定年退職後の生活は異世界でした

青山ねこまる

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村づくり 初級編

山田一家の悲喜交々 3

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 ダイアナのため息と共に畑仕事を終えた私達は、昼食時に優希からミミエルさんとの話の結果を聞き、全員安堵して胸をなでおろした。

 「それで、神殿に関しは何とおしゃっていたんじゃ?」

 ダンゴが神殿の建材に関して聞いてきたので、みんなが優希に注目する。

 みんなに見詰められた優希は、少し困った顔をしてダンゴの質問に答えた。

 「あーそれねぇ、ミミエルさん的には「気持ちの問題なので、どんな建物でも良いのでは?」って言ってましたよ」

 優希の答えにダンゴはため息をついて「職人としては、そういう答えが一番困るんじゃがなぁ」と不満を口にする。

 ダンゴの言いたい事は私も理解できるので、「チャンスがあればニエル様に聴いてみるから、それまではこれまで通りにログハウスの建設を進めましょう」と話をまとめ、ついでにこちらに転移してくる日本人の事を