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03 三辺境伯会合。クズい貴族の殺し方
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「かあーっ、おめぇも大変だなヘイ!」
人懐っこい笑顔をした屈強な肉体の兄貴分の男に俺は同情された。
「話は分かりました。こちらも早急に手を打ち、損きりを行いましょう」
「申し訳ありません」
この場にいるもう1人の腰まで長い黒髪を伸ばした女性と見紛うほどの美丈夫の男性にも俺は頭を下げた。
「いいってことよ。ちゃんと補填と慰謝料代わり、クソ面倒な王家との話をヘイがまとめてつけてくれたからな」
「然り、ただ、オッド子爵家から何の連絡もないのは度し難い」
「フンッ、元はと言えば子爵の野郎も件の公爵と同罪だな。俺の可愛い部下共の努力を台無しにしやがりやがって!」
大柄の男、王国西の辺境伯、ファー・パイフーが苦笑いの後に激怒し、対照的な美丈夫王国北の辺境伯、ユ・ザンウは冷徹に言い放った。
四辺境伯は一般的な王国の名前の付け方と異なる独特の言葉で付けられている。
このこともあって、中央の法衣貴族達は俺達四辺境伯を侮っているのだが、外にそれを出そうものなら容赦なく地獄を見るはめになる。
何故なら、西のパイフー家は代々王国最大規模の商人ギルドの総元締めを務め、大部分の商人を牛耳っている。
同じく北のザンウ家は薬草や茶葉の国内最大の生産者。そして、錬金術師ギルドの長で回復薬と奥方達が喉から手が出るほど欲している美容品の生産者だ。
東のセイロン家は海産物と塩の生産流通、海運ギルドの管理。そして、表沙汰にはされないが、王国全土の諜報もしている。
南のスザク家は農作物の生産と流通、鉱山資源の発掘。農作物の王国内での供給量は全体に6割を超えている。
これらに加えて、四辺境伯家は各々の家のある方角から侵攻してくる脅威の迎撃を担当している。
西と北の辺境伯家の現当主との年齢差はおよそ叔父~6歳離れた兄といった感じだ。
そして、四辺境伯は代々国王公認の政略結婚をそれぞれ行っていた。
これに関して王家も仲間に加わろうとしたのが、例外的な俺とアリシアの婚姻だったのだ。
しかし、ケイ公爵の所為でその目論見は台無しになった。
「落ち着いてください、ファー。本件の主な被害者のヘイの提案は貴方も飲むのでしょう?」
ユ辺境伯がファー辺境伯をそう宥める。
「当然だ。俺のギルド内に今回のメン公爵とオッド子爵の横暴は徹底周知している。そっちもそうなんだろう、ユ?」
泣く子が更に大泣きしそうな獰猛な笑みを浮かべるファー辺境伯。
「ええ、勿論です。メン公爵家とオッド子爵家への薬草と茶葉、美容品の輸出は段階的に制限をかけ、最終的には停止します」
中央貴族の婦人、婦女子を魅了する爽やかな笑みで平然と黒いことを言うユ辺境伯。
貴族が生活の維持をできるのはそれらを用意する商人のおかげだ。
今回の件で、その商人を蔑ろにした両貴族家は質の高いものから徐々に用意できなくなり、取引もなくなって、最終的にギルドに所属していない悪質なモグリの商人・錬金術師と割に合わない取引をするしかなくなる。
茶葉に関しては貴族として開く茶会から社交界の風評に影響を与える。高品質、季節物、流行物こういった物を用立てられなくなると社交界での評価は下がり、醜聞が飛び交う様になるのだ。
メン公爵家とオッド子爵家の名実共に貴族としての死は避けられない。
「それにしても、お前の婚約者だったアリシアって女は随分と薄情 な奴だな」
呆れた様子でファー辺境伯が言う。
「たしかにヘイとの政略結婚がどれほど重要ことか認識していればこのような大事にはならなかったのでは?」
ユ辺境伯も疑問を俺に向けてきた。
「彼女の真意は問いただしていないのでわかりかねますが、調べたところ、元凶はメン公爵とオッド子爵で間違いないです。メン公爵は女性関係、オッド子爵は借金返済と結納金に目が眩んだといったところですね」
俺の言葉に2人は心底呆れた顔をした。
「おい、オッド子爵は本物の馬鹿か?」
「おや、ファーは知らないのですか? 現オッド子爵の愚物ぶりを」
そう言ってユ辺境伯はオッド子爵の調書を取り出して俺とファー辺境伯に渡した。
