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前日譚 誕生日の贈り物〜魔導具と次期サイフィス公爵の兄〜ロザリア公爵令嬢視点
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その日、私、ロザリア・サイフィスはヴァレンヌ王国のサイフィス公爵家に生まれてから15回目の誕生日を迎えました。
私の誕生日は丁度、来月卒業する学園の卒業式の1月前でした。
「ロザリアお嬢様、少々お待ちください」
王城で陛下と王妃様から祝いの言葉を賜り、屋敷に戻って、私室で休もうとしたところ、私はお父様が子供の頃からサイフィス公爵家に仕えている古参の執事であるパーカスが呼び止められました。
「なにかしら? パーカス?」
「今年も『アル』と名乗る冒険者名義で薔薇の花束が只今届きました」
そう言う彼の手には私に贈られた桃色の花弁の薔薇5本の花束がありました。
「ありがとう……いい香りね。アイラ、早速、私の執務室の花瓶にこの薔薇を活けておいて」
「はい、畏まりました」
私の後ろに控えていた専属侍女のアイラに、パーカスから受け取った薔薇の花束を私は預けました。
「お嬢様……」
パーカスは私に咎める様な視線を送ってきます。
私が贈り主の彼、アルと知り合ってから、パーカスとのこのやりとりは彼から私宛の荷物が届く度に恒例となっています。パーカスも私の面倒を小さな頃から見ているだけあって、アルに対する私の気持ちに気づいています。
パーカスは立場上、主人の娘であり、今は次期王妃という立場の私が婚約者ではない異性に気持ちを傾けているという貴族女性として貞節を疑われる醜聞が流されかねない状況は避けなければなりません。
ですから、形とはいえ、パーカスは私を注意しないわけにはいかないのです。
「大丈夫です。パーカス。私の立場はきちんと理解していますよ」
内心私は苦笑いしながら、パーカスにそう答えました。
「左様ですか。もちろん私もお嬢様のお言葉を信じます。ですが、お嬢様は王国の将来を支えるお立場ですので、注意を怠るわけには参りません。何卒、ご容赦ください」
そう言って、パーカスは私に頭を下げました。
「ええ、わかっているわ。頭をあげて。他に何かあるかしら?」
「はい。第2王子のアルトリウス殿下よりお手紙と贈り物が届いております。贈り物は【必ず本日中に食べるように】と言付かっております」
「わかったわ。お母様はどちらにいらっしゃるのかしら?」
「奥様はサロンにいらっしゃいます。ルーシュ様も既に本日の業務を終えられて、奥様と共におられます」
「そう、私も着替えたらサロンに行きます。お2人にはサロンでお待ちいただいて、殿下からいただいたものを紅茶と一緒にサロンに運ぶ様に」
「畏まりました」
パーカスは恭しく一礼して私の側を離れていきました。
私はサロンにいらっしゃるお母様とお兄様をあまり待たせないため、駆け出したい気持ちを抑えて、王国淑女の振る舞いとして許容される限界の速度の早足で侍女を連れて急いで自室に戻って着替えました。
◆◆◆
「ただいま戻りました。お母様、お兄様」
「お帰りなさい、ローザ」
「お帰り、ローザ」
丁寧に編み込んだ輝く銀髪と澄んだ空の青い瞳をもつお母様が穏やかな微笑みで私を迎えてくださいました。
私はお母様譲りのこの銀髪で、瞳はお父様譲りの鋭い碧眼です。対して、お兄様は髪はお父様譲りの金髪で瞳はお母様譲りのタレ目がちなサファイアの様な青い瞳です。
「ローザ様、こちらがアルトリウス様から贈られた品になります」
そう言ってパーカスが一番長い辺40cmはある白い直方体の箱を運び、私達が囲むテーブルの上に静かに置きました。
「ほほう、これは氷の魔法石か。ふむふむ、なるほど……」
お兄様が白い直方体の箱と共に殿下から贈られたその下トレイに付いている魔法石に気づき、なにやら見つけたのか箱を持ち上げて、色々確認し始めました。
