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第1章 クソ勇者からはじまる簡単なお仕事
第26話 ツバサ、本気を出す
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シャルロットにわざと負けて死んだフリをし、龍神国からおさらばする事、それがツバサの計画だった。
そしてツバサとシャルロットの試合が始まり、シャルロットから強力な攻撃を引き出すために先制攻撃を仕掛けたツバサだった。
ところが根性なしのツバサは、シャルロットの激しい攻撃を自分の身で受けることができずにいた。
どんなに戦闘レベルが高くても、剣で斬られる恐怖に耐えるのは簡単なことではない。
誰にもツバサの生存本能を責めることはできないだろう。
そして、シャルロットの黒炎剣がツバサに襲いかかった時、思いもよらない助けが入った。
それは、龍神国の第一王女リディアだった。
「ツバサくんはわたしが守ります」
観戦者が呆然とする中、ツバサが最初に我に返った。
「リディア、どういうつもりだ……」
リディアはツバサを見つめてニコリと笑う。
天覧試合を妨害した状況で、なんという余裕だろうか?
いや、余裕なんかではない。彼女の目には強い意志と覚悟が宿っている――
「おーっ! リディアさま!」「かっこいい!」観客が騒ぎ出す。
「お姉さま! いくらお姉さまでも決闘の邪魔をするのは許せませんよ!」
「決闘ですって? これのどこが決闘なの? 自分よりも弱い者を嬲ることが決闘なの?」
「お姉さまは解かっていないのです。この者が隠していることを!」
「それでもいいのです。わたしはツバサくんを信じます!」
(リディア……、ごめん)
ツバサはリディアの言葉に愕然とした。
彼は今まで、これほどまでに純真な思いを向けられたことなど一度もない。
もし、自分が第三者の立場だったら、絶対に信じなかったはずだ。それなのに彼女は信じてくれるという。
「そうですか……。それならば仕方ありません。ギュンター! わたしはお姉さまと決闘します。龍王さまから決闘許可をとって来て」
「ちょっと待った!」
ツバサは立ち上がって剣を構えた。
彼女たちに決闘をさせる訳にはいかない。自分のつまらない策略で、仲違いさせる訳にはいかないのだ。ツバサは決心した。リディアのために……。
「ツバサくん、これはシャルロットとわたしの戦いです。邪魔をしないで」
リディアはツバサの前に立った。
彼女はまだツバサに騙されている。いや、騙されていることなど、解かっているのだろう。それでも彼女はツバサを守ることを選んだ。
しかし、それが結果的にツバサを改心させてしまったのだ。
「リディアさん、それは俺の言うセリフだ。シャルロット! 戦う相手を間違えるな!」
ツバサは叫んだ。
これまで見せたことのない真摯な迫力に、シャルロットは応じた。
「やっと、本気になったようね……。ギュンター! 続きを始めるわよ!」
「リディアさま! 一旦引いて下さい!」
ギュンターはとても恐縮していたが、リディアは大人しく支持に従ってくれた。ツバサの意思を尊重してくれたようだ。
リディアはツバサを一瞥すると心配そうに「頑張って」と囁いた。ツバサはそれに応えてニコリと笑う。
「再開!」
ギュンターの掛け声と同時に二人は距離をとった。
「デュランダル! 召喚!」
ツバサは次元収納から大賢者グラン・マイヨールのコレクションにある聖剣を呼び出した。シャルロットの持っている魔剣に並の魔剣では容易く折られてしまうだろう。
ここは聖剣の使い時だ。
「また、変な魔法を使ったわね。その正体、暴いてやるわ!」
「さっさと来な」
シャルロットは黒炎剣をツバサに向かって振った。
黒色火炎が鞭のようにしなりながらツバサを襲う。
だが、ツバサは黒炎の鞭を弾き飛ばす。それは龍神族だとしても決して簡単なことではないはずだ。
「やるわね。それならこれでどう?」
黒炎剣の鞭が三本に分かれて射出された。
剣から解放された鞭は蛇のように蠢き、形を変えてツバサに向かってくる。まるで彼を追尾しているように……。
鞭と鞭の間には人が逃げ込める空間がある。しかし、鞭が蛇のようにうねるので、避けることは不可能……なはずだった。
「所詮は炎の類。遅くって欠伸が出るぜ!」
ツバサは舞うように黒炎の鞭を掻い潜りながらシャルロットに迫る。
「嘘でしょ……」
おそらく、今まで複数の黒炎鞭から逃れた者はいないのだろう。 シャルロットは心底驚愕していた。
その隙きを突いてツバサは上段からデュランダルを振り下ろす。
ガキーン!
シャルロットはかろうじてツバサの剣を受け止める。
「くっ! 重い……」
シャルロットは剣を受け止めるのに精一杯だったため、次の動作が一瞬遅れる。
すかさずツバサはシャルロットの腹に蹴りを入れる。
「グッ!」
シャルロットが屈み込んだところに、ツバサは再び上段から彼女の左肩に剣を振り下ろした。
そして左腕が宙を舞う。
真っ赤な血を振り撒きながら……。
「まだだ! まだ終わっていない!」
左肩から血が噴き出てる。シャルロットは右手で傷口を抑えるが、止められるはずもない。
「判った。それがお前の望みなら」
ツバサは剣を構える。
既にシャルロットの血は止まっていた。シャルロットは治癒魔法を使えるようだ。
「シャルロット、血が止まってよかったよ。これでもう一本切り落とせる」
「戯言をいうか!」
シャルロットは右手で黒炎剣を天に向けると魔法を唱える。
「最終魔法、黒炎地獄……」
しかし、何も起こらなかった。
そして、シャルロットの右手が黒炎剣を掴んだまま地に落ちていく。
黒炎剣が右手から離れて、地面で数回跳ねた。それをシャルロットは他人事のように見つめている……。
「えっ、何が起こったの?」
「魔法が発動されるのを待つ義理はないぜ」
シャルロットは自分の右手が失われていることに気がついていない。
ツバサの迅速の剣がシャルロットの右手を切断したが、殆どの龍神族には見えていなかった。
「勝負あり! 勝者! ツバサ・フリューゲル!」
ギュンターが大声でツバサの勝利を告げるが、彼にもツバサの動きが見えていなかった。だが、ツバサの攻撃がシャルロットに決まったのは明らか。
龍王国の騎士として、勝敗を告げてシャルロットを守るしかなかった。
「えっ、勝利条件が違わないか? シャルロットは降参してないぞ」
ツバサは抗議したが、闘技場は観客の悲鳴と怒声が響き渡り、話ができる状態ではなかった。
そしてツバサとシャルロットの試合が始まり、シャルロットから強力な攻撃を引き出すために先制攻撃を仕掛けたツバサだった。
ところが根性なしのツバサは、シャルロットの激しい攻撃を自分の身で受けることができずにいた。
どんなに戦闘レベルが高くても、剣で斬られる恐怖に耐えるのは簡単なことではない。
誰にもツバサの生存本能を責めることはできないだろう。
そして、シャルロットの黒炎剣がツバサに襲いかかった時、思いもよらない助けが入った。
それは、龍神国の第一王女リディアだった。
「ツバサくんはわたしが守ります」
観戦者が呆然とする中、ツバサが最初に我に返った。
「リディア、どういうつもりだ……」
リディアはツバサを見つめてニコリと笑う。
天覧試合を妨害した状況で、なんという余裕だろうか?
