英雄よ、我が道を行け。

シンシン

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二章 五言目 「出来事」

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  結局、行くことは許されなかった。それどころかこっぴどく説教された。この間の山の件とか、お母さんがどれだけ心配したかとか、お父さんが泣いてうるさかったとか、箸の持ち方がおかしいとか…ここまで来ると違う話だ。でもお説教は半時くらいで終わった。お母さんの説教は早口だか短いので以外とすぐ解放される。…怖いのにはかわりないが。


  「ザッザッ……ふぅ。」
  僕は現在尾行中だ。もちろんお父さん達を。説教後、疲れて寝たお母さんを起こさないよう外に出た。ここまですれば後は簡単。お父さん達のところに直行した。来たのは良いが、素直に連れてってと行っても家に返されるのが目に見えてるのでこの方法をとったんだ。
  森の中は蔦やぼうぼうの草がたくさんでなかなか進めないようだ。正直僕もばれないよう体制を低くしてるから腰が痛いし、気づかれないよう常に気を張ってるからせい…えっと…あっ、生態的に疲れた。
  さすが大人。手こずってるけど草を掻き分けて大幅で歩いてるからどんどん進んでいる。僕も後ろからこっそり、とことこついていった。


  しばらく歩くと、草を駆って整えられている道を見つけた。近くに人が住んでいるのがわかる。緊張と好奇心ができはじめたのか、慎重に、でもはや歩きで進み始めた。木葉の隙間から漏れる光が模様みたいできれいだ。でも他の山の光に比べたらとても少ない。そんな小もないことを考えながら歩いていると、
「うゎ!」
突然前から叫び声が聞こえた。見ると最後尾にいた男性が尻餅をついていた。他の男達も何事かと後ろを振り返った。
「どうした?」
「いや…今黒いのが横に通りすぎて…」
最後尾の男性がその黒い何かが通ったであろう方向を見ながら言った。近くにいた男が最後尾の男性を引っ張り起こし言った。
「鳥じゃないか?こんな森の中だ、いないほうがおかしい。」
その言葉に納得し他の男達はまた歩き始めたが、最後尾の男性はまだ腑に落ちないのかそれからずっとうつむいていた。




  少し歩くと太陽の光に照らされるひとつの家があった。皆家の前に集まり、意を決して扉を叩いた。







  「少年老い易く、学成り難し。一寸の光陰軽ん
   ずべからず。」
                                            朱子より




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