「あの、お兄様?」
「はッ!? ごめんローザ。非常に興味深いものがあって、つい見入ってしまったよ。あははは」
そう言ってお兄様は苦笑いを返してきました。
ルーシュお兄様は代々のサイフィス公爵家当主に相応しい実力をもつ魔術師で、私より一歳年上です。
お兄様は学園在学中に、生活魔術を魔力が遺伝的に低い平民でも使える様にするという理想の下、魔導具の研究を重ねられていました。そのお考えに強く共感されたアルトリウス殿下と意気投合されました。
お兄様は在学中にいくつもの魔導具を殿下とともに試作して、数多くの失敗を経験されて、遂に念願の安全性の高い平民でも使える魔導具をつくりあげました。
お2人は良き親友であると共に技術を競う好敵手という間柄で、お互い影響しあって切磋琢磨されてます。その関係は今も変わっていないようです。
お兄様は学園を卒業された後はお父様より、次期当主としてのお仕事を実践学ぶため、パーカスを補佐に付けられて任されました。そのため、魔導具に携わる時間が学生の時より今では大幅に減ってしまっています。
けれども、未だにアルトリウス殿下との交流は続けられており、手の空いた時間に浮かんだ構想を練っているという報告を侍従達がしています。また、今も殿下の魔導具開発に刺激されている様です。
「もう、ルーシュったら本当に仕方ないわねぇ。ねぇ、ローザ。アルトリウス殿下の贈り物は何かしら?」
期待に両目を輝かせているお母様。
以前、殿下からのお菓子の贈り物があったときに私には手に負えない量が届けられたので、お母様にそのおすそ分けをしました。おすそ分けしたのは様々な果汁を多様な型で果肉を内包して固めた色取り取りのゼリーでした。
王国では一部を除き砂糖の生産が安定していないため、甘味やお菓子は貴重です。前回はお母様と私は鮮やかで口の中に広がる果実の甘さと果肉の食感でいつしか果物ゼリーの虜になっていました。
そのときを彷彿とさせるお母様のお姿は可愛らしくて、とても私とお兄様の歳の子供がいるとは思えないほど若々しくて可憐です。
「さあ、私には殿下の御心は推し量りかねます。ですので、開けてみましょう。パーカス箱を開けてください」
「畏まりました」
パーカスは私の言葉に応えて、取り出したナイフを一閃。
箱の蓋が後ろに倒れ、側面も開いてTを逆さにした様な形で箱が綺麗に開きました。その中に入っていたのは……
全体を白いホイップクリームに覆われた2段の円柱。アクセントとして、酸味のある赤い宝石の様なスカーレットベリーの大粒の果実が多数、二段重ねの天面に敷き詰められて載せられたホールのショートケーキでした。
そして、その横に衝立で隔てて、魔石で作られた小型の保冷剤で十分冷やされている小さい器に小分けにされたプリンが2段で並べてありました。
「あらあら、まあまあ、本当に素晴らしい光景ねローザ」
満面の笑みで幸せそうな蕩ける表情のお母様が視線がホールショートケーキに釘付けで瞳の中にハートマークが浮かんでいる様に思えます。
「は、母上、はしたないですよ……ヒィッ」
窘めたお兄様が正しいはずなのですが、お母様が一瞬垣間見せた眼光でお兄様は沈黙させられました。
「パーカス、4等分に切り分けてください」
「……畏まりました」
パーカスが危惧して本当によろしいのですかと私に目線で訴えてきましたが、私は笑顔で頷きます。この状態のお母様をこのままにしておく方がこの上なく危険という判断したからです。
「このプリンはパーカス達、侍従達で分けて……」
「いえ、それには及びません。アルトリウス殿下が私達の分も予め用意してくださいました。辞退しようとしたのですが、殿下は私達が辞退することも想定されておりまして、使いの方は殿下から『ロザリア嬢の生誕の慶事だから、彼女を日頃から支えている者達が遠慮する必要はない。美味しいものは大勢で食べたらより美味しく感じるから彼女のためと思って受け取る様に』と言付かっており、そう言われますと私達は殿下の御厚意を受け取らざるを得ませんでした」
