでさらに念を押す。

「絶対にするなよ!」
「随分信用がないな俺は。」

 困ったような口調で返してくるこいつ。

「あの愚物に惹かれる訳が無い。」

 溜息を吐いた後、心底嫌そうな顔でそれを断じた。

 出会った当初であれば「お前の行状は酷い!」と一蹴したものだが、こいつは本当に清くしていて、僕に対して溢れんばかりの愛情を注ぎ、溺愛してくれている。
 逆にこんなことを言ったりしている僕の方が今は酷い束縛野郎だ。
 
 こんなふうになるとは思わなかったが、僕はとても嫉妬深い。自分でも引くくらいに。
 こいつはそんなところも「俺のお姫様は本当に可愛いらしい。愛い。」とまで言ってくれている。

 ただ、今回のことはそういった感情だけでなく、明確な悪意が狙いを定めていることに不安を覚えている。
 そのことを正直に話す。

「ごめんな、お前は悪くないのに。あれを見たから不安になった。それだけなんだ…」
「あんなゴミ共などと比べてくれるな。」

 こいつを侮っているわけではないが、僕の心配も分かって欲しい。
 ただ、失礼なことはしたと思うので謝る。

「さっきも気を使わせて悪かったな。クロにも申し訳ないよ。」
「構わん。お前の不安は分からんでもない。」
 
 先程からの非礼を快く許すこいつは続けてそれを語る。

「何度も言うがあれはそれに堕ちただけだ。
それなりに構え、強くあれば避けれた。」

 冷たいように聞こえるが、こいつの言うとおりの事なんだろう。

 考えてみれば交流も殆どなかった実家が、いきなり親しくしたいと言ってきたことがおかしかった。
 あんな形で嫁いだとはいえ、元々僕に興味がなさすぎるのに黒には手を出す。
 落ち着いてきたこいつにも興味があると嘯く。
 さらには紹介しろだの勧めろだとかまでほざいた。

 確実にその地位と力を欲しているし、僕の愛するものを奪おうとしている。

「なんで発情の薫り…フェロモンなんてものがあるんだろうな?
朱天シュテン、僕のそれはオスを猛烈に誘うんだよな?
あいつらを嫌ってるのに僕は同じことをしている…」

 まだ僕の中に留まり上から見下ろしているこいつに尋ねる。
 いい加減に集中して欲しいという雰囲気を出しているが、ちゃんと応えてくれる。

「お前の薫りは何よりも俺を酔わせ狂わせる。
だがそれはあんな汚物のものとは違い心地よい毒だ。」

 (愚物にゴミに汚物って…だんだん酷くなっていってるな。
 父の後添えと僕の異母弟はそんなやつだけどさ。)

 僕を責めるのを諦め、心臓の【華】に口づけを落とし、強く吸った。

「ん、ぁッ!…それが今は嫌になってるんだ。
お前にしか感じれなくなれば良いのになんでだろうな。」

 甘い痛みに耐えたあと、返事を返す。
 予告なくするなといつも言っているが、多分僕の気を反らせるためだろう。

 けれどその甲斐無く、先刻まで接していた彼らを思い出し、また気分が悪くなった。
 
「あんな塵芥とお前は比べるまでもない。」
「でも、もし…お前があの薫りに振り回されて、理性を無くして、僕以外を噛んだら嫌だ……ぅ…」

 渦中のあのひとのことよりも、まずそのことを考えてしまう自分が嫌になる。
 発情期を目前に控えた今は気分も落ち着かず、情緒が不安定だ。
 ただでさえ弱い涙腺がさらに弱く、ちょっとしたことで泣いてしまう。