いや、余裕なんかではない。彼女の目には強い意志と覚悟が宿っている――
「おーっ! リディアさま!」「かっこいい!」観客が騒ぎ出す。
「お姉さま! いくらお姉さまでも決闘の邪魔をするのは許せませんよ!」
「決闘ですって? これのどこが決闘なの? 自分よりも弱い者を嬲ることが決闘なの?」
「お姉さまは解かっていないのです。この者が隠していることを!」
「それでもいいのです。わたしはツバサくんを信じます!」
(リディア……、ごめん)
ツバサはリディアの言葉に愕然とした。
彼は今まで、これほどまでに純真な思いを向けられたことなど一度もない。
もし、自分が第三者の立場だったら、絶対に信じなかったはずだ。それなのに彼女は信じてくれるという。
「そうですか……。それならば仕方ありません。ギュンター! わたしはお姉さまと決闘します。龍王さまから決闘許可をとって来て」
「ちょっと待った!」
ツバサは立ち上がって剣を構えた。
彼女たちに決闘をさせる訳にはいかない。自分のつまらない策略で、仲違いさせる訳にはいかないのだ。ツバサは決心した。リディアのために……。
「ツバサくん、これはシャルロットとわたしの戦いです。邪魔をしないで」
リディアはツバサの前に立った。
彼女はまだツバサに騙されている。いや、騙されていることなど、解かっているのだろう。それでも彼女はツバサを守ることを選んだ。
しかし、それが結果的にツバサを改心させてしまったのだ。
「リディアさん、それは俺の言うセリフだ。シャルロット! 戦う相手を間違えるな!」
ツバサは叫んだ。
これまで見せたことのない真摯な迫力に、シャルロットは応じた。
「やっと、本気になったようね……。ギュンター! 続きを始めるわよ!」
「リディアさま! 一旦引いて下さい!」
ギュンターはとても恐縮していたが、リディアは大人しく支持に従ってくれた。ツバサの意思を尊重してくれたようだ。
リディアはツバサを一瞥すると心配そうに「頑張って」と囁いた。ツバサはそれに応えてニコリと笑う。
「再開!」
ギュンターの掛け声と同時に二人は距離をとった。
「デュランダル! 召喚!」
ツバサは次元収納から大賢者グラン・マイヨールのコレクションにある聖剣を呼び出した。シャルロットの持っている魔剣に並の魔剣では容易く折られてしまうだろう。
ここは聖剣の使い時だ。
「また、変な魔法を使ったわね。その正体、暴いてやるわ!」
「さっさと来な」
シャルロットは黒炎剣をツバサに向かって振った。
黒色火炎が鞭のようにしなりながらツバサを襲う。
だが、ツバサは黒炎の鞭を弾き飛ばす。それは龍神族だとしても決して簡単なことではないはずだ。
「やるわね。それならこれでどう?」
黒炎剣の鞭が三本に分かれて射出された。
剣から解放された鞭は蛇のように蠢き、形を変えてツバサに向かってくる。まるで彼を追尾しているように……。
鞭と鞭の間には人が逃げ込める空間がある。しかし、鞭が蛇のようにうねるので、避けることは不可能……なはずだった。
「所詮は炎の類。遅くって欠伸が出るぜ!」
ツバサは舞うように黒炎の鞭を掻い潜りながらシャルロットに迫る。
「嘘でしょ……」
おそらく、今まで複数の黒炎鞭から逃れた者はいないのだろう。 シャルロットは心底驚愕していた。
その隙きを突いてツバサは上段からデュランダルを振り下ろす。
ガキーン!
シャルロットはかろうじてツバサの剣を受け止める。
「くっ! 重い……」
シャルロットは剣を受け止めるのに精一杯だったため、次の動作が一瞬遅れる。
すかさずツバサはシャルロットの腹に蹴りを入れる。
「グッ!」
シャルロットが屈み込んだところに、ツバサは再び上段から彼女の左肩に剣を振り下ろした。
そして左腕が宙を舞う。
真っ赤な血を振り撒きながら……。
「まだだ! まだ終わっていない!」
左肩から血が噴き出てる。シャルロットは右手で傷口を抑えるが、止められるはずもない。
「判った。それがお前の望みなら」
ツバサは剣を構える。
既にシャルロットの血は止まっていた。シャルロットは治癒魔法を使えるようだ。
「シャルロット、血が止まってよかったよ。これでもう一本切り落とせる」
「戯言をいうか!」
シャルロットは右手で黒炎剣を天に向けると魔法を唱える。
「最終魔法、黒炎地獄……」
しかし、何も起こらなかった。
そして、シャルロットの右手が黒炎剣を掴んだまま地に落ちていく。
黒炎剣が右手から離れて、地面で数回跳ねた。それをシャルロットは他人事のように見つめている……。
「えっ、何が起こったの?」
「魔法が発動されるのを待つ義理はないぜ」
シャルロットは自分の右手が失われていることに気がついていない。
ツバサの迅速の剣がシャルロットの右手を切断したが、殆どの龍神族には見えていなかった。
「勝負あり! 勝者! ツバサ・フリューゲル!」
ギュンターが大声でツバサの勝利を告げるが、彼にもツバサの動きが見えていなかった。だが、ツバサの攻撃がシャルロットに決まったのは明らか。
龍王国の騎士として、勝敗を告げてシャルロットを守るしかなかった。
「えっ、勝利条件が違わないか? シャルロットは降参してないぞ」
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