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第1章 王国の北方、アウロラ公爵領で家庭教師生活
第13話 この世界の魔術とは
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「ディー先生、わたしに悪いところがあったら、たとえわたしが傷つく内容でもきちんと言ってください。嘘は禁止です」
返却した模試の答案の見直しを終えたシャル様が唐突に思いつめた表情でそう言った。
「わかりました。シャル様にはきちんとお伝えしましょう」
「そっ、それから、きちんと正解できたら褒めてきゅださい。レティばかりずるいです。ちゃっ、ちゃんと! わっ、わたしも頭を撫でてください!」
俺の返事の後に間髪入れずに顔を赤くしたシャル様は噛みながら要求してきた。
しかも、俺がレティさんのいいところを褒めたことに不満を付け加えてだ。
俺自身としては別に贔屓をしているつもりはない。
俺に褒められて勉強を頑張って王立学園に入学した一昨年の義妹の身長がちょうどレティさんと同じ位だったため、そのときの癖で褒める事がある毎に、撫で易い位置にあるレティさんの頭を撫でてしまっている。シャル様もきちんといい点は褒めているのだが、シャル様ご本人はそう思われていない様だ。
そして、その当のレティさんは俺に頭を撫でられてから何故か放心状態になっている。
「僕がシャル様の頭を撫でるのは流石に不敬では?」
「わたしはディー先生に教えてもらっている立場なので、かまいません! 先生と教え子の関係に生まれで決まる様な身分は持ち出さないでください。わたしは先生に褒められて不服に思うことは絶対にありません!!」
なんでこの子は俺に対して、こうもアグレッシブなのか甚だ疑問だが本人のモチベーションに繋がるならば否はない。
「では失礼します。シャル様、よくできました。筆記試験に関しては問題ありません。シャル様のおかげで僕の授業では実技に比重を置けます。ありがとうございます」
そう言って、俺は本人のご希望に沿ってシャル様の頭を撫でた。
「ふふふっ……えへへ……」
シャル様は俺に撫でられて、嬉しそうに表情を崩された。その表情は事情を知らなければ俺は憲兵…じゃなかった公爵領の治安を護っている騎士団の方々に連行されるのではないかと背筋に冷や汗が出るほどのものだった。
「それでは、授業を始めますが、お2人共実技は魔術を選択するということでいいですか?」
「「はい」」
一頻り撫でてシャル様が満足されてからようやく授業の開始となった。
「わかりました。授業は毎回軽く座学をやった後に実践の実技に入ります。さて、【魔術】とはなんでしょうか、シャル様?」
「むぅ……やっぱりディー先生、わたしに様付けも止めてください。わたしは教授される立場ですから呼び捨てで構いません。お父様達には文句を言わせませんので、ディー先生の模試で満点をとったご褒美としてお願いします」
「わっ、私もさん付けでなく呼び捨てでお願いします!!」
様付けに不満げなシャル様に続いてレティさんも呼び捨てを再び希望した。それはご褒美なのかと突っ込みたかったが、このままでは授業を進められない。やれやれ、仕方ない。
「わかりました。僕の授業中に限って、シャル様…コホンッ、シャルの希望に沿うことにします。では話を戻します。シャル、【魔術】とはなんでしょうか?」
「【魔術】とは術者が魔力を使って適性属性の望む現象を発生させる技術です」
呼び直した再びの俺の問いに気を良くしたシャルが間髪入れずに教科書に書かれている模範的な答えを即答してきた。
「今の一般常識ではそれで正解です。しかし、魔術使いではなく、魔術師以上を目指すのであればその答えでは僕は不十分と考えています。
それから、常識は時代の情勢や住んでいる場所などで変化するのを忘れないでください。世の中、常識や良識をどこかに置いてきた輩はたくさんいるのも覚えておいてください。
また、本当に重要な知識は多くの人に知れ渡ると不都合が生じるため、知り得ている人達が意図的に隠していたり、誤った情報を混ぜて広めているものがありますので注意してください。
話しを戻しますが、今の説明では詳しい過程の部分が省かれてしまっていることから、専門家である魔術師の答えとして不十分です。とはいえ、僕の持論ですから、あくまで参考として聴いてください。
別に知らないからといって死ぬことはありませんし、シャルが答えてくれた答えで満足して魔術師を名乗っている人はそれこそ大勢います。また、今後更に魔術の研究が進むことで間違いと言われる可能性もあります。ただ、知ることでそれまでとは違ったモノが見えてくるかもしれませんので、教授する立場としては是非、頭の片隅に置いておいて欲しいです。
僕の考えでは[【魔術】は術者が脳内に記憶している術式を呼び起こし、魔力を流して世界の法則に干渉し、自身が望む事象を発生させる専門技術]です」
俺の説明を聴いた2人は驚きつつ、言葉をかみしめている様に頷いて手元のノートに書いている。
大半の魔術師を名乗る魔術使いはシャルが言った内容で思考停止して、術式の改良のための思考錯誤を行わず、最初に覚えた術式しか盲目的に使わない。しかも、学園長世代の魔術師が広めた術式が全く変わらずに普及しているため、実はある条件を突くことで使用不能にできる。
けれども、現状そのことに気づいている者は俺が知る限りほとんどいない。あの教授ですら俺が指摘するまで気づいていなかった位だ。
「魔術が使えないときは内的原因と外的原因があります。
まず、#内的__・__#原因は展開する術式自体に誤りがあるか、術式を正しく記憶できていないか、魔力を認識できていないか、術式に魔力を流せないか、発動に必要な魔力が足りないか、術者が正しく魔術行使の意志を持っているかの6点にあると僕は考えています。
特に最後の点の術者の心理状況を多くの術者は軽視しがちです。冷静さを欠いた状況で魔術行使が失敗しやすいことからわかる様に間違いはないと思います。
次に外的原因に区別される内容は呪いや『制約魔術』による阻害、行使に必要な属性の環境魔力の不足、各種『結界』による封印などがあります。これらに関しては後日詳しく触れます」
俺は用意していた自作ホワイトボードに箇条書きしつつ、説明し、2人がノートを取り終えるのを待った。
「では次に、レティ、魔術の全属性を挙げてください」
「はい。基本属性として、火・水・土・風・雷の5属性があり、その上位属性として、それぞれ炎・氷・地・嵐・電の5属性。この他に特殊属性として、光・闇・無の3属性があります」
俺の問いかけにレティはよどみなく正解を告げた。
「はい。正解です。よくできました。レティが言ってくれた13属性が一般的に知られている属性です。
基本属性魔術と上位属性魔術の違いは端的に言えば、威力と消費魔力、術式の複雑さによる発動時間の3点です。
確かに上位属性魔術は威力は基本属性魔術より高いため、双方がぶつかりあえば上位属性魔術が競り勝ちます。しかし、術式が複雑なため、発動に必要な魔力を術式に流すことに時間がかかり、発動が遅れて発動前に先に発動した基本属性魔術に潰されることが多々あります。両方使えるのであれば、上手に使い分ける必要があります。
各属性の間には[相克]と[相生]という関係があります。[相克]とは火属性に対する水属性といった反対属性にある関係のことです。こんな風にですね」
そう言って、俺は右手で火魔術の初歩、拳大の『火球』と左手で水魔術のこれまた初歩、『火球』と同じ大きさの『水球』を作り出して衝突させた。
その光景を見て、なぜかシャルとレティは目を見開いて固まっているが、俺は説明を続けることにした。
「これは相手が使ってくる魔術だけでなく、自分が行使する魔術と行使する場所の属性を知っておく必要があります。例えば、アウロラ公爵領の様に寒い土地では水属性と氷属性の魔術は行使が容易かつ効果的に発動します。しかし、逆に火属性や炎属性の魔術はアウロラ公爵領では発動に時間がかかったり、上手くいかないことがあります。この土地と[相克]の関係について今は頭の片隅に置いて、王立学園に入学してから勉強してください」
これ以上深く解説するには残念ながら、時間が足りないので割愛するしかない。