「泣いてくれるなお姫様。お前が悲しむと俺も辛い。
どうせ泣くなら善がり、啜り泣いてくれる方が良い。」

 そう言うと僕の目尻に浮かんだ涙をなめた。

「ふぇ?」
「【お前しか要らない。お前にしか惹かれない。お前にしか勃たない】だ。」

 いつもの様に卑猥な事を言うが、こういうところに愛情を感じる。

 この愛を手放すことが僕は怖い。
 父たちの訪問からずっと抱いている不安に胸が潰れてしまいそうだ。


 αはいくつものΩと番の契りを結べる…父のように。


 母がいなくなってしまったその理由。
 僕が恋と愛を諦めたその原因。

 先刻まで僕の部屋に押しかけてきたやつらが見せたそれが怖い。 
 今のこいつはかなりα寄りになり、表情などはもうオスにしか見えなくなってきた。

 こいつも嫌っているし、呪いは薄れ減りはしたが義父には未だ妾妃が存在する。 
 後宮だってもう存在しない。(屠殺場はあるけど)
 前には黒の妃になりたいとも言っていた異母弟は、今度はこいつの妃になりたいと言う。
 父の後添えと異母弟にそれに勧めろとそう迫られた。
 こいつも妾妃を勧められたりもしたらしい。

「そんなことは起こらん。安心しろお姫様。」

 僕の体を引き寄せ抱きしめる大きく逞しい体。

「俺のメスはお前だけだ。今の様に可愛がるのもお姫様、お前だけだ。」

 耳元で囁かれる愛の言葉。 

 何故かこの温もりを失う予感がして不安で仕方ない。
 既に色々なものを与えられているのに、こんな気持ちになるのは、垣間見たあの恐ろしい光景が原因だろう。

「それでもあんなのを見たら不安になる…」

 大好きな番の胸に顔を埋める。

 いつものようにこいつの薔薇の薫りに癒やされる。
 俯いた僕の頭と背中を撫でてくれるがまだまだ不安で仕方がない。
 この愛を失うことが本当に怖ろしい。

「お姫様、お前を悩ますもの全てを排除したいが、難しいな。少し休むか?」
「ヤダ…動かなくてもいいからこのままがいい。」

 僕の中から出て行こうとするこいつを引き止める。

「俺が辛いんだがな。飲むか?構わんぞ。」
「今はまだいい…」

 血を勧められるがそれも気分ではない。

「参ったな、どうすればお前は安心する?」
「もう少しこうしてくれ…」

 無理を承知でだがこの温もりを感じていたい。

「…あぁ(やはり辛い。発情を誘発させるか?)」
 
 心底困った声で慰める番の胸に頭を埋め、先程言われたことを思い出す。

『魅了され洗脳されているそれを解くことは出来る。
 だが、長くその毒に浸かり犯された精神は耐えきれなくなるだろう。』

 こいつの語ることは事実しかない。
 呪いのことに関しては掛けるのも解くのもこいつが世界で一番だ。

 あのひとの最良の未来は甘い毒に酔ったまま眠らせてやることなんだろうか?

 また込み上げて来た涙がぽろぽろと零れた。

「お姫様…本当に困ったな。(早めに決行するか。)」


 ◇◇◇


 後の時代になるとそんなことにならない為に、フェロモンを抑制する薬やΩの項を守る首輪とかも出来たんだけれど、この時代は【事故】などで番になることも多数あったんだ。

《聞いた感じだと故意でそれをしているような気がするが…》

 発情期を利用して、より良いオスを手に入れようと画策したものもいたし、Ωだってαに望まれたら嫁ぐのが当たり前だった。

百合リスの父親は最低ではないか?息子にその夫への妾を推薦するなど信じられないね。》
《そうです!わたくしなら張り手をお見舞いしてしまいそうです!》

 パパ、ママ、実家とはそんなに気安い家族関係ではなかったんだよ…。
 家出の時もそんな感じの事を話したかと思うけど、厳しく躾けたり、跡継ぎ教育は施すけれど、息子や孫として可愛がられた記憶はあんまりないね。
 父は母に良く似た私を心配して文を送ったり、手に入りづらい甘味のお土産を持って帰ったりとかするけど、気まずいのか幼い頃から会うことは控えていた。
 姉はそんな父や祖父母に良く罵詈雑言やルーンの魔術をぶつけていたけどね。
 私は今の家族が大好きだから、これはこちらに生まれて良かったことの一つだよ。