子爵の公務は嫡子でアリシアの兄に任せて自分は飲む・打つ・買うの道楽三昧。
流石に娼館通いはしていないが、悪い面が先々代国王から隔世遺伝してしまったようだ。
人懐っこい笑顔をした屈強な肉体の兄貴分の男に俺は同情された。
「話は分かりました。こちらも早急に手を打ち、損きりを行いましょう」
「申し訳ありません」
この場にいるもう1人の腰まで長い黒髪を伸ばした女性と見紛うほどの美丈夫の男性にも俺は頭を下げた。
「いいってことよ。ちゃんと補填と慰謝料代わり、クソ面倒な王家との話をヘイがまとめてつけてくれたからな」
「然り、ただ、オッド子爵家から何の連絡もないのは度し難い」
「フンッ、元はと言えば子爵の野郎も件の公爵と同罪だな。俺の可愛い部下共の努力を台無しにしやがりやがって!」
大柄の男、王国西の辺境伯、ファー・パイフーが苦笑いの後に激怒し、対照的な美丈夫王国北の辺境伯、ユ・ザンウは冷徹に言い放った。
四辺境伯は一般的な王国の名前の付け方と異なる独特の言葉で付けられている。
このこともあって、中央の法衣貴族達は俺達四辺境伯を侮っているのだが、外にそれを出そうものなら容赦なく地獄を見るはめになる。
何故なら、西のパイフー家は代々王国最大規模の商人ギルドの総元締めを務め、大部分の商人を牛耳っている。
同じく北のザンウ家は薬草や茶葉の国内最大の生産者。そして、錬金術師ギルドの長で回復薬と奥方達が喉から手が出るほど欲している美容品の生産者だ。
東のセイロン家は海産物と塩の生産流通、海運ギルドの管理。そして、表沙汰にはされないが、王国全土の諜報もしている。
南のスザク家は農作物の生産と流通、鉱山資源の発掘。農作物の王国内での供給量は全体に6割を超えている。
これらに加えて、四辺境伯家は各々の家のある方角から侵攻してくる脅威の迎撃を担当している。
西と北の辺境伯家の現当主との年齢差はおよそ叔父~6歳離れた兄といった感じだ。
そして、四辺境伯は代々国王公認の政略結婚をそれぞれ行っていた。
これに関して王家も仲間に加わろうとしたのが、例外的な俺とアリシアの婚姻だったのだ。
しかし、ケイ公爵の所為でその目論見は台無しになった。
「落ち着いてください、ファー。本件の主な被害者のヘイの提案は貴方も飲むのでしょう?」
ユ辺境伯がファー辺境伯をそう宥める。
「当然だ。俺のギルド内に今回のメン公爵とオッド子爵の横暴は徹底周知している。そっちもそうなんだろう、ユ?」
泣く子が更に大泣きしそうな獰猛な笑みを浮かべるファー辺境伯。
「ええ、勿論です。メン公爵家とオッド子爵家への薬草と茶葉、美容品の輸出は段階的に制限をかけ、最終的には停止します」
中央貴族の婦人、婦女子を魅了する爽やかな笑みで平然と黒いことを言うユ辺境伯。
貴族が生活の維持をできるのはそれらを用意する商人のおかげだ。
今回の件で、その商人を蔑ろにした両貴族家は質の高いものから徐々に用意できなくなり、取引もなくなって、最終的にギルドに所属していない悪質なモグリの商人・錬金術師と割に合わない取引をするしかなくなる。
茶葉に関しては貴族として開く茶会から社交界の風評に影響を与える。高品質、季節物、流行物こういった物を用立てられなくなると社交界での評価は下がり、醜聞が飛び交う様になるのだ。
メン公爵家とオッド子爵家の名実共に貴族としての死は避けられない。
「それにしても、お前の婚約者だったアリシアって女は随分と薄情 な奴だな」
呆れた様子でファー辺境伯が言う。
「たしかにヘイとの政略結婚がどれほど重要ことか認識していればこのような大事にはならなかったのでは?」
ユ辺境伯も疑問を俺に向けてきた。
「彼女の真意は問いただしていないのでわかりかねますが、調べたところ、元凶はメン公爵とオッド子爵で間違いないです。メン公爵は女性関係、オッド子爵は借金返済と結納金に目が眩んだといったところですね」
俺の言葉に2人は心底呆れた顔をした。
「おい、オッド子爵は本物の馬鹿か?」
「おや、ファーは知らないのですか? 現オッド子爵の愚物ぶりを」
そう言ってユ辺境伯はオッド子爵の調書を取り出して俺とファー辺境伯に渡した。
子爵の公務は嫡子でアリシアの兄に任せて自分は飲む・打つ・買うの道楽三昧。
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