映画をむさぼり、しゃぶる獣達――カルト映画と幻のコレクション

来住野つかさ

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105 玩具フィルムと8ミリフィルム①

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 八頭女史のコレクションルームで川真田氏と門木氏を見た時、川真田氏は私を『ひびの・けい』と呼んだ。そして誘拐されそうになった時も。ここに当時から違和感があった。これは資料課の人間か資料課から聞いたかしないと呼ばないと思う。だって私の名前は日比野恵――『ひびの・めぐみ』だから。淡々としているのを冗談で『ヒビノ系』と呼んだあの雑談をいつまでも覚えている人なんてそうはいないはずだ。だが、その雑談の最後に来て、何故か私を『けいちゃん』と呼ぶようになった山森が漏れた穴なのかなと感じたのだ。私の名前を本当に『ひびの・けい』だと思っているようだったので。

 はっきりはしないけど、何となく気になる。今までと何処となく違う。理由らしいものはないが、一緒に働いて来て中で漠然とした違和感の一つが山森の変化だった。

 ふとした時に何かを観察されているような視線。言いかけては何度もやめる言葉。誘拐未遂と空き巣被害で時間が出来、あれこれと思い返す時間を持ったことで、その『何か』に気づいたのだ。



 終業後、館長車の運転手さんが気を遣って家まで送ってくれた。部屋の中を見て問題ない事を確認して息をつく。

 館長が辻堂刑事から聞いたところによると、山森は『けいちゃんが失くしたものを気にしてたから代わりに探しに来てあげた』と叫んでいたらしい。緊急連絡網用に職員の電話番号は館内周知しているが、職員の住所は非公開だ。総務課人事担当でない限り、個人的に教え合ってるのではないのなら知り得ないはずで、私も山森に伝えたことはない。

 それなので、自宅を知っているのは佐山邸から送ってもらった時のメンバーなのだが、あの日は山森と池上以外はまだ館内で働いていた。そして池上は私を心配して自宅にまで寄って、異変に気づいて通報してくれた。空き巣犯なら通報などしないだろう。

 一番怖いのは、やはり彼女が合鍵を持っていたことだろう。空き巣犯は普通に鍵を使って侵入したのだから、大きな物音さえなければ隣人も分からなかったに違いない。


 
〈山森さんが捕まりました〉

〈良かった。俺、辻堂刑事に話してくるよ〉

〈私も一緒に行きましょうか?〉

〈ううん、まだ事件は解決していないんだ。相手を油断させるためにも俺とは離れていた方がいい〉

〈はい。池上さんも気をつけて〉

〈うん、ありがとう〉



 今のところはLINEでのやり取りだ。池上は当分仕事を休む。警察に目を付けられているため行動に制限があるのだろうと思わせておくのだ。

 



 

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