《ま、嬉しいことを言ってくれますのね。》
《こんなに可愛い子を授かれて私達は幸せだよ。》
《今が幸せなら良いことだ。》
《ランディたちも含めてみんなお前を愛してるぞ。変な妄想はすぎるけど。》

 ありがとうみんな。ガブ、あなたはなんでそう一言多いのかなぁ…

《それにしてもエルカラートがいて良かったね。》
《シュテンはとんでもない鬼畜レイプ野郎だが、リスは嫁いだ方が幸せだったな。》

 (それにしても流石にここから先の発情期セックスは話せないよなぁ…
 ママはロマンス小説やハーレクインとか読んでいるけど、流石にそこまで詳しく話していいものか…)

《で、この先は?》

 ふぇッ?!話すの?!

《《《《》》》》


 ◇◇◇


 気持ちを吐き出し、ひとしきり泣いたことで落ち着いてきた。
 その間ずっと抱きしめ撫でていてくれたことに感謝する。
 胸に顔を埋めたまま、小さな掠れた声だがお礼を言う。

「ごめんな、…ありがとう。」

 (ずっと生殺しの状態でごめんな。
 お前も我慢を覚えてくれて僕は嬉しい。)

 出会った当初はありえない絶倫と欲求で、僕を気ままに蹂躙して散々抱き潰したこいつも、今は『待て』ができるようになった。
 ツナに色々と教えてもらわなかったら、本当に好きなようにされてたから困る。
 貞操観念が強すぎて閨事に疎かったから余計にだ。

百合ユリ…すまんな。」

 その言葉に嫌な予感を覚え、顔を上げる。
 ほんの少し息が荒く、衝動を堪えるような表情。

 僕がうわの空で中断し、そのまま中に留まっていたこいつが脈打つ。

「ぇ?ふぇッ?!」

 (おあずけにしすぎた!
 お前、なんでそんなに元気なんだよ!!)

「少し早いが、可愛がってやる。」

 とても謝罪するような調子ではない声と色を多分に含んだ視線。

「ハィ?!ちょっ…!!」

 僕と目が合うとにっこりと笑い、見つめるその目には力の証が浮かんで来た。

「…ぁ、…」

 (コイツ!またか!!発情ヒートを誘発させやがって!!!
 こいつは僕の初めてを奪ったときもこれをやっていた。)

 熱っぽく怠い、自分の中が疼き濡れてくるあの感覚が来た。
 自分の中のΩの性が強引に引き出され苦しい。

「お前…なん、でし…た」

 (前言を撤回する!クソッやっぱりこいつは相変わらずこいつだった!!)

 相変わらずワガママに鬼畜な行動をするこいつに腹を立てるが、今回は僕も悪いのでこのあとは好きにさせるつもりだったが…

 (許さん!お前、ふざけんな!!嫁になんてことすんだ!!!
 普通の発情期よりもずっと酷いことになるのに!!!)

「どうせじきに来たものだ。
このまま落ち込み悲嘆にくれるなら俺が可愛がり、慰めたい。」

 その発言に期待してゾクゾクする肌。
 体中が敏感になり、今触れられている背中も髪からさえも快感を拾い上げる。
 背筋を撫でる手つきは先程までの慰める様なものでなく欲を煽るもの。

 金と銀の色違いの僕を見つめる瞳に囚われる。

 (この頃はよりオスっぽくなってますます僕好みで参る…イヤイヤマズいぞ!)

 色々と強引にねじ伏せられる前に、力ある視線から逃れようとする僕の顎を掴まれる

「あ…ん、ん!ンーーーッ!!!」

 口づけをして唾液と共に舌でも噛んでおいたのか血まで飲ませてきた。
 口内を蹂躙する舌と背と腰を撫でる手がさらに僕から抵抗する力を奪っていく。

 (こいつ!相変わらず強引に色々とやってくれる!!
 これは絶対に体で堕とす気だ!
 僕がお前の顔と身体と血の味に弱いのを逆手に取りやがって!) 

