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第1章 クソ勇者からはじまる簡単なお仕事
第44話 戦闘、天空族
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フレッチャーたちは地獄の分かれ道と呼ばれているヘル・フォークで、使い魔を捕まえた。使い魔が運んでいた指令書は、暗黒砦に常駐しているギガース魔法師団カトラス団長宛のものであった。
その内容は、ギガース魔法師団とキーハイム城から来る捕縛隊でフレッチャーを挟み撃ちにしようというものなのだが、フレッチャーたちは誰が捕縛に来るのか楽しみにしているようだ。
その時、三人の天空族が突然姿を現したので、フレッチャーたちはとりあえず岩陰に隠れた。
「早く出てこないと、その岩ごと吹き飛ばしますよ」
中央の天空族が岩陰に隠れているフレッチャーたちを威圧する。おそらく、そいつがリーダだろう。
「ちょっと待った! いま出ていくから攻撃しないでくれ!」
フレッチャーが大声で返答する。
「やつらの戦闘レベルを確認した。左から115、191、127だ」
「二人は冒険者で言うとSランクですね。でも、真ん中のやつは熟達した勇者よりも強いな」
「そうかしら? それよりもお師匠さま、わたしたちの戦闘レベルはどのように見えているのかしら?」
「ビアンカが58、ルッツが43、わたしが95だ」
もちろん、戦闘レベルそのものは古代魔法文明の奇跡で変更は不可能だ。ところが、それを鑑定スキルで見るとき、誤った認識をさせることが可能なのだ。それはフレッチャーのような探求者でなければ知られていない事実だ。
「天空族捕縛作戦だ。二人とも解かっているな?」
「「はい、お師匠さま」」
フレッチャーたちはゆっくりと岩陰から天空族の前に姿を現した。
「素直でよろしい。早速ですが、先程使い魔を落としたのはあなた達ですね?」
「そうだが、なにか問題でも?」
「問題と言うより、内容を知りたいので教えてもらえませんか?」
いつも威圧的な態度の天空族が、なぜか丁寧な訊いてくる。何かウラがあるのだろうか? それとも天空族の個性によるものだろうか?
「その前に名乗ってもらえないか? あなたたちは誰だ?」
「なんだと、人間風情が!」
左の天空族が怒鳴る。
「落ち着きなさい、アブダール。品格を疑われますよ」
「も、申し訳ございません、カルマンさま」
――カルマンだと? 聞いたことがある名だ。
天空族は自分たちがミストガルの支配者であると自認している。
彼らは大陸や地区に分けて、それぞれ管理者を設け、受け持ち地区を常に監視していることからも、彼らが自分たちを支配者だと認識していることが窺い知れる。
「わたしの名は煉獄のカルマン。暗黒大陸を守護する天空族です」
クックックと、ビアンカ姉弟が息を殺して笑いだす。
「自分のこと煉獄だってさ」
「煉獄なのに寒いわね」
「姉さんそれ、クックック……」
「二人とも静かにしろ」
「「ごめんなさい」」
二人が静かになったのを見てから、フレッチャーは返答した。
「暗黒大陸の守護者さまでしたか。わたしの名はフレッチャーと申します。見ての通りの商人です。帝国へ行商途中でございます」
「お前のどこが商人だ! 愚弄するな!」
どうやらアブダールは気が短いらしい。
「そう言われても困りますね。どう説明したらよいやら」
「戦闘レベルが95の商人が居るはずないだろう。お前たちの目的はなんだ!」
フレッチャーたちの戦闘レベル偽装がうまく効いているらしい。
「アブダール! ちょっと黙りなさい!」
「はっ、カルマンさま」
カルマンの一括でアブダールはしゅんとなった。彼らの主従関係はかなり強力らしい。
「それよりも、使い魔の持っていた手紙にはなんと書いてあったのか教えてください」
さすがにカルマンも苛ついてきたようだ。眉間に皺が寄っている。
「ああ、指令書の内容か。単純なことさ」
「なんだと!」
カルマンが怒鳴る。
「お前たちを捕縛しろと書いてあった」
フレッチャーの言葉を切っ掛けに、天空族たちの魔力が一気に高まる。
「斬空波!」カルマンが風魔法を放つ。
「火炎弾!」それと同時にアブダールが火魔法で支援する。
風魔法と火魔法の相性はよい。予め決められた攻撃方法かもしれない。
一方、フレッチャーは彼らの攻撃が到達する前に魔法障壁を発動していた。
天空族とフレッチャーたちの間で激しい爆音が轟く。
「ビアンカ、今だ!」
「了解、お師匠さま!」
フレッチャーの合図でビアンカは両手を地面につけて捕縛魔法を放った。
天空族の足元から植物の蔓のようなものが何本も伸びてきて、彼らの足から絡まっていく。これは辺境伯の娘であるジュリエッタがツバサを捕縛したときに使ったのと同じ捕縛魔法だ。
「しまった、空へ逃げろ!」
天空族は風魔法で蔓を切り飛ばしながら上空へ逃げようとする。
「させるか! 光子矢!」
ルッツが放った光の矢が三人を襲う。
カルマンは咄嗟に魔法障壁を発動したが、強度が弱く、光子矢《フォトンアロー》が胸に突き刺さった。
残る二人は蔓から逃れるのに気を取られ、無防備なまま光子矢《フォトンアロー》が貫通した。
「油断大敵よ! 火炎弾!」
ビアンカが追い打ちをかけ、力が尽きた三人は地面に貼り付けられた。
「弱すぎるわよ……」
「手応えがないな。でも、真ん中のやつは少しできるな」
「ふたりとも、完全に息の根を止めるまで、敵を過小評価してはいけないぞ」
「「ごめんなさい、お師匠さま」」
ビアンカ姉弟は双子なので、謝るのも息がぴったりだ。
「フッフッフ。早速だが、天空族を調べるぞ」
フレッチャーの目に狂気にも似た光が宿ったが、いつものことなのでビアンカ姉弟は気にしなかった――
【後書き】
執筆する時間が取れませんでした。
次回は「フレッチャーはマッドサイエンティスト?」のような内容になるかも……。
その内容は、ギガース魔法師団とキーハイム城から来る捕縛隊でフレッチャーを挟み撃ちにしようというものなのだが、フレッチャーたちは誰が捕縛に来るのか楽しみにしているようだ。
その時、三人の天空族が突然姿を現したので、フレッチャーたちはとりあえず岩陰に隠れた。
「早く出てこないと、その岩ごと吹き飛ばしますよ」
中央の天空族が岩陰に隠れているフレッチャーたちを威圧する。おそらく、そいつがリーダだろう。
「ちょっと待った! いま出ていくから攻撃しないでくれ!」
フレッチャーが大声で返答する。
「やつらの戦闘レベルを確認した。左から115、191、127だ」
「二人は冒険者で言うとSランクですね。でも、真ん中のやつは熟達した勇者よりも強いな」
「そうかしら? それよりもお師匠さま、わたしたちの戦闘レベルはどのように見えているのかしら?」
「ビアンカが58、ルッツが43、わたしが95だ」
もちろん、戦闘レベルそのものは古代魔法文明の奇跡で変更は不可能だ。ところが、それを鑑定スキルで見るとき、誤った認識をさせることが可能なのだ。それはフレッチャーのような探求者でなければ知られていない事実だ。
「天空族捕縛作戦だ。二人とも解かっているな?」
「「はい、お師匠さま」」
フレッチャーたちはゆっくりと岩陰から天空族の前に姿を現した。
「素直でよろしい。早速ですが、先程使い魔を落としたのはあなた達ですね?」
「そうだが、なにか問題でも?」
「問題と言うより、内容を知りたいので教えてもらえませんか?」
いつも威圧的な態度の天空族が、なぜか丁寧な訊いてくる。何かウラがあるのだろうか? それとも天空族の個性によるものだろうか?
「その前に名乗ってもらえないか? あなたたちは誰だ?」
「なんだと、人間風情が!」
左の天空族が怒鳴る。
「落ち着きなさい、アブダール。品格を疑われますよ」
「も、申し訳ございません、カルマンさま」
――カルマンだと? 聞いたことがある名だ。
天空族は自分たちがミストガルの支配者であると自認している。
彼らは大陸や地区に分けて、それぞれ管理者を設け、受け持ち地区を常に監視していることからも、彼らが自分たちを支配者だと認識していることが窺い知れる。
「わたしの名は煉獄のカルマン。暗黒大陸を守護する天空族です」
クックックと、ビアンカ姉弟が息を殺して笑いだす。
「自分のこと煉獄だってさ」
「煉獄なのに寒いわね」
「姉さんそれ、クックック……」
「二人とも静かにしろ」
「「ごめんなさい」」
二人が静かになったのを見てから、フレッチャーは返答した。
「暗黒大陸の守護者さまでしたか。わたしの名はフレッチャーと申します。見ての通りの商人です。帝国へ行商途中でございます」
「お前のどこが商人だ! 愚弄するな!」
どうやらアブダールは気が短いらしい。
「そう言われても困りますね。どう説明したらよいやら」
「戦闘レベルが95の商人が居るはずないだろう。お前たちの目的はなんだ!」
フレッチャーたちの戦闘レベル偽装がうまく効いているらしい。
「アブダール! ちょっと黙りなさい!」
「はっ、カルマンさま」
カルマンの一括でアブダールはしゅんとなった。彼らの主従関係はかなり強力らしい。
「それよりも、使い魔の持っていた手紙にはなんと書いてあったのか教えてください」
さすがにカルマンも苛ついてきたようだ。眉間に皺が寄っている。
「ああ、指令書の内容か。単純なことさ」
「なんだと!」
カルマンが怒鳴る。
「お前たちを捕縛しろと書いてあった」
フレッチャーの言葉を切っ掛けに、天空族たちの魔力が一気に高まる。
「斬空波!」カルマンが風魔法を放つ。
「火炎弾!」それと同時にアブダールが火魔法で支援する。
風魔法と火魔法の相性はよい。予め決められた攻撃方法かもしれない。
一方、フレッチャーは彼らの攻撃が到達する前に魔法障壁を発動していた。
天空族とフレッチャーたちの間で激しい爆音が轟く。
「ビアンカ、今だ!」
「了解、お師匠さま!」
フレッチャーの合図でビアンカは両手を地面につけて捕縛魔法を放った。
天空族の足元から植物の蔓のようなものが何本も伸びてきて、彼らの足から絡まっていく。これは辺境伯の娘であるジュリエッタがツバサを捕縛したときに使ったのと同じ捕縛魔法だ。
「しまった、空へ逃げろ!」
天空族は風魔法で蔓を切り飛ばしながら上空へ逃げようとする。
「させるか! 光子矢!」
ルッツが放った光の矢が三人を襲う。
カルマンは咄嗟に魔法障壁を発動したが、強度が弱く、光子矢《フォトンアロー》が胸に突き刺さった。
残る二人は蔓から逃れるのに気を取られ、無防備なまま光子矢《フォトンアロー》が貫通した。
「油断大敵よ! 火炎弾!」
ビアンカが追い打ちをかけ、力が尽きた三人は地面に貼り付けられた。
「弱すぎるわよ……」
「手応えがないな。でも、真ん中のやつは少しできるな」
「ふたりとも、完全に息の根を止めるまで、敵を過小評価してはいけないぞ」
「「ごめんなさい、お師匠さま」」
ビアンカ姉弟は双子なので、謝るのも息がぴったりだ。
「フッフッフ。早速だが、天空族を調べるぞ」
フレッチャーの目に狂気にも似た光が宿ったが、いつものことなのでビアンカ姉弟は気にしなかった――
【後書き】
執筆する時間が取れませんでした。
次回は「フレッチャーはマッドサイエンティスト?」のような内容になるかも……。
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