パーカスと私の側に控えているアイラ、そして、アイラの母でお母様の専属侍女であるファリアの3人を始め、侍従達は私に頭を下げました。
「ああ、皆、頭をあげてくれ。別に私達は皆を咎めるつもりはない。全くもってアルトリウス殿下らしいお言葉だ」
お兄様がパーカス達に下げた頭を上げる様にいい、苦笑いを浮かべた顔で私に同意を求めてきました。
「ええ、皆の分も殿下が用意してくださったのなら、殿下の御厚意を受け取りましょう……そういえば、パーカスは甘いもの大丈夫なの?」
パーカスは甘いものを食べられなくはないけれども、クッキーといいつつも砂糖の固まりであるお菓子を好んで食べることがないのを思い出したので、パーカスに尋ねました。すると、
「それが、甘いものが得意ではない者達がいることも殿下はご存知の上で、その者達のために『抹茶プリン』という菓子を私共にご用意くださりました」
パーカスはケーキを切り分けて、お皿に取り分ける手を止めずに私に答えました。『抹茶プリン』ですか、興味深いですね。
「さあ、ローザ。殿下のお作りになった新作が気になるのでしょうが、ひとまずそれは置いておいて、まずはこの素敵なケーキをいただきましょう」
綺麗にパーカスが切り分けた色鮮やかなケーキを前に破顔するお母様。
「そうだよ。最初の一口目は今日の主役のローザが食べてくれないと、私達が口にできないよ」
お兄様も爽やかな笑顔で私を促してきました。私はアイラが用意してくれた銀のフォークでケーキの端を切り取って、口に運びました。
すると、口に中にスカーレットベリーの甘酸っぱい果汁とケーキのスポンジに染み込んでいたシロップの甘さ、生クリームの濃厚な甘味が調和して口の中に広がりました。
「あら、ローザがその笑顔を浮かべるのなら期待できそうね……うん、美味しいわね」
私に続いてお母様もケーキを口にされて幸せそうな笑顔を浮かべています。プリンも堪能した私はアイラが淹れてくれた紅茶を飲みながら、殿下へのお礼の手紙の文面をどのようにしようかと考えました。
私の誕生日は丁度、来月卒業する学園の卒業式の1月前でした。
「ロザリアお嬢様、少々お待ちください」
王城で陛下と王妃様から祝いの言葉を賜り、屋敷に戻って、私室で休もうとしたところ、私はお父様が子供の頃からサイフィス公爵家に仕えている古参の執事であるパーカスが呼び止められました。
「なにかしら? パーカス?」
「今年も『アル』と名乗る冒険者名義で薔薇の花束が只今届きました」
そう言う彼の手には私に贈られた桃色の花弁の薔薇5本の花束がありました。
「ありがとう……いい香りね。アイラ、早速、私の執務室の花瓶にこの薔薇を活けておいて」
「はい、畏まりました」
私の後ろに控えていた専属侍女のアイラに、パーカスから受け取った薔薇の花束を私は預けました。
「お嬢様……」
パーカスは私に咎める様な視線を送ってきます。
私が贈り主の彼、アルと知り合ってから、パーカスとのこのやりとりは彼から私宛の荷物が届く度に恒例となっています。パーカスも私の面倒を小さな頃から見ているだけあって、アルに対する私の気持ちに気づいています。
パーカスは立場上、主人の娘であり、今は次期王妃という立場の私が婚約者ではない異性に気持ちを傾けているという貴族女性として貞節を疑われる醜聞が流されかねない状況は避けなければなりません。
ですから、形とはいえ、パーカスは私を注意しないわけにはいかないのです。
「大丈夫です。パーカス。私の立場はきちんと理解していますよ」
内心私は苦笑いしながら、パーカスにそう答えました。
「左様ですか。もちろん私もお嬢様のお言葉を信じます。ですが、お嬢様は王国の将来を支えるお立場ですので、注意を怠るわけには参りません。何卒、ご容赦ください」
そう言って、パーカスは私に頭を下げました。
