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結婚前の彼の浮気相手がもう身籠っているってどういうこと?

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「結婚してください!」
彼にそう言われた日、私はこの日を一生忘れないと信じた。
「はい!」
彼と出会ったのは、私が働くカフェでのことだった。私は大学4年生、彼は社会人1年目。まだ社会に出て2年も経たないはずの彼は、とても大人に見えた。
「お水です」と緊張気味にテーブルに置いたコップから水を溢しそうになった私を支えてくれた彼に、一瞬で恋をした。
それから3年。私は25歳になり、彼は26歳になった。
「私ね、ずっと思ってたことがあるんだけど」
彼の好きな料理と私の好きな料理をテーブルに並べながら私は彼に言った。
「何?」
私の作ったご飯を美味しそうに食べながら、彼が聞く。
「なんで私と付き合ってくれたの?」
「どうしたの突然?」
「だって、もうすぐ結婚だと考えると、なんか聞きたくなったっていうか…」
「う~ん。なんだろね。わかんないけど、でも好きだったから」
「好きだよ」
彼はそう言って私に笑いかけてくれた。その笑顔がこれからもずっと私にだけ向けられるものだと思ったら、私は嬉しくて仕方がなかった。
食事が終わると二人でソファに座ってテレビを見ながらくつろいだ。すると突然彼が私に言った。
「今夜、いい?」
「え?」
彼は真っ直ぐに私を見つめる。
その意味を理解した瞬間、私の耳は赤く染まった。
「い、いいよ?」
私は頷いた。
彼と私は愛し合う。それは彼にとっても私にとってもとても大事なことだった。彼が求めてくれることが私の自信だったし、彼の全てが私には必要で大切だった。
「あぁんっ!やっ!」
私は彼を求め、彼も私を求めた。お互いの欲望はどんどん大きくなり、いつしか夜の帳が下りていた。
「ねぇ」
行為が終わった後、彼が言った。
「なに?」
私も彼の方を向きながら聞いた。私の声はかすれていたけれど、彼はそれを聞くと微笑んでこう言った。
「愛してるよ」と。
「私も愛してるよ!」
私は彼に抱きついた。彼の温もりを全身で感じることができた。この瞬間を永遠にしたいと心から思った。なのに・・・。

「あなた、自称彼の恋人?」
「誰…ですか?」
お腹の大きな女性が私の家に来た。
「私、彼の本当の恋人です。」
「は?」
どういうことだろう。彼には私しか…
「結婚する予定だったみたいね。私には隠そうとしていたみたいだけど。」
「彼が浮気してたってことですか?」
「ええ。」
頭が真っ白になる。
「それで、何か用ですか?」
「あなたとは別れるそうよ。」
「え?」
何を言っているんだろうか、この人は。
「あなたに彼を責める権利なんてないのよ。彼をそういう風にした原因があるから」
私は何も言えずに彼女の話を聞いていた。
「だからもう二度と彼の前に現れないでね?」
ようやく口を開いた。
「つまりどういうことなんですか?」
「簡単に言うとね、彼は私とあなた、両方と付き合っていた。で、あなたとは結婚するつもりでいた。ところが、彼がこの前私とヤった結果、私のお腹に命がある、ということ。もうあなたたちが結婚したら、彼は幸せには生きていけないわ。」
「私が、何をしたというのですか?なんで、私が諦めなくちゃいけないんですか?」
「だいたい、私の方が早く付き合い始めたのよ。幼馴染だからね。こうして子どもまでできた。早く別れなさいよ!」
「噓でしょ?」
「本当なのよ。じゃあね。」

すぐに彼に連絡した。
「ねぇ、ちょっとどういうこと⁉」
「そ、それは…本当にごめん。結婚を取消させてください…」
「さ、最低!もう私に関わるのやめて!」
「わ、わかった……」
「さようなら!」
そう言って電話を切った。それから彼と一度会い、罵倒しながら別れた。
もう何も残っていなかった。彼との思い出は全部消したから。
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