定年退職後の生活は異世界でした

青山ねこまる

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村づくり 初級編

スライムの実験と珍客万来 2

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 「はい、あーん」

 「あーん」

 いちょう切りされた大根をもぐもぐと食べたミミズク娘は、目をまん丸にしながらごくんと飲み込む。

 「どう?美味しい?」

 「おいしー!」

 私はつぎの具をスプーンにのせてフーフーと冷ましながら聞いてみると、ミミズク娘は満面の笑みで美味しいと答えて次を待つ様に大きく口を開ける。

 はいはい。雄介の赤ん坊時代を思い出すなぁ。

 「はいどーぞ」

 次は人参と豚肉をのせて食べさせたげると、満足そうに目を細めながらもぐもぐと食べ始める。

 「あら~可愛いわねぇ。あなた、この子はどうしたの?」

 優希がお盆を持ってアマンダの隣に座り、ミミズク娘の頭を優しく撫でてから私に聞いてきた。

 「どうしたって言われても、ルル達のお友達じゃないのか?」

 私が次の具をのせて冷ましながら優希に答える。

 「え?そうなの?」

 優希が驚きつつ「ルルちゃん達ちょっと良い?」と、ルル達年少組のテーブルに声を掛けてみんなを呼び寄せる。

 なにー、と元気な返事とともに年少組がわらわらと集まり、私が食べさせているミミズク娘を見て全員が不思議そうな顔をする。

 「優希お母さんどうしたの?ってその子、誰?」

 「あれ?ルル達のお友達じゃないの?」

 優希が聞き返すと全員プルプルと顔を左右に振って否定した。

 おっとー、これは迷子かぁ。

 私はミミズク娘にご飯を食べさせつつ、「君のお名前は何て言うのかな?」と聞いてみた。

 ミミズク娘はキョトンとしながら、首をフクロウの様に傾げる。

 おおぅ!傾げるってレベルの角度じゃないぞ。

 「君のお名前は?」

 私がもう一度聞いてみたが、首をかしげるばかりで答えが返ってこない。

 「そおかぁ、お名前わかんないかぁ」

 ミミズク娘に最後のひと口を食べさせたあと、私はため息混じりにどうする?と優希に目線で質問する。

 優希は肩を窄め、ルル達年少組にミミズク娘と一緒に部屋で遊んでおいでと送り出し「今日は遅いから一晩泊めて明日ご両親を探しましょ」と言い、自分のご飯を食べ始めた。




 優希にミミズク娘と遊んでおいでと言われた、ルル、レイチェル、ルナ、ミラーの年少組は女の子を連れて家の方へ向かって行った。

「私はルルって言うの、あなたのお名前は?」

 ルルの質問にミミズク娘は「名前わかんない」と答えつつ興味深そうに家を見ていると、急に首をぐるんと後ろに回し森の一点を見つめて「あ!パパとママだ!じゃ帰るねー!」と言って両手の翼を広げて走り出し、バサッと翼を羽ばたいたところで身体がフワッと浮き上がったと思ったら、そのまま森の方へ飛んで行ってしまった。

 「「「・・・・」」」

 突然目の前の女の子の首が180度後ろに回り空を飛んで行ってしまった出来事に、ルル達はしばらく呆然として、ハッと気が付いたミラーが優希達に事情を説明したことで、この珍事件の幕を閉じた。

 その晩、女の子の首が後ろに回るという怪奇現象を見た四人は夜中トイレに行く事が出来ず、残念ながらおねしょと言う名誉の負傷を負った一名がいた事は伏せておくことにする。




 「昨日のアレ、多分ハーピーじゃねぇかな」

 朝食を食べ終わったラルフがコーヒーを飲みながら教えてくれた。

 「ハーピー?ですか?」

 雄介が目玉焼きを食べながらラルフに聞き返す。

 「あぁ、と言っても俺たちも初めて見たから正しいか解らんが、冒険者ギルドの魔物図鑑には似た特徴の魔物が載ってたぜ?」

 「え!あの子魔物なの?」

 優希が味噌汁片手にびっくりしている。

 「うーん、確かハーピーは醜い容姿で人を襲うって書いてあったと思うから、特徴が似てるだけで別の種族かもしれないけど」

 ミリーがご飯に納豆をかけながら話に加わり、マシューへ納豆の入った器を回す。

 マシューは、うぇっと顔をしかめてそのままダンゴへパスしてダンゴはどんぶりご飯へ豪快に納豆を放り込む。

 「まぁ、何が襲ってきてもワシらが返り討ちにすれば済むことじゃい。それよりも今日からワシとマシューは小屋の建設に入るぞ」

 ダンゴはどんぶりご飯を豪快に掻き込みながら、今日からの予定を話し出した。

 「あっ俺の方は水路側へ砂利の敷き詰め工事ね。この調子だと多分明後日ぐらいには開通できそうかな」

 雄介がダンゴに続きたくあんをぽりぽり齧りながら予定を話し、ラルフとミリーは昨日獲ったイノシシ肉の塩漬けを作るとみんなに伝へた。

 私は畑の管理とスライムの観察をすると話した。

 締めは優希となり、今日のお昼はカレーを作るので全員集まって食べるようにと指示が出され、それぞれが作業へ移っていった。




 私は農業コンビのダイアナとアンナと三人で家の裏へ向かい、スライムプールの観察に向かった。

 「うわー、何か酷いことになってません?」

 ダイアナがうわーと顔をしかめながら、ビニールプールの残骸とそれにくっいているスライムを棒で突いている。

 「あー、ビニールを吸収できるなら当然こうなるわなぁ」

 私はビニールプールがあった場所でその残骸に群がっているスライムを見て、自分の浅はかさに思わず苦笑いをしてしまう。

 「取り敢えず、穴を掘ってそこに水を入れてスライム池を作りましょうか」

 アンナはスコップを持ってきて私に手渡しながらそう提案してくれた。

 おぉ。アンナは優しいなぁ。

 「じゃっ私達は畑の手入れをしてきますね」

 アンナとダイアナは天使の様な微笑みをたたえながら畑へ向かって行った。
 
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