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第1章 王国の北方、アウロラ公爵領で家庭教師生活
第5話 アウロラ公爵との対面と俺が用意した土産
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「おう、来たか。入れ」
入室許可を得た俺は扉を開けれくれたセバスチャンさんに促されてアウロラ公爵の執務室の中へ入った。
部屋の中で俺を立って待っていたのは、がっしりとした鍛えあげられた筋肉質の体躯をもつ偉丈夫。ようやく身長が170cmになった俺よりも頭1つ分背の高い手入れの行き届いた顎鬚が驚くほど似合っている最低限の装飾が施された貴族服を身に纏った男性だった。
「お初にお目にかかりますアウロラ公爵閣下。師である王立魔術大学教授より仕事を承りましたディーハルト・アレスターです」
「ああ、私が陛下よりこのアウロラ公爵領を任されている当主のアイザック・アウロラだ。初めまして、というはずなんだが、君の話は教授からいろいろなことを散々聞かされていてな。悪いが、私は全くそんな気がしないのだ。なぁ、セバス」
「はい。私もディーハルト様の様々なお話を伺っております。ディーハルト様はそのお話と違わぬお方のようでした」
「ほう……」
俺の挨拶に気さくに応えてくれた公爵閣下は教授の名を出して苦笑いを浮かべた。話を振られて閣下の傍に控えているセバスチャンさんもそう相槌を打った。
その2人の様子から、あの教授は俺のどんな話を閣下にしたのか一抹の不安が俺の中に湧いてきた。おそらく、フレアに巻き込まれた際の失敗談に盛大に尾鰭をつけたに違いない。やはり王都に戻ったら、教え子裁判で教授は断罪せねばなるまい。
「こちらをどうぞ。今回のお話をいただき、用意させていただいた品です」
そう言って、俺は興味深くこちらを見つめる2人の目の前に1つの袋の中から更に4つの袋を浮遊魔術で浮かべつつ取り出した。
「こちらは閣下に献上するために特別に用意したアルコール度数が高いきつめのお酒で、こちらは奥方様とお嬢様に用意した乳液と洗髪剤、保護剤。これは男性使用人の方々用に用意したお酒で、こちらはメイドさん達女性の使用人の方々に用意した奥方様達のとは異なる乳液と洗髪剤、保護剤です。乳液と洗髪剤、保護剤には用途を記した紙を添付しています」
1つずつ説明してセバスチャンさんに手渡した。セバスチャンさんは受け取った袋を次々に空いていた机に置いていった。
「これは……すまんな」
「いえ、僕が勝手に用意したものですので、お気になさらず」
公爵一家に用意したものと使用人達に用意したものは内容はほぼ同じだが、質は違う。当然、公爵一家のものの方が質は上だ。更に、公爵のために用意した酒は俺が保有する固有スキルの【異世界購買】で購入した地球世界の日本品質のもの。奥方達のために用意したも乳液と洗髪剤、保護剤は王家にも購入されている現状で最高品質のものだ。
【異世界購買】ではいろいろな地球世界のものをこちらの世界の貨幣で購入できる。しかし、購入価格は安い物でも5倍以上。中には100倍以上の値段のものもある。そのため、気軽に使えるスキルではない。
アウロラ公爵は酒に強く、酒豪であるという話を教授と同じ公爵であるウェルダー公爵のアレックス様から聞いていたので、用意した酒はアルコール度数40度のウォッカ。スウェーデンが誇る、世界No.1のプレミアムウオッカと言われている「アブソルート ウォッカ」を用意した。
酒を土産として用意をするときに、96度のスピリタスという選択肢が頭を過ぎったが、初対面の相手には性質の悪い悪ふざけが過ぎるので、その考えは没にした。
