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異世界到着編

山田一家の決意

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 ぐっパキン!、ぐっパキン!。

 ジャラという音と共に鎖が外れ、小学生高学年ぐらいの女の子が涙を流しながらお礼を言ってくる。

 
 私は気にしないようにと諭しながら次の女の子の鎖を外す。

 鎖を繋げるために熱したのだろう、首回りや胸元が火傷している。

 なんて・・・なんて酷い、何でこんな事が出来るのか、私は彼女たちへの理不尽な暴力、彼女たちの幸せだった生活を奪い取った存在に怒りと悔しさで鎖を外しながら涙が止まらなかった。

 優希は鎖を外された女の子達を順番に治療をしながら、よく頑張ったねと声をかけて洋一と同じように涙を流していた。




 ラルフは一人外れたところで、エルフ達と一緒に泣きながら鎖を外し治療をしている山田夫妻を眺めていると、雄介が飲み物とカップラーメンを持って近づいてきた。

 「お前の親父さん・・・泣きながら鎖切ってるな・・・」

 「えぇ、最高のオヤジでしょ?」

 雄介は洋一や優希の姿を誇らしく思いながら、ラルフに食べ物を進める。

 「飲み物と軽くですが食事を持ってきました」

 「お!悪いな」

 ラルフはその場に座り、食べ物のおかれたお盆をを受け取る。受け取ったコップが紙で出来ている事に驚きつつ飲み物を飲んで目を見開く。

 「うぉ!なんだコレは!甘くて口の中でシュワっと何かが弾けたぞ!」

 「その飲み物はねサイダーって言うの!おいしいでしょ?」

 驚いていたラルフの近くを通りかかったルルがラルフへ説明し、「こっちはラーメンっていう食べ物でとっても美味しいのよ」と笑顔でカップラーメンを薦める。

 「おっおう」

 ラルフは恐る恐るカップラーメンに顔を近ずけて、香りを嗅いだ途端、カッと目を見開き無言で食べ始めた。




 「まぁ!甘くて美味しい!」
 「こっちの食べ物も味が濃いけど美味しい!」

 エルフ達の治療も終わり、それぞれが食事を楽しんでる姿を離れたところで眺めながら、私達家族は今後の事を話し合っていた。

 「あの子達が落ち着くまで当面はウチに居てもらうわよ」

 優希が彼女達の身を案じて提案する。

 「それは構わないんだけど、あの家に十人以上だよ?部屋割りも何も床に雑魚寝になっちゃうよ?」

 私も雄介の意見にウンウンと頷く。

 「部屋はあるから、床に布団を引けば一部屋に六人は寝られるわ」

 ん?

 「え?なに?俺とオヤジは一階のソファで寝るってこと?」

 んん?

 「何いってるのよ!あんな綺麗な女の子達が沢山いる家に男が入れる訳ないでしょ?」

 んんん?

 「ええ!?まさか外で寝るってこと!?」

 雄介が驚き私も驚くが、優希はキャンプだと思えばいいじゃんと言って、全く気にする素振りも見せない。

 ふぅ、やれやれ・・・。優希は言い出したら聞かないからな。

 私は諦めて次の話題を振る「雄介、あの男性は?これからどうするか言ってたか?」

 「ん?ラルフさんのこと?いや、聴いてない。オヤジも行って聞いてみよう」

 あのイケメンはラルフさんって言うのか。

 私は頷き、優希にエルフの女性達を任せてラルフさんの元へ向かった。

 ラルフさんは食事も終わって、これから出発するように装備品の準備をしている所だった。

 「ラルフさん!」

 「おうユースケ、メシ美味かったぜ!あんな美味い飯初めて食ったぜありがとな」

 「ラルフさんみんなの所に戻るんですか?」

 「うん?あぁ、それでちょうどそっちに挨拶しようと思ってたところだ」

 ラルフさんは姿勢を正して私と雄介に向かい「ユースケ、それにヨーイチさんだったな。エルフ達のこと感謝するよ。俺たちじゃエルフ達を助けても、その後の食事や寝床までは準備できなかったしな。ほんと感謝してる。」

 ラルフさんが私に握手を求めながらそう話してくれた。

 「当然のことをしたまでですよ。それよりもう出発されるのですか?」

 「あぁ、時間的にも一旦仲間と合流しないとな。それと、明日になると思うがこっちに戻って来たいんだが・・・いいか?」

 「えぇ!是非戻ってきてください。といっても、何もないですし私も雄介もテント泊になるので、宿泊は自前になっちゃいますがね」

 私は周りを見渡して肩をすくめる。

 「ククッ亭主も追い出されちまったか。まぁ泊まりの準備は問題ねぇよ、じゃお言葉に甘えてお邪魔さして貰うわ」

 ラルフさんはニヤっとイケメンスマイルを残して颯爽と来た道を戻って行った。
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