 こいつの胸をバシバシ叩いて抗議をするが逆にその手を捕まれる。
 成長したことや【血吸ちすい】を振るう為に、綱に稽古をつけてもらううちに筋肉も幾らかついて、こいつほどではないけれどなかなか見れる体になったと思う。
 なのに呆れるほどの身体能力で以て押さえつけられる。

「ッぷ!お、まえ…なぁ…」

 強引にされていた口づけも終わり、離れた唇から僕とこいつを繋ぐ銀の糸が引いている。 
 
「そろそろお姫様は空腹のはずだ。」 

 舌でそれを舐めて切り離した。

「なぁ…お姫様、俺が欲しくないのか?それとも俺が飲み飢えさせようか?」
 
 相変わらず恐ろしいことを言うこいつ。
 ちらりと見えた牙に胸が高鳴った。

 (それがほしい…)

「先程俺を飲ませたがもう要らんのか?」

 (う…ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!)

「最近は素直になってきたが、生意気に俺に向かってくるお前も好きだ。
はじめて抱いた頃のように罵倒されるのも良い。」
「ハァ?!なに変態みたいなこと言ってんだよこのバカ赤毛!!」

 僕の言葉にうっとりしたようなそんな艶めいた目を向ける。

 (はぁ?!お前、マジに変態になったのか?!)

 そうこうするうちにこいつが下から穿ちはじめる。

「え!あッ、ぁ…ん、ん、ああ、あん」

 もとより大きなこいつのソレが抽挿を繰り返す度に、僕の中でさらに大きくなってくる。

 (うぇッ?!まだ大きくなるのか!ウソだろう?!)


 ( ま さ か ! ! ! )


「ハハ…俺もお前に中てられた。はぁ…良いな、凄く…佳い…」
「黙 れ よ 卑 猥 物 早くそのでっかいやつを抜け!」
「は、そんなことをしたら…お姫様が辛いだろう?」

 情慾の籠もった喰らいそうなその視線で僕を見る。
 
「やだコラ!オイこら!お前までなに発情ラットしてんだよ!!」

 久しぶりに見るギラギラしたこいつのオス全開の眼差し。

「それは僕を『喰うからいかん』避けようってお前が言ったんだろうが!!!」
「ふふ、ハハハ…はじめての時の蜜を垂らし誘うのを何度思い出したか。
あぁ…全力で可愛がる。」

 (ヤバい!マジに喰われる・・・・!!)

「嬉しいな…お姫様?」

 思わずゾクリとしてその目にもやられ、中をきゅうと締め付ける。

「や、…ああ、ぁ、んぁあッ!」
「本当に止めるのか?お前のナカは俺を離さんが?」

 (ううう…それそれその視線!それが大好きです!
 イヤイヤ駄目だ頭が湧いてきた。)

 こいつと繋がっていたところからさらに蜜が溢れ出す。
 それがいやらしい水音を鳴らして聴覚も犯されてきた。

「だぁ、めぇッ!」
「お姫様の中もどんどん濡れてきた。」

 (話すたびに見えるこいつの牙に欲情する…
 あれで噛まれるときっともう何も考えられない!)  

 僕をガンガン突きながら舌なめずりしたのを見たその瞬間にそれは弾けた。

「お前の中は本当に佳い、良すぎて俺は苦しい…」

 (その牙で僕を噛め!お前のつけた【華】から吸い上げてくれ!!)