「ええ、わかっているわ。頭をあげて。他に何かあるかしら?」
「はい。第2王子のアルトリウス殿下よりお手紙と贈り物が届いております。贈り物は【必ず本日中に食べるように】と言付かっております」
「わかったわ。お母様はどちらにいらっしゃるのかしら?」
「奥様はサロンにいらっしゃいます。ルーシュ様も既に本日の業務を終えられて、奥様と共におられます」
「そう、私も着替えたらサロンに行きます。お2人にはサロンでお待ちいただいて、殿下からいただいたものを紅茶と一緒にサロンに運ぶ様に」
「畏まりました」
パーカスは恭しく一礼して私の側を離れていきました。
私はサロンにいらっしゃるお母様とお兄様をあまり待たせないため、駆け出したい気持ちを抑えて、王国淑女の振る舞いとして許容される限界の速度の早足で侍女を連れて急いで自室に戻って着替えました。
◆◆◆
「ただいま戻りました。お母様、お兄様」
「お帰りなさい、ローザ」
「お帰り、ローザ」
丁寧に編み込んだ輝く銀髪と澄んだ空の青い瞳をもつお母様が穏やかな微笑みで私を迎えてくださいました。
私はお母様譲りのこの銀髪で、瞳はお父様譲りの鋭い碧眼です。対して、お兄様は髪はお父様譲りの金髪で瞳はお母様譲りのタレ目がちなサファイアの様な青い瞳です。
「ローザ様、こちらがアルトリウス様から贈られた品になります」
そう言ってパーカスが一番長い辺40cmはある白い直方体の箱を運び、私達が囲むテーブルの上に静かに置きました。
「ほほう、これは氷の魔法石か。ふむふむ、なるほど……」
お兄様が白い直方体の箱と共に殿下から贈られたその下トレイに付いている魔法石に気づき、なにやら見つけたのか箱を持ち上げて、色々確認し始めました。
「あの、お兄様?」
「はッ!? ごめんローザ。非常に興味深いものがあって、つい見入ってしまったよ。あははは」
そう言ってお兄様は苦笑いを返してきました。
ルーシュお兄様は代々のサイフィス公爵家当主に相応しい実力をもつ魔術師で、私より一歳年上です。
お兄様は学園在学中に、生活魔術を魔力が遺伝的に低い平民でも使える様にするという理想の下、魔導具の研究を重ねられていました。そのお考えに強く共感されたアルトリウス殿下と意気投合されました。
お兄様は在学中にいくつもの魔導具を殿下とともに試作して、数多くの失敗を経験されて、遂に念願の安全性の高い平民でも使える魔導具をつくりあげました。
お2人は良き親友であると共に技術を競う好敵手という間柄で、お互い影響しあって切磋琢磨されてます。その関係は今も変わっていないようです。
お兄様は学園を卒業された後はお父様より、次期当主としてのお仕事を実践学ぶため、パーカスを補佐に付けられて任されました。そのため、魔導具に携わる時間が学生の時より今では大幅に減ってしまっています。
けれども、未だにアルトリウス殿下との交流は続けられており、手の空いた時間に浮かんだ構想を練っているという報告を侍従達がしています。また、今も殿下の魔導具開発に刺激されている様です。
「もう、ルーシュったら本当に仕方ないわねぇ。ねぇ、ローザ。アルトリウス殿下の贈り物は何かしら?」
期待に両目を輝かせているお母様。
以前、殿下からのお菓子の贈り物があったときに私には手に負えない量が届けられたので、お母様にそのおすそ分けをしました。おすそ分けしたのは様々な果汁を多様な型で果肉を内包して固めた色取り取りのゼリーでした。
王国では一部を除き砂糖の生産が安定していないため、甘味やお菓子は貴重です。前回はお母様と私は鮮やかで口の中に広がる果実の甘さと果肉の食感でいつしか果物ゼリーの虜になっていました。
そのときを彷彿とさせるお母様のお姿は可愛らしくて、とても私とお兄様の歳の子供がいるとは思えないほど若々しくて可憐です。
「さあ、私には殿下の御心は推し量りかねます。ですので、開けてみましょう。パーカス箱を開けてください」
「畏まりました」
パーカスは私の言葉に応えて、取り出したナイフを一閃。
箱の蓋が後ろに倒れ、側面も開いてTを逆さにした様な形で箱が綺麗に開きました。その中に入っていたのは……
全体を白いホイップクリームに覆われた2段の円柱。アクセントとして、酸味のある赤い宝石の様なスカーレットベリーの大粒の果実が多数、二段重ねの天面に敷き詰められて載せられたホールのショートケーキでした。
そして、その横に衝立で隔てて、魔石で作られた小型の保冷剤で十分冷やされている小さい器に小分けにされたプリンが2段で並べてありました。
「あらあら、まあまあ、本当に素晴らしい光景ねローザ」
満面の笑みで幸せそうな蕩ける表情のお母様が視線がホールショートケーキに釘付けで瞳の中にハートマークが浮かんでいる様に思えます。
「は、母上、はしたないですよ……ヒィッ」
窘めたお兄様が正しいはずなのですが、お母様が一瞬垣間見せた眼光でお兄様は沈黙させられました。
「パーカス、4等分に切り分けてください」
「……畏まりました」
パーカスが危惧して本当によろしいのですかと私に目線で訴えてきましたが、私は笑顔で頷きます。この状態のお母様をこのままにしておく方がこの上なく危険という判断したからです。
「このプリンはパーカス達、侍従達で分けて……」
「いえ、それには及びません。アルトリウス殿下が私達の分も予め用意してくださいました。辞退しようとしたのですが、殿下は私達が辞退することも想定されておりまして、使いの方は殿下から『ロザリア嬢の生誕の慶事だから、彼女を日頃から支えている者達が遠慮する必要はない。美味しいものは大勢で食べたらより美味しく感じるから彼女のためと思って受け取る様に』と言付かっており、そう言われますと私達は殿下の御厚意を受け取らざるを得ませんでした」
パーカスと私の側に控えているアイラ、そして、アイラの母でお母様の専属侍女であるファリアの3人を始め、侍従達は私に頭を下げました。
「ああ、皆、頭をあげてくれ。別に私達は皆を咎めるつもりはない。全くもってアルトリウス殿下らしいお言葉だ」
お兄様がパーカス達に下げた頭を上げる様にいい、苦笑いを浮かべた顔で私に同意を求めてきました。
「ええ、皆の分も殿下が用意してくださったのなら、殿下の御厚意を受け取りましょう……そういえば、パーカスは甘いもの大丈夫なの?」
パーカスは甘いものを食べられなくはないけれども、クッキーといいつつも砂糖の固まりであるお菓子を好んで食べることがないのを思い出したので、パーカスに尋ねました。すると、
「それが、甘いものが得意ではない者達がいることも殿下はご存知の上で、その者達のために『抹茶プリン』という菓子を私共にご用意くださりました」
パーカスはケーキを切り分けて、お皿に取り分ける手を止めずに私に答えました。『抹茶プリン』ですか、興味深いですね。
「さあ、ローザ。殿下のお作りになった新作が気になるのでしょうが、ひとまずそれは置いておいて、まずはこの素敵なケーキをいただきましょう」
綺麗にパーカスが切り分けた色鮮やかなケーキを前に破顔するお母様。
「そうだよ。最初の一口目は今日の主役のローザが食べてくれないと、私達が口にできないよ」
お兄様も爽やかな笑顔で私を促してきました。私はアイラが用意してくれた銀のフォークでケーキの端を切り取って、口に運びました。
すると、口に中にスカーレットベリーの甘酸っぱい果汁とケーキのスポンジに染み込んでいたシロップの甘さ、生クリームの濃厚な甘味が調和して口の中に広がりました。
「あら、ローザがその笑顔を浮かべるのなら期待できそうね……うん、美味しいわね」
私に続いてお母様もケーキを口にされて幸せそうな笑顔を浮かべています。プリンも堪能した私はアイラが淹れてくれた紅茶を飲みながら、殿下へのお礼の手紙の文面をどのようにしようかと考えました。
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