67 / 108
第3章 自由連合同盟都市国家メルキオール 地方城塞都市カイロス編
第67話 盗賊団を壊滅させた後に燻る違和感の件
しおりを挟む
盗賊団を全滅させた後に発生した違和感はいつのまにか消えていた。
しかし、なんかモヤモヤして気持ち悪い。だが、それ以上に、さっさと寝室に戻って休みたい。
それなりの広さの村の中を駆け回った肉体的疲労よりも、精神疲労の方が今回は大きい。18禁G映像はもうお腹一杯です。おかわりはいりません。
『大分精神的に参っているのうご主人』
クロエさんや貴女も見るかね?死体置き場のグロ映像。
一応活動記録として、今回も小型カメラで録画した動画を保存してある。大半が俺の不殺の”しまっちゃうおじさん”コンボで外道な盗賊共をどんどんしまっていく映像だ。
しかし、後半には悪夢になって出てくる死体置き場の18禁G映像もきちんとカメラが納めている。
本当に、「どこのCERO”Z”のVRホラーゲームだよ!?」というレベルのえぐい光景だった。
『……我は遠慮しておくのじゃ』
まぁ、いいけどな。おっ、どうやら野営地に戻ってきたようだな。
『うむ、湯船に浸かってさっさと寝るかの』
「オ帰リナサイマセ、マスター。異常ハアリマセン」
「ああ、ただいまケイロン。ご苦労様」
幼竜形態からメイド幼女形態になったクロエがそう言うと同時に、俺達の到着にいち早く気づいたケイロンが労ってくれた。
「おお、戻ったか。ユウ君」
「お疲れ様です」
ヘリオスさんとヘファイスさんの両名とも起きて待っていてくれたようだ。
「ただいま戻りました。六連団は全員石像にして【空間収納】に入れています。それとは別に分けていますが、囚われていた女性達も同様です。損壊の激しい被害者の遺体は棺に納めるのが精一杯でした。奴らが溜め込んでいた財産も押収しています」
「そうか、ご苦労様。目的地の城塞都市カイロスにある冒険者ギルドに連絡をいれて、明日には冒険者達を派遣して、六連団の根城の調査を行うことになった。詳しいことは明日、カイロスに到着して冒険者ギルドで改めて話そう。今日はもう休んでいいよ」
「ありがとうございます。ではお言葉に甘えてお先に失礼しますね」
『おやすみなさいなのじゃ』
俺はクロエを伴って寝台専用馬車の自分の寝室へ移動した。
■
『ぬっふっふっふ。今夜は久しぶりにご主人を独り占めなのじゃ!』
寝室に入って、2人っきりになったらクロエが身長差から腰に抱きついてきた。メイド服越しにクロエの柔らかい感触が伝わってくる。
そういえば、何やかんやで大所帯になってしまって、クロエと2人きりは本当に久しぶりだな。
まだ挙式してないけれども、暫定嫁も3人……ハーレムを目指してないのに何故だ。
俺にはもうキャパオーバーだよ。低確率で発生するらしい”発情”なんて鬼畜な仕組みが人族にも適用されるこの世界のが悪い。
流石にもう増えないよな……なんかフラグっぽい。大丈夫か?
『またどうでもいいようなことで悩んでおるようじゃな、ご主人』
クロエが苦悩している俺の顔を見あげ、嘆息してそう言った。
そういえば【念話】相手にはある程度思考が漏れてしまうんだったか。
「クロエにとってはどうでもいいことかもしれないが、俺にとっては大切なことなんですけどね」
『不満かの? 我等とて、ご主人のそういう態度は不満じゃ。我等は、我もアスカもメイド長も、納得ずくでご主人の下に来たのにそのような詮無きことで悩んで一緒にいる時間を浪費されるのは不愉快じゃのう』
「ぐっ、それはすまない」
『謝る位なら、態度で示して欲しいものじゃのう』
そう言って、クロエがしなだれかかってきた。
俺はクロエを胸に抱きしめて、唇を重ね、小柄なクロエを抱き上げて、部屋の浴室部へ向かうことにした。
■
「そういえば、飛鳥の幼馴染の脳筋とロリっ子、武と小鈴がオディオ王国と手を切ったんだったか?」
明けて翌朝、復活した飛鳥とベル、ヴァルカさんを加えたフルメンバーで朝食を摂り終え、お茶を飲んで一服しているときに俺はふと思い出したのだが、
「それは本当ですか?」
『しかし、なぜ疑問系なのじゃ?ご主人?』
飛鳥は嬉しそうだ。
しかし、クロエの疑問ももっともなものだ。
なぜか、脳筋とロリっ子が離反した情報をどこで得たかが、頭に残ってない。
「ああ、確かにあの盗賊共の親玉がいる悪趣味な屋敷で、聞いた、はず、なんだが……??」
おかしい。たしかに俺は、2人がオディオ王国の駄メン達と離反したのを聞いた。
そのソースは誰からだ……記憶にないな。何故だ? そういえば……、
「クロエ」
『なんじゃ?』
「昨日、盗賊共がいた村の入り口に門番の2人組み以外に誰か他に人はいなかったっけ?」
『ん? なにを言っておるのじゃ、ご主人。あの2人組みの門番以外は誰もあの場にはおらんかったではないか』
どういうことだ? クロエが嘘を言っている様子はない。嘘を言う理由もない。
しかし、このボタンを掛け違えた様な不快な違和感は一体なんだ?