「駄目だ。お前からおねだりされるまで許さん。」
「うぅぅ…い、じわる、し、ない…」

 心なしかいつもよりも強力な熱が身体に籠もっている気がする。

 (…もう抵抗はやめます。嫁を可愛がってください旦那様。 ) 

 僕の体を押し倒し、にっこりと笑ったこいつを見て僕は理性を捨てた。

「ふ、あああ、あ、ん…あッ、あ゛あ゛あ゛あ゛」

 僕の弱点をガンガン責めて僕にも吐精させた。
 感じる快感の余韻に身を任せ大きく背を仰け反らせる。

 (牙も同時に欲しい!噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで噛んでッ!!!)
 
「はぁ…ん、ン。牙…ちょうだい。」

 首を…喉をこいつの眼前に晒す。

「き、牙…くれよ、ぉ…」

 (お前のそれが欲しい!手酷く犯して僕を食え!)

「お前は本当にヤりながら飲まれるのが好きだな。
お姫様、お前は本当に可愛い。」

 まずは僕の【心臓】に口づけが来た。

 落とされるそれに期待するが肝心のものはまだ来ない。

「ゔあ゛ッ、あ゛あ゛…あ、ああっ…ん」

 軽く舐めた後に甘噛みされる耳、喉、首もと…まだまだ刺激が足りずもどかしい。

 (もっと噛めよ!僕から飲め!好きなだけ喰らえ!)

「お前は…それは調子に乗ると危なくなる。」
「ヤダァ、は、ァああッ!たべてよ…」

 そう言いながらこいつに縋りつく。

「のめ、よッ、あ、んーーッ」
「まだだ。」
  
 その背に爪を立てておねだりする。

「ん、ッ!ダメ…もうむりっ!」
「ならん。」

 まだ許されない。

「もっと俺を欲しがれ。」

 それを強要するこいつのお眼鏡に適うように、
 こいつの耳元で囁いてさらにおねだりする。

「た…りないんだ…お…ねがいしゅ、てん…」
「勿論だ俺の大事な愛しいお姫様。」

 (お前のでっかいやつで可愛がってよ…)

 ───その時はもうこいつの話すことなんて既に耳になんて入らなくなっていた筈だ。

 僕は長く重い発情期でも割とその時のことを覚えている。
 でも、この時のことは記憶がとても朧げで…

 本当に呆れるが絶対にこいつがなんかして無理矢理に僕を孕ませたんだろう───

「俺のお姫様、美しい白い百合…
お前は誰よりも美しく、気高く、貴い。容姿容れものにこだわるな。」

 優しく僕の下腹を撫でる手。 

「この奥にたんと俺の種を蒔いてやる。」

 黒がお腹にいた頃も良くされていた。

「黒に弟を作ってやろう。」

 その言葉に手放した理性が戻る。

 (まさか?!ないよな?発情期に入る前に理由を話して拒否したよな?
 お前にも黒にも悪いけどまだ駄目なんだ!) 

 いつもみたいな不思議そうな顔をする。

「なぜ拒む?俺の子を宿し、産むのはお前だけだろう?」
「はッ?!イヤイヤイヤイヤ駄目だ!」

 散々説明した僕らを取り巻く状況。
 あまりにもよろしくないそれに、落ち着くまで子種は縛れとずっと言っていた。

「黒はあんなにも欲しがっている。勿論俺も欲しい。」
「こんな状況で僕を孕ませたらお前も黒も困るだろ!!!」

 こいつの上半身を押し返し拒絶しようとした時に…

 それに目を奪われた。


 その胸にある【青薔薇】には僕の【庭白百合】が絡みつき、咲いていた。
 かつて見た姿見の前での行為の時と同じ様にどんどん新しい蕾が咲いていく。

 やつらが来てから、見れば嫌な気分になった僕の【華】。
 思わずその執着ぶりに笑ってしまう。

 パラリと落ちてきたあかい髪。
 毎日僕が梳り綺麗に艶を出して整えているそれ。
 頭から出てる貴いスメラギの金色の二本の角も見慣れた。
 色違いの金と銀の瞳は本当に愛おしそうに僕を見ている。

 僕の授けた【華】もどんどん咲いて、こいつの凄まじいまでの美貌をさらに引き立てる。

 こいつの匂いが分かるのはもう僕だけ。
 
 (そうじゃなきゃ絶対に嫌だ…)
 
「それは絶対に違わん。あんな汚物共は忘れろ。」
 
 僕の大好きなあかい鬼。
 大きく育った僕よりもまだまだずっと大きくて、いつも優しく抱きしめてくれる。

 (その胸にしなだれ掛かり、その腕に抱かれるのは僕だけ?)

