僕の番が怖すぎる。

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三章 遂に禍の神にまで昇華される

大丈夫だ、次は【Ωの可愛い子だ。黒の欲しがった弟たちだ】。

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 ◆◆◆


『愛し、愛されるものの『肉』はとても佳く、堪らなく美味い。
 その体も、その血肉も全てが俺を狂わせる。』

 そんなふうにあの時に告白されてから数年経った。
 クロもかなり大きくなってきたし、この間はαとして本格的に目覚めた。

「俺のお姫様…百合ユリ、お前を抱きたい。お前を飲みたい…喰いたい。」

 後ろから抱きしめ、僕の体に咲くこいつの【華】の存在を確かめる様に、そこに鼻を寄せ顔を埋める。

 そんなこいつに僕は「この甘えん坊め!」と言いながらも頭を撫でてやる。

 こいつのこの癖が僕は結構好きだ。
 先日の発情期も姿見の前で後ろから手酷く犯されながら、そこから飲まれて…すっごく佳かった。
 
 こいつが僕の耳を食み、軽く咬む。
 この甘噛みする癖も大好きだ。
 
 そうしているとこいつは耳元で強く呪いの効いた言葉を囁いた。

「俺のお姫様、【ムラサキ…俺の子を産んでくれ】。」 

 (ん?【しゅ】を使って強要してくるなんて…またなんかやらかしたのか?)
 
「あー、ハイハイ。」

 とりあえず適当に返事をする。

 (これから何をしたのか問いたださないとな…)

 そんなふうに考えている僕に、こいつはとんでもないことをほざいた。


「実は既にお前は身籠っている。」


 (ハァ?!お前なにやっちゃってくれてんの!!)

 思わず振り返った僕の目に飛び込んできたのは、尋常じゃなく整った美しい夫の顔。
 男にも女にも見えるこの顔は、ここ数年で表情などはオスにしか見えなくなってきた。

 その顔をにっこりとさせ、さらに強く呪いの乗った言葉を紡ぐ。


「大丈夫だ、次は【Ωの可愛い子だ。クロの欲しがった弟たち・・だ】。」


 清々しいほどに僕の都合を考えない発言をする僕の夫、朱天シュテン

 その顔に弱く、そしてその発言に思わず脱力してしまった僕は、諦めつつもあるが、いつものように叱りつける。

「それは僕も思っていたから良いけどさ…もうね、お前ね…いい加減にしろよなッ!」
「前回の発情期でお姫様が望んだ。」
「発情期は大体において言うことを鵜呑みにするなと、僕は前にも注意しただろうが!
まだまだ僕は亜神として安定していないのに…参ったなぁ。」

 暗黙の了解であるはずのこともこいつは軽く無視する。

 ふと、こいつの話したことに聞き捨てならないことがあったことに気づく。 

「ん?いや…ちょっと待てよ、オイこら!
お前はさっき、弟たち・・とか言わなかったか?」

 (まさか?!もしかして…)

 そうでないことを祈りながら返答を待つ。


「双子だが?」

 
 平然とした顔で、サラッとまたとんでもないことを話すこいつ。

 ( ハ イ ? ! な ん で す と ! ! ! )

 いくら僕が亜神であろうと多胎児は危険が多い。
 茨木からも前回のあまりにも大きな黒のことでもしもの場合は諦めろとまで言われていた。

「お 前 本 当 に い い 加 減 に し ろ よ な ! ! !」

 僕は噴火前の火山のように煮えたぎる感情をぶつける。

 (前回の黒の時でさえかなり大きかったのに、双子とか死ねるだろうが!)

「なんでそんなにも言うことを聞かないんだお前は!」

 (僕がΩでもかなり大きくなって、それに成長も止まったけれど、それでも不安はあるんだぞ!!)

 そんな僕とは対象的に、いつもの様に落ち着いた抑揚で鬼畜な発言をするこいつ。

「お前似の銀髪のΩの子、それと俺に似た子が欲しいと、そう強請った。
俺も箍が外れていたからどこまで【しゅ】で以て叶えたのかはわからんな。」

 相変わらずこいつの呪いの垂れ流し問題は止まらない。
 このことにみんなが頭を抱えているが、狩り以外では【域】で過ごすことが多いので、被害を受けるのはほぼ僕くらいだ。

「僕は真剣にお前の去勢を考えようか悩むよ…」

 今までも呪いで子種を縛っていたのに、黒があまりにも弟を強請ることや、僕もそろそろと思っていたから、ついやってしまったんだろう。

「そうしたらお姫様の大好きなモノで可愛がってやれんぞ?」 

 呆れたようなふうに話すこいつはどこか他人事だ。

 (う…それは、困る!……でなくて!!お前なぁ!!!
 なにその涼しい顔!お前が産んでみろッ!!)


「構わん。」


 (ギャー!それはやめろと何度も言ったよな!!
 みんなが困惑するから止めてくれ!!!) 

 またまた僕を困らせる発言をするこいつに僕の頭は大混乱だ。

「お姫様が辛いと言うのなら、俺は本当に構わんぞ?」

 物凄く不思議そうな顔をして、そんなヤバいことを伝えてくるこいつ。

 (もう、ダメだ…こいつのワガママに僕は限界だ…
 だが、この時期で多胎児なら安静にしないといけない。
 それにまたあの酷い悪阻も覚悟しなくては。)

 本当にこの朱い鬼族の亜神様はワガママで、デタラメで、僕の言うことなんて聞きやしない。

 でも、そんなこいつに囚われた、堕ちてしまった僕は、なんだかんだでこいつに甘く、許してしまう。

「はぁ…茨木イバラキツナに内緒でお菓子を貢げよ!」 
「四童子は協力するだろう。」
「市で手に入れたらバレないか?」
「フレイヤに頼むのも止められそうだな。母上に頼むか?」 

 神妙な顔をして、これからのそれ・・の入手方法を考える。

 茨木と綱は僕の妊娠中の行動で、『妊娠糖尿病』というものなどを心配している。
 前回のことを聞いた綱は『次からはきっちりそのへんは管理する!』と息巻いていた。
 何でも綱の歳の離れた姉が大変な目にあって、甥っ子とともに危うくなったそうで、それを心配してくれているそうだ。

 (だがなアオ、僕は妊娠中の不満などの鬱憤はそれで解消するしかないんだ。
 ゴメン!!)


 再び僕を抱きしめ、僕の首もとに頭を埋め、甘えてくるこいつの頭を撫でながら思い出す。


 事の起こりは前回の発情期、三月程前のことになる────



 ───────────
 そんな訳で黒に双子の弟が生まれます。
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