俺の頭には誰か他の人間があの場にいたのを覚えている。けれども、誰だったのかが、霞がかかった様におぼろげになっている。
「あ!」
『どうしたのじゃ、ご主人?』
「昨日のことはカメラが映像と音声を記録しているから、それを確認してみる」
「出発はどうしますか、ご主人様」
席を立った俺にベルが問いかけてきた。
そうだ、まだ俺達はヘリオスさんの護衛依頼の移動中だった。
「みんなの出発準備が出来次第、出発しよう。俺は動画の確認は移動中にするから、カイロスに着いたら教えてくれ、ベル」
「畏まりました」
「私になにかお手伝いできることありませんか?」
ベルが答え、飛鳥が俺に訊いてきた。
「いや、気持ちだけ受け取っておくよ。気持ち悪くなる状態の腐敗死体も映っているからな。飛鳥達は今日は走らないで、運動はストレッチなどに留めておいて、体を休めておいてくれ。とりあえず、訓練は終了だ。クロエは飛鳥のサポートを頼むよ。ケイロンはこれまで同様、道中の警戒をよろしく。ヘリオスさんは馬車の中でゆっくりしてください」
「はい、わかりました。無理はしないでくださいね」
「おお、わかった。あたいはヘファイスと一緒の馬車でゆっくりさせてもらう」
『任せておけ』
「了解シマシタ」
「分かった」
飛鳥、ヴァルカさん、クロエ、ケイロン、ヘリオスさんがそれぞれ応え、ヘファイスさんも席を立ち、移動準備のため解散となった。
「では、よろしく頼むよ」
俺達の様子を見守っていたヘリオスさんも紅茶を飲み終えて、そう言って席を立ち、箱馬車へ向かった。
■
この部分だ。確かに2人組みの門番の盗賊以外にも人がいる……この人物は、あのイーヌ・カマセだったのか。なぜ、俺の記憶で、この女の顔がおぼろげになっていたんだ?
俺は寝室として使っていた寝台馬車の部屋でモバイルPCに動画データをコピーして、動画を視聴している。
確認して1つの疑問が解けたところで、新たな疑問が浮かびあがった。
歳はそれなりに重ねているが、俺はまだボケる歳ではない。頭もどこにも打っていないから、大丈夫のはずだ。
しかも、クロエもこの場にいたのは俺とクロエの会話をカメラのマイクが拾っていたから、単純に俺が健忘症になった訳ではないようだ。
この辺は覚えている光景だな
門番の1人がイーヌに懸想していたが、俺が容赦なく”しまっちゃうおじさん”コンボでもって、仕事をしている様で仕事をしていない門番2人を石像に変えて、【空間収納】にしまう映像を皮切りに、廃れた開拓村の中を静かに素早く移動して、盗賊共を次々に無力化していっている。
そして、屋敷の裏側から入った問題の死体置き場の映像は早送りだ。正視に耐えぬ。
ん? ここから記憶と違っているな。
死体置き場を俺が完全浄化したところで動画の早送りを停めて、通常再生。
この映像にあるイーヌの嬌声なんて聞こえなかったから、俺はそのまま最奥の部屋へ踏み込んだ。けれども、中はもぬけの空だったから、クロエと合流して帰投したのを覚えている。
しかし、カメラの捉えている内容は全く違う。これはどういうことだ?