乳液と洗髪剤、保護剤は元々この世界にはなかった。俺が子爵領にいるときから個人的に作って研究を重ねたものだ。自作のものの品質は当然、地球世界の日本品質に劣る。洗髪剤と保護剤を作り始めたきっかけは石鹸で洗うだけだったため、自分はもとより、美女美少女である義母と義妹の髪の毛の痛みが気になったからだった。
王立学園に入学後、下宿生活を始めたときに下宿に屋敷を抜け出してきた不機嫌なフレアを泊める羽目になった。俺の下宿は大家に許可をとって作った自作の浴室がある。そのときに自作の洗髪剤と保護剤がフレアの目にとまって、彼女に使われたというか、俺が実演で湯を溜めた桶と長椅子を使って、仰向けになった彼女の髪の毛を洗わされた。
翌日ご機嫌になって帰宅したフレアは彼女の母親で、ウェルダー公爵夫人であるメリッサさんに問いただされた流れで洗髪剤と保護剤の存在が伝わり、その日の内にフレアとメリッサさん付きであるメイド長と共に俺の下宿にメリッサさんが来て、俺が作った洗髪剤と保護剤を試用され、絶賛された。まさか俺が説明のためにメリッサさんの髪の毛を洗うことになるとは思わなかった。その後、不機嫌になったフレアをなだめるのがまた大変だった。
この世界に石鹸はあったものの、質はそれほどよくないのに高級品。髪の毛を洗う洗髪剤はなく、髪の毛も平民は水洗いだけであまり汚れが落ちず、貴族は石鹸で洗っていたため、綺麗にしたはずの洗髪後の痛みが酷い。
メリッサさんからウェルダー公爵の後援を得ることになり、俺は通学の傍らで本格的な洗髪剤と保護剤の開発、試行錯誤を繰り返し、品質を向上させて、王都とウェルダー公爵領、俺の実家のアレスター子爵領の市場に流通するようになった。諸々の問題がまだあって、洗髪剤と保護剤は前述の3箇所以外の領には流通していないので土産としては十分だろう。
「セバス……」
「はい、安全性には全く問題ありません」
どうやら【鑑定】スキル持ちであるセバスチャンさんが俺が渡した土産を検めた様だ。
「閣下に献上したお酒は僕の秘蔵の品で、入手は困難です。しかし、奥方様達に用意した物はウェルダー公爵家が主に取り扱っている商品ですので、継続のご利用を希望される場合はウェルダー公爵か公爵夫人にご相談ください」
「アブソルート ウォッカ」はこちらの世界で飲酒が許される年齢になってから、自分用に数本確保しているけれども、こちらの世界で買うにはとてもお高い。安易に譲るつもりは俺にはない。
乳液と洗髪剤、保護剤の流通はウェルダー公爵家、主にメリッサさんが中心になっている。俺は販売窓口は担当していないから、ウェルダー公爵家への丸投げは必定。
「そうか、わかった。それで君に任せる仕事の話だが、」
「閣下、お話の腰を折るようで大変申し訳ありませんが、僕は教授からはシャルロットお嬢様の王立学園の試験勉強をみるとしか知らされていません」
「なに! 教授め、今度うちに来たときには久々に模擬戦の相手をさせてぶちのめしてやる!!」
目の前の公爵閣下は青筋を立てて、そう言い、
「そのときは私も教授が逃走できない様……いえ、旦那様が心置きなく殺れる様、お手伝いいたします」
とセバスチャンさんも顔は笑顔だが、目が笑っていない表情で言った。
「是非、そのときは念入りにお願いします……教授から今回のお話を聞いたときに違和感を感じました。普通に本格的な王立学園の入試対策の勉強を今から始められるのであれば、まず間に合いません。シャルロット様にはなにかご事情があるのでしょうか?」
「……口さがない王都の貴族共が我が末娘のシャルロットのことを「アウロラの忌み子」と悪し様に言うことを君はどこかで耳にしたことがあるかもしれない。シャルは13歳になった今でも原因は不明だが、魔術が一切使えないのだ。無論、セバスは当然として、多くの魔術師、君の師である教授にも診てもらったが、分かったことはシャルが秘めている魔力量は私を超えていることだけ。魔術が使えない原因は分からずじまいだ……」
アイザック・アウロラ公爵閣下は沈痛な表情を浮かべ、言葉を続けた。
「君に任せる仕事はシャルロットを王立学園の入学試験1月前までに魔術を使える様にすることだ」
入室許可を得た俺は扉を開けれくれたセバスチャンさんに促されてアウロラ公爵の執務室の中へ入った。
部屋の中で俺を立って待っていたのは、がっしりとした鍛えあげられた筋肉質の体躯をもつ偉丈夫。ようやく身長が170cmになった俺よりも頭1つ分背の高い手入れの行き届いた顎鬚が驚くほど似合っている最低限の装飾が施された貴族服を身に纏った男性だった。
「お初にお目にかかりますアウロラ公爵閣下。師である王立魔術大学教授より仕事を承りましたディーハルト・アレスターです」
「ああ、私が陛下よりこのアウロラ公爵領を任されている当主のアイザック・アウロラだ。初めまして、というはずなんだが、君の話は教授からいろいろなことを散々聞かされていてな。悪いが、私は全くそんな気がしないのだ。なぁ、セバス」
「はい。私もディーハルト様の様々なお話を伺っております。ディーハルト様はそのお話と違わぬお方のようでした」
「ほう……」
俺の挨拶に気さくに応えてくれた公爵閣下は教授の名を出して苦笑いを浮かべた。話を振られて閣下の傍に控えているセバスチャンさんもそう相槌を打った。
その2人の様子から、あの教授は俺のどんな話を閣下にしたのか一抹の不安が俺の中に湧いてきた。おそらく、フレアに巻き込まれた際の失敗談に盛大に尾鰭をつけたに違いない。やはり王都に戻ったら、教え子裁判で教授は断罪せねばなるまい。
「こちらをどうぞ。今回のお話をいただき、用意させていただいた品です」
そう言って、俺は興味深くこちらを見つめる2人の目の前に1つの袋の中から更に4つの袋を浮遊魔術で浮かべつつ取り出した。
「こちらは閣下に献上するために特別に用意したアルコール度数が高いきつめのお酒で、こちらは奥方様とお嬢様に用意した乳液と洗髪剤、保護剤。これは男性使用人の方々用に用意したお酒で、こちらはメイドさん達女性の使用人の方々に用意した奥方様達のとは異なる乳液と洗髪剤、保護剤です。乳液と洗髪剤、保護剤には用途を記した紙を添付しています」
1つずつ説明してセバスチャンさんに手渡した。セバスチャンさんは受け取った袋を次々に空いていた机に置いていった。
「これは……すまんな」
「いえ、僕が勝手に用意したものですので、お気になさらず」
公爵一家に用意したものと使用人達に用意したものは内容はほぼ同じだが、質は違う。当然、公爵一家のものの方が質は上だ。更に、公爵のために用意した酒は俺が保有する固有スキルの【異世界購買】で購入した地球世界の日本品質のもの。奥方達のために用意したも乳液と洗髪剤、保護剤は王家にも購入されている現状で最高品質のものだ。
【異世界購買】ではいろいろな地球世界のものをこちらの世界の貨幣で購入できる。しかし、購入価格は安い物でも5倍以上。中には100倍以上の値段のものもある。そのため、気軽に使えるスキルではない。
アウロラ公爵は酒に強く、酒豪であるという話を教授と同じ公爵であるウェルダー公爵のアレックス様から聞いていたので、用意した酒はアルコール度数40度のウォッカ。スウェーデンが誇る、世界No.1のプレミアムウオッカと言われている「アブソルート ウォッカ」を用意した。
酒を土産として用意をするときに、96度のスピリタスという選択肢が頭を過ぎったが、初対面の相手には性質の悪い悪ふざけが過ぎるので、その考えは没にした。
乳液と洗髪剤、保護剤は元々この世界にはなかった。俺が子爵領にいるときから個人的に作って研究を重ねたものだ。自作のものの品質は当然、地球世界の日本品質に劣る。洗髪剤と保護剤を作り始めたきっかけは石鹸で洗うだけだったため、自分はもとより、美女美少女である義母と義妹の髪の毛の痛みが気になったからだった。
王立学園に入学後、下宿生活を始めたときに下宿に屋敷を抜け出してきた不機嫌なフレアを泊める羽目になった。俺の下宿は大家に許可をとって作った自作の浴室がある。そのときに自作の洗髪剤と保護剤がフレアの目にとまって、彼女に使われたというか、俺が実演で湯を溜めた桶と長椅子を使って、仰向けになった彼女の髪の毛を洗わされた。
翌日ご機嫌になって帰宅したフレアは彼女の母親で、ウェルダー公爵夫人であるメリッサさんに問いただされた流れで洗髪剤と保護剤の存在が伝わり、その日の内にフレアとメリッサさん付きであるメイド長と共に俺の下宿にメリッサさんが来て、俺が作った洗髪剤と保護剤を試用され、絶賛された。まさか俺が説明のためにメリッサさんの髪の毛を洗うことになるとは思わなかった。その後、不機嫌になったフレアをなだめるのがまた大変だった。
この世界に石鹸はあったものの、質はそれほどよくないのに高級品。髪の毛を洗う洗髪剤はなく、髪の毛も平民は水洗いだけであまり汚れが落ちず、貴族は石鹸で洗っていたため、綺麗にしたはずの洗髪後の痛みが酷い。
メリッサさんからウェルダー公爵の後援を得ることになり、俺は通学の傍らで本格的な洗髪剤と保護剤の開発、試行錯誤を繰り返し、品質を向上させて、王都とウェルダー公爵領、俺の実家のアレスター子爵領の市場に流通するようになった。諸々の問題がまだあって、洗髪剤と保護剤は前述の3箇所以外の領には流通していないので土産としては十分だろう。
「セバス……」
「はい、安全性には全く問題ありません」
どうやら【鑑定】スキル持ちであるセバスチャンさんが俺が渡した土産を検めた様だ。
「閣下に献上したお酒は僕の秘蔵の品で、入手は困難です。しかし、奥方様達に用意した物はウェルダー公爵家が主に取り扱っている商品ですので、継続のご利用を希望される場合はウェルダー公爵か公爵夫人にご相談ください」
「アブソルート ウォッカ」はこちらの世界で飲酒が許される年齢になってから、自分用に数本確保しているけれども、こちらの世界で買うにはとてもお高い。安易に譲るつもりは俺にはない。
乳液と洗髪剤、保護剤の流通はウェルダー公爵家、主にメリッサさんが中心になっている。俺は販売窓口は担当していないから、ウェルダー公爵家への丸投げは必定。
「そうか、わかった。それで君に任せる仕事の話だが、」
「閣下、お話の腰を折るようで大変申し訳ありませんが、僕は教授からはシャルロットお嬢様の王立学園の試験勉強をみるとしか知らされていません」
「なに! 教授め、今度うちに来たときには久々に模擬戦の相手をさせてぶちのめしてやる!!」
目の前の公爵閣下は青筋を立てて、そう言い、
「そのときは私も教授が逃走できない様……いえ、旦那様が心置きなく殺れる様、お手伝いいたします」
とセバスチャンさんも顔は笑顔だが、目が笑っていない表情で言った。
「是非、そのときは念入りにお願いします……教授から今回のお話を聞いたときに違和感を感じました。普通に本格的な王立学園の入試対策の勉強を今から始められるのであれば、まず間に合いません。シャルロット様にはなにかご事情があるのでしょうか?」
「……口さがない王都の貴族共が我が末娘のシャルロットのことを「アウロラの忌み子」と悪し様に言うことを君はどこかで耳にしたことがあるかもしれない。シャルは13歳になった今でも原因は不明だが、魔術が一切使えないのだ。無論、セバスは当然として、多くの魔術師、君の師である教授にも診てもらったが、分かったことはシャルが秘めている魔力量は私を超えていることだけ。魔術が使えない原因は分からずじまいだ……」
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