「お前しか愛さない。どんなことをしても俺はそれを守るから。」
「うん…」

 優しく囁かれた言葉に僕は堕ちそうになるが留まる。
 自分や母を悩ませてきた苦しみを味わせたくない一心で堪えているが限界も近い。
 そろそろなし崩し的に飲まれて了承してしまいそうだ。

 (もう迷わない。悩みたくない。お前を信じたいけど怖くて仕方ない。)

「あんなもの屑どもなど毛ほども障害にならんとそう話した。だから安心しろ。」

 もう理性と本能が乖離して僕の中はグチャグチャになっている。
 けれどもそれは認めれない。

「そこまで嫌うなら俺は【しゅ】で以て消してやる。」

 また世界を書き換えてまでして僕に愛を示そうとするこいつに呆れてしまう。

「お姫様、Ωの美徳なぞ糞くらえだ。
誰もがお前のその姿を否定しても俺にとってはお前だけだ。」

 そしてにっこりと笑ったこいつを見て、

 (僕はこいつのこの【天】色の笑顔に弱い。本当にこのワガママさんめ!)

 (もういいや…お前がそこまで言うなら守れよな。) 

 僕は理性を完全に捨てた。

 僕の右足を肩にかけ太もものあたりに噛みつきちらりとこちらを見遣る。
 自分の意思と身体はもう別に動き、その場所が僕のそこがこいつを求めて仕方がない。

 (今になって噛み付くなんて卑怯だ。)

 噛みあとから僅かに流れる血を舐めているがそれが逆にもどかしい。

 (もっと強く噛んで欲しい!もっと僕の奥に来い!!)

 自ら動きこいつを奥まで導きそれを強請る。

「あ、あ!アッ!僕のはらに…たっ、ぷり、よこせ!」
「俺の子を孕ませる…お前が無茶をしないように。心安らかになるように。」

 弾けたそれから大量の精が溢れ熱い熱いものを僕の奥に送り込む。
 こいつのそれは長い上に量も多く、これまでに出したものと合わせると、お腹がぱんぱんになって入り口から溢れる程だ。

「い゛あ゛ッ、ぃあ゛、あ゛ッ!!」

 果てたばかりなのにまた元気になり、何度も何度も奥まで来ている、
 大きな僕の大好きなソレ。
 いつもよりたくましくて温かいその熱に、胸が苦しくて、嬉しくて、また強請る。

「俺とお前の時は長い。【沢山の子を産んでくれ】。」
「ぼく、を、ンンっ、は、ぁあアッ、らませ、ろッ!」
「そうか、嬉しいなお姫様。俺は【お前の銀髪と銀目を持ったΩの子】がいい。」
「【だ、めッ!】んッ、…やめッ!」

 (僕や母様に似た子は絶対に駄目だ!苦労する…)

「なら、【母上のようなものが良いのか】?中身はかなり違うが」

 確かに義母のような子なら母の様な苦労もないだろう。

 ぼろぼろと涙が出てくる。
 生理的なものなのか、苦しい心から出ているのかもうわからない。

 (Ωでもαでもどちらでもいい…)
 
 首をブルブルと横に振りそれを否定する。

「【お、まえっ、とぉ…いっ、しょぉ】!」

 (お前にそっくりなやつが良い…)

「…俺に似ても苦労する。」
「ぃや…あッ。ああ…」

 優しいけれど無理やり奥まで来る強引さはこいつらしい。 

 (どんな子でも可愛がれ!でなきゃ絶対に駄目だ!!)

「勿論大事にする。」

 
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