動画は正気を失って、狂気を見せている駄メンがイーヌの体を貪っているところを【石化】して、【空間収納】に納める光景を映していた。
『勇太! イーヌ! いない?』
『どうしたのですか?スバル?』
すぐにメガネ、次いでアリシアがガウンを羽織って、頬を紅潮させた状態で、駄メンとイーヌがいなくなって、俺が潜んでいる部屋の中に駆け込んできた。
2人共、頭に髪の毛がないのが滑稽だ。
2人の会話が進み、メガネは駄メンとイーヌが既に死んだものと考え、バルタザールが目的地であることを漏らしていた。
『……ええ、そうね。タケシとコスズが離反し、イーヌとユウタまで失ってしまった私達だけではあの忌々しいカイロスを通過するのすら危ういわね』
アリシアが脳筋とロリっ子離反のソースだったか。疑問が氷解して、俺は安堵したのだが、
『では、手筈通りに』
『ええ、次も私達を導いてくださいね救世主様』
『ああ、次はこの轍は踏まない。絶対に”ッ……』
『ぐッ……』
画面の映像は一気に不穏な空気を漂わせて進み、アリシアが駄メンの長剣でメガネの心臓を貫き、そのまま自分の心臓に切っ先を突き立てていた。
なんだこれは? そういう言葉が俺の頭の中で何度も反芻される。
目の前の画面の映像は俺の昨夜の記憶と異なり、駄メンとイーヌの情事の光景と2人を石像にして、【空間収納】に入れているのを映している。その後、駆けつけて来たメガネとアリシアがまるで示し合わせていたかのように、アリシアがメガネを殺し、そのまま自決した。
その場にいた俺も、目の前の信じられない一連の光景に狼狽していたのか、ようやく動きだし、メガネとアリシアの遺体の傷を治して、【空間収納】から棺を取り出し、2人の遺体を其々の棺に納め、【空間収納】に収納していた……収納していた!? それだ!
俺はすぐに【空間収納】に入っている収納物のリストを表示して、駄メンとイーヌの石像とメガネの遺体が入った棺、アリシアの遺体が入った棺を探した。
しかし、それらは空間収納の収納物リストの中に、痕跡すらなく、それぞれの名前を冠したものも何一つ存在しなかった。
しかし、なんかモヤモヤして気持ち悪い。だが、それ以上に、さっさと寝室に戻って休みたい。
それなりの広さの村の中を駆け回った肉体的疲労よりも、精神疲労の方が今回は大きい。18禁G映像はもうお腹一杯です。おかわりはいりません。
『大分精神的に参っているのうご主人』
クロエさんや貴女も見るかね?死体置き場のグロ映像。
一応活動記録として、今回も小型カメラで録画した動画を保存してある。大半が俺の不殺の”しまっちゃうおじさん”コンボで外道な盗賊共をどんどんしまっていく映像だ。
しかし、後半には悪夢になって出てくる死体置き場の18禁G映像もきちんとカメラが納めている。
本当に、「どこのCERO”Z”のVRホラーゲームだよ!?」というレベルのえぐい光景だった。
『……我は遠慮しておくのじゃ』
まぁ、いいけどな。おっ、どうやら野営地に戻ってきたようだな。
『うむ、湯船に浸かってさっさと寝るかの』
「オ帰リナサイマセ、マスター。異常ハアリマセン」
「ああ、ただいまケイロン。ご苦労様」
幼竜形態からメイド幼女形態になったクロエがそう言うと同時に、俺達の到着にいち早く気づいたケイロンが労ってくれた。
「おお、戻ったか。ユウ君」
「お疲れ様です」
ヘリオスさんとヘファイスさんの両名とも起きて待っていてくれたようだ。
「ただいま戻りました。六連団は全員石像にして【空間収納】に入れています。それとは別に分けていますが、囚われていた女性達も同様です。損壊の激しい被害者の遺体は棺に納めるのが精一杯でした。奴らが溜め込んでいた財産も押収しています」
「そうか、ご苦労様。目的地の城塞都市カイロスにある冒険者ギルドに連絡をいれて、明日には冒険者達を派遣して、六連団の根城の調査を行うことになった。詳しいことは明日、カイロスに到着して冒険者ギルドで改めて話そう。今日はもう休んでいいよ」
「ありがとうございます。ではお言葉に甘えてお先に失礼しますね」
『おやすみなさいなのじゃ』
俺はクロエを伴って寝台専用馬車の自分の寝室へ移動した。
■
『ぬっふっふっふ。今夜は久しぶりにご主人を独り占めなのじゃ!』
寝室に入って、2人っきりになったらクロエが身長差から腰に抱きついてきた。メイド服越しにクロエの柔らかい感触が伝わってくる。
そういえば、何やかんやで大所帯になってしまって、クロエと2人きりは本当に久しぶりだな。
まだ挙式してないけれども、暫定嫁も3人……ハーレムを目指してないのに何故だ。
俺にはもうキャパオーバーだよ。低確率で発生するらしい”発情”なんて鬼畜な仕組みが人族にも適用されるこの世界のが悪い。
流石にもう増えないよな……なんかフラグっぽい。大丈夫か?