「もう1つの[相生]は2つの魔術の属性が干渉し合って片方の魔術の威力を上げると言う様な関係を指します。例えば風属性の魔術と火属性魔術を使った場合、火属性魔術の威力が上がるというものです。こんな風にね」
そう言って、俺は先ほど出した拳大の『火球』を再び発生させて、今度はそれよりも2回り程小さい風属性魔術の『風球』を軽く下からぶつけた。すると、『火球』ブワッという音を上げて2回り程大きさを増した。
「[相生]も先に述べた内容を覚えておけば試験では大丈夫です。ただ、[相生]で特に注意しないといけないのは対人戦で自分の行使できる魔術が[相生]関係で相手の魔術を強めてしまう場合です。
単独属性魔術しか使えない場合は魔術戦の負けが確定している状況ですので、絶対に戦闘は避けなければなりません。避けられない場合は援軍を呼び、なんとか時間を稼いで援軍の到着を待つようにしましょう。
もっとも、その状況を避けるために騎士団は作戦行動時に複数属性の攻撃魔導具の保持が認められています。王宮魔術師に至っては2属性以上の取得は必須です」
2人に[相克]と[相生]を教えるのはシャルの問題を解決して、実際に入学試験を受けた場合まず間違いなく実技試験は試験官との模擬戦となるからだ。魔術の[相克]と[相生]を知らなければ、苦戦は必至。下手をすると一方的な展開にもなる恐れがある。
「僕は今後の授業でシャルとレティには一通り全属性の初歩術式を試して複数の属性魔術を覚えてもらいます」
俺の説明に続けた言葉に2人は両目を瞬かせた。
「あの、ディー先生。わたしはアウロラ公爵家の属性である水と氷だけでなく、火、土、風、雷も試しましたができませんでした」
シャルは泣きそうな目で俯いてそう告げ、
「私も、水と風に適性はありますが、初歩魔術が使えるだけです……」
レティも下を向いた状態で悲しげに言う。
「試したという属性魔術の術式は違う作成者のものも試しましたか? 光と闇、無属性魔術は試しましたか? もしかしたら、使えるかもしれませんよ?
先に魔術が使えない内的原因で話したように、術式自体が間違っている可能性がありますので、発動できなかった場合は僕が知っていて使える術式と僕が作った術式を試してもらいますよ」
俺はシャルとレティ、2人の不安を払拭するように笑みを浮かべてそう言った。
返却した模試の答案の見直しを終えたシャル様が唐突に思いつめた表情でそう言った。
「わかりました。シャル様にはきちんとお伝えしましょう」
「そっ、それから、きちんと正解できたら褒めてきゅださい。レティばかりずるいです。ちゃっ、ちゃんと! わっ、わたしも頭を撫でてください!」
俺の返事の後に間髪入れずに顔を赤くしたシャル様は噛みながら要求してきた。
しかも、俺がレティさんのいいところを褒めたことに不満を付け加えてだ。
俺自身としては別に贔屓をしているつもりはない。
俺に褒められて勉強を頑張って王立学園に入学した一昨年の義妹の身長がちょうどレティさんと同じ位だったため、そのときの癖で褒める事がある毎に、撫で易い位置にあるレティさんの頭を撫でてしまっている。シャル様もきちんといい点は褒めているのだが、シャル様ご本人はそう思われていない様だ。
そして、その当のレティさんは俺に頭を撫でられてから何故か放心状態になっている。
「僕がシャル様の頭を撫でるのは流石に不敬では?」
「わたしはディー先生に教えてもらっている立場なので、かまいません! 先生と教え子の関係に生まれで決まる様な身分は持ち出さないでください。わたしは先生に褒められて不服に思うことは絶対にありません!!」
なんでこの子は俺に対して、こうもアグレッシブなのか甚だ疑問だが本人のモチベーションに繋がるならば否はない。
「では失礼します。シャル様、よくできました。筆記試験に関しては問題ありません。シャル様のおかげで僕の授業では実技に比重を置けます。ありがとうございます」
そう言って、俺は本人のご希望に沿ってシャル様の頭を撫でた。
「ふふふっ……えへへ……」
シャル様は俺に撫でられて、嬉しそうに表情を崩された。その表情は事情を知らなければ俺は憲兵…じゃなかった公爵領の治安を護っている騎士団の方々に連行されるのではないかと背筋に冷や汗が出るほどのものだった。
「それでは、授業を始めますが、お2人共実技は魔術を選択するということでいいですか?」
「「はい」」
一頻り撫でてシャル様が満足されてからようやく授業の開始となった。
「わかりました。授業は毎回軽く座学をやった後に実践の実技に入ります。さて、【魔術】とはなんでしょうか、シャル様?」
「むぅ……やっぱりディー先生、わたしに様付けも止めてください。わたしは教授される立場ですから呼び捨てで構いません。お父様達には文句を言わせませんので、ディー先生の模試で満点をとったご褒美としてお願いします」
「わっ、私もさん付けでなく呼び捨てでお願いします!!」
様付けに不満げなシャル様に続いてレティさんも呼び捨てを再び希望した。それはご褒美なのかと突っ込みたかったが、このままでは授業を進められない。やれやれ、仕方ない。
「わかりました。僕の授業中に限って、シャル様…コホンッ、シャルの希望に沿うことにします。では話を戻します。シャル、【魔術】とはなんでしょうか?」
「【魔術】とは術者が魔力を使って適性属性の望む現象を発生させる技術です」
呼び直した再びの俺の問いに気を良くしたシャルが間髪入れずに教科書に書かれている模範的な答えを即答してきた。
「今の一般常識ではそれで正解です。しかし、魔術使いではなく、魔術師以上を目指すのであればその答えでは僕は不十分と考えています。
それから、常識は時代の情勢や住んでいる場所などで変化するのを忘れないでください。世の中、常識や良識をどこかに置いてきた輩はたくさんいるのも覚えておいてください。
また、本当に重要な知識は多くの人に知れ渡ると不都合が生じるため、知り得ている人達が意図的に隠していたり、誤った情報を混ぜて広めているものがありますので注意してください。
話しを戻しますが、今の説明では詳しい過程の部分が省かれてしまっていることから、専門家である魔術師の答えとして不十分です。とはいえ、僕の持論ですから、あくまで参考として聴いてください。
別に知らないからといって死ぬことはありませんし、シャルが答えてくれた答えで満足して魔術師を名乗っている人はそれこそ大勢います。また、今後更に魔術の研究が進むことで間違いと言われる可能性もあります。ただ、知ることでそれまでとは違ったモノが見えてくるかもしれませんので、教授する立場としては是非、頭の片隅に置いておいて欲しいです。
僕の考えでは[【魔術】は術者が脳内に記憶している術式を呼び起こし、魔力を流して世界の法則に干渉し、自身が望む事象を発生させる専門技術]です」
俺の説明を聴いた2人は驚きつつ、言葉をかみしめている様に頷いて手元のノートに書いている。
大半の魔術師を名乗る魔術使いはシャルが言った内容で思考停止して、術式の改良のための思考錯誤を行わず、最初に覚えた術式しか盲目的に使わない。しかも、学園長世代の魔術師が広めた術式が全く変わらずに普及しているため、実はある条件を突くことで使用不能にできる。
けれども、現状そのことに気づいている者は俺が知る限りほとんどいない。あの教授ですら俺が指摘するまで気づいていなかった位だ。
「魔術が使えないときは内的原因と外的原因があります。
まず、#内的__・__#原因は展開する術式自体に誤りがあるか、術式を正しく記憶できていないか、魔力を認識できていないか、術式に魔力を流せないか、発動に必要な魔力が足りないか、術者が正しく魔術行使の意志を持っているかの6点にあると僕は考えています。
特に最後の点の術者の心理状況を多くの術者は軽視しがちです。冷静さを欠いた状況で魔術行使が失敗しやすいことからわかる様に間違いはないと思います。
次に外的原因に区別される内容は呪いや『制約魔術』による阻害、行使に必要な属性の環境魔力の不足、各種『結界』による封印などがあります。これらに関しては後日詳しく触れます」
俺は用意していた自作ホワイトボードに箇条書きしつつ、説明し、2人がノートを取り終えるのを待った。
「では次に、レティ、魔術の全属性を挙げてください」
「はい。基本属性として、火・水・土・風・雷の5属性があり、その上位属性として、それぞれ炎・氷・地・嵐・電の5属性。この他に特殊属性として、光・闇・無の3属性があります」
俺の問いかけにレティはよどみなく正解を告げた。
「はい。正解です。よくできました。レティが言ってくれた13属性が一般的に知られている属性です。
基本属性魔術と上位属性魔術の違いは端的に言えば、威力と消費魔力、術式の複雑さによる発動時間の3点です。
確かに上位属性魔術は威力は基本属性魔術より高いため、双方がぶつかりあえば上位属性魔術が競り勝ちます。しかし、術式が複雑なため、発動に必要な魔力を術式に流すことに時間がかかり、発動が遅れて発動前に先に発動した基本属性魔術に潰されることが多々あります。両方使えるのであれば、上手に使い分ける必要があります。
各属性の間には[相克]と[相生]という関係があります。[相克]とは火属性に対する水属性といった反対属性にある関係のことです。こんな風にですね」
そう言って、俺は右手で火魔術の初歩、拳大の『火球』と左手で水魔術のこれまた初歩、『火球』と同じ大きさの『水球』を作り出して衝突させた。
その光景を見て、なぜかシャルとレティは目を見開いて固まっているが、俺は説明を続けることにした。
「これは相手が使ってくる魔術だけでなく、自分が行使する魔術と行使する場所の属性を知っておく必要があります。例えば、アウロラ公爵領の様に寒い土地では水属性と氷属性の魔術は行使が容易かつ効果的に発動します。しかし、逆に火属性や炎属性の魔術はアウロラ公爵領では発動に時間がかかったり、上手くいかないことがあります。この土地と[相克]の関係について今は頭の片隅に置いて、王立学園に入学してから勉強してください」
これ以上深く解説するには残念ながら、時間が足りないので割愛するしかない。
「もう1つの[相生]は2つの魔術の属性が干渉し合って片方の魔術の威力を上げると言う様な関係を指します。例えば風属性の魔術と火属性魔術を使った場合、火属性魔術の威力が上がるというものです。こんな風にね」
そう言って、俺は先ほど出した拳大の『火球』を再び発生させて、今度はそれよりも2回り程小さい風属性魔術の『風球』を軽く下からぶつけた。すると、『火球』ブワッという音を上げて2回り程大きさを増した。
「[相生]も先に述べた内容を覚えておけば試験では大丈夫です。ただ、[相生]で特に注意しないといけないのは対人戦で自分の行使できる魔術が[相生]関係で相手の魔術を強めてしまう場合です。
単独属性魔術しか使えない場合は魔術戦の負けが確定している状況ですので、絶対に戦闘は避けなければなりません。避けられない場合は援軍を呼び、なんとか時間を稼いで援軍の到着を待つようにしましょう。
もっとも、その状況を避けるために騎士団は作戦行動時に複数属性の攻撃魔導具の保持が認められています。王宮魔術師に至っては2属性以上の取得は必須です」
2人に[相克]と[相生]を教えるのはシャルの問題を解決して、実際に入学試験を受けた場合まず間違いなく実技試験は試験官との模擬戦となるからだ。魔術の[相克]と[相生]を知らなければ、苦戦は必至。下手をすると一方的な展開にもなる恐れがある。
「僕は今後の授業でシャルとレティには一通り全属性の初歩術式を試して複数の属性魔術を覚えてもらいます」
俺の説明に続けた言葉に2人は両目を瞬かせた。
「あの、ディー先生。わたしはアウロラ公爵家の属性である水と氷だけでなく、火、土、風、雷も試しましたができませんでした」
シャルは泣きそうな目で俯いてそう告げ、
「私も、水と風に適性はありますが、初歩魔術が使えるだけです……」
レティも下を向いた状態で悲しげに言う。
「試したという属性魔術の術式は違う作成者のものも試しましたか? 光と闇、無属性魔術は試しましたか? もしかしたら、使えるかもしれませんよ?
先に魔術が使えない内的原因で話したように、術式自体が間違っている可能性がありますので、発動できなかった場合は僕が知っていて使える術式と僕が作った術式を試してもらいますよ」
俺はシャルとレティ、2人の不安を払拭するように笑みを浮かべてそう言った。
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