『またどうでもいいようなことで悩んでおるようじゃな、ご主人』
クロエが苦悩している俺の顔を見あげ、嘆息してそう言った。
そういえば【念話】相手にはある程度思考が漏れてしまうんだったか。
「クロエにとってはどうでもいいことかもしれないが、俺にとっては大切なことなんですけどね」
『不満かの? 我等とて、ご主人のそういう態度は不満じゃ。我等は、我もアスカもメイド長も、納得ずくでご主人の下に来たのにそのような詮無きことで悩んで一緒にいる時間を浪費されるのは不愉快じゃのう』
「ぐっ、それはすまない」
『謝る位なら、態度で示して欲しいものじゃのう』
そう言って、クロエがしなだれかかってきた。
俺はクロエを胸に抱きしめて、唇を重ね、小柄なクロエを抱き上げて、部屋の浴室部へ向かうことにした。
■
「そういえば、飛鳥の幼馴染の脳筋とロリっ子、武と小鈴がオディオ王国と手を切ったんだったか?」
明けて翌朝、復活した飛鳥とベル、ヴァルカさんを加えたフルメンバーで朝食を摂り終え、お茶を飲んで一服しているときに俺はふと思い出したのだが、
「それは本当ですか?」
『しかし、なぜ疑問系なのじゃ?ご主人?』
飛鳥は嬉しそうだ。
しかし、クロエの疑問ももっともなものだ。
なぜか、脳筋とロリっ子が離反した情報をどこで得たかが、頭に残ってない。
「ああ、確かにあの盗賊共の親玉がいる悪趣味な屋敷で、聞いた、はず、なんだが……??」
おかしい。たしかに俺は、2人がオディオ王国の駄メン達と離反したのを聞いた。
そのソースは誰からだ……記憶にないな。何故だ? そういえば……、
「クロエ」
『なんじゃ?』
「昨日、盗賊共がいた村の入り口に門番の2人組み以外に誰か他に人はいなかったっけ?」
『ん? なにを言っておるのじゃ、ご主人。あの2人組みの門番以外は誰もあの場にはおらんかったではないか』
どういうことだ? クロエが嘘を言っている様子はない。嘘を言う理由もない。
しかし、このボタンを掛け違えた様な不快な違和感は一体なんだ?
俺の頭には誰か他の人間があの場にいたのを覚えている。けれども、誰だったのかが、霞がかかった様におぼろげになっている。
「あ!」
『どうしたのじゃ、ご主人?』
「昨日のことはカメラが映像と音声を記録しているから、それを確認してみる」
「出発はどうしますか、ご主人様」
席を立った俺にベルが問いかけてきた。
そうだ、まだ俺達はヘリオスさんの護衛依頼の移動中だった。
「みんなの出発準備が出来次第、出発しよう。俺は動画の確認は移動中にするから、カイロスに着いたら教えてくれ、ベル」
「畏まりました」
「私になにかお手伝いできることありませんか?」
ベルが答え、飛鳥が俺に訊いてきた。
「いや、気持ちだけ受け取っておくよ。気持ち悪くなる状態の腐敗死体も映っているからな。飛鳥達は今日は走らないで、運動はストレッチなどに留めておいて、体を休めておいてくれ。とりあえず、訓練は終了だ。クロエは飛鳥のサポートを頼むよ。ケイロンはこれまで同様、道中の警戒をよろしく。ヘリオスさんは馬車の中でゆっくりしてください」
「はい、わかりました。無理はしないでくださいね」
「おお、わかった。あたいはヘファイスと一緒の馬車でゆっくりさせてもらう」
『任せておけ』
「了解シマシタ」
「分かった」
飛鳥、ヴァルカさん、クロエ、ケイロン、ヘリオスさんがそれぞれ応え、ヘファイスさんも席を立ち、移動準備のため解散となった。
「では、よろしく頼むよ」
俺達の様子を見守っていたヘリオスさんも紅茶を飲み終えて、そう言って席を立ち、箱馬車へ向かった。
■
この部分だ。確かに2人組みの門番の盗賊以外にも人がいる……この人物は、あのイーヌ・カマセだったのか。なぜ、俺の記憶で、この女の顔がおぼろげになっていたんだ?
俺は寝室として使っていた寝台馬車の部屋でモバイルPCに動画データをコピーして、動画を視聴している。
確認して1つの疑問が解けたところで、新たな疑問が浮かびあがった。
歳はそれなりに重ねているが、俺はまだボケる歳ではない。頭もどこにも打っていないから、大丈夫のはずだ。
しかも、クロエもこの場にいたのは俺とクロエの会話をカメラのマイクが拾っていたから、単純に俺が健忘症になった訳ではないようだ。
この辺は覚えている光景だな
門番の1人がイーヌに懸想していたが、俺が容赦なく”しまっちゃうおじさん”コンボでもって、仕事をしている様で仕事をしていない門番2人を石像に変えて、【空間収納】にしまう映像を皮切りに、廃れた開拓村の中を静かに素早く移動して、盗賊共を次々に無力化していっている。
そして、屋敷の裏側から入った問題の死体置き場の映像は早送りだ。正視に耐えぬ。
ん? ここから記憶と違っているな。
死体置き場を俺が完全浄化したところで動画の早送りを停めて、通常再生。
この映像にあるイーヌの嬌声なんて聞こえなかったから、俺はそのまま最奥の部屋へ踏み込んだ。けれども、中はもぬけの空だったから、クロエと合流して帰投したのを覚えている。
しかし、カメラの捉えている内容は全く違う。これはどういうことだ?
動画は正気を失って、狂気を見せている駄メンがイーヌの体を貪っているところを【石化】して、【空間収納】に納める光景を映していた。
『勇太! イーヌ! いない?』
『どうしたのですか?スバル?』
すぐにメガネ、次いでアリシアがガウンを羽織って、頬を紅潮させた状態で、駄メンとイーヌがいなくなって、俺が潜んでいる部屋の中に駆け込んできた。
2人共、頭に髪の毛がないのが滑稽だ。
2人の会話が進み、メガネは駄メンとイーヌが既に死んだものと考え、バルタザールが目的地であることを漏らしていた。
『……ええ、そうね。タケシとコスズが離反し、イーヌとユウタまで失ってしまった私達だけではあの忌々しいカイロスを通過するのすら危ういわね』
アリシアが脳筋とロリっ子離反のソースだったか。疑問が氷解して、俺は安堵したのだが、
『では、手筈通りに』
『ええ、次も私達を導いてくださいね救世主様』
『ああ、次はこの轍は踏まない。絶対に”ッ……』
『ぐッ……』
画面の映像は一気に不穏な空気を漂わせて進み、アリシアが駄メンの長剣でメガネの心臓を貫き、そのまま自分の心臓に切っ先を突き立てていた。
なんだこれは? そういう言葉が俺の頭の中で何度も反芻される。
目の前の画面の映像は俺の昨夜の記憶と異なり、駄メンとイーヌの情事の光景と2人を石像にして、【空間収納】に入れているのを映している。その後、駆けつけて来たメガネとアリシアがまるで示し合わせていたかのように、アリシアがメガネを殺し、そのまま自決した。
その場にいた俺も、目の前の信じられない一連の光景に狼狽していたのか、ようやく動きだし、メガネとアリシアの遺体の傷を治して、【空間収納】から棺を取り出し、2人の遺体を其々の棺に納め、【空間収納】に収納していた……収納していた!? それだ!
俺はすぐに【空間収納】に入っている収納物のリストを表示して、駄メンとイーヌの石像とメガネの遺体が入った棺、アリシアの遺体が入った棺を探した。
しかし、それらは空間収納の収納物リストの中に、痕跡すらなく、それぞれの名前を冠したものも何一つ存在しなかった。
7
あなたにおすすめの小説
勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。
応援本当に有難うございました。
イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。
書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」
から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。
書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。
WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。
この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。
本当にありがとうございました。
【以下あらすじ】
パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった...
ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから...
第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。
何と!『現在3巻まで書籍化されています』
そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。
応援、本当にありがとうございました!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
勇者の隣に住んでいただけの村人の話。
カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。
だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。
その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。
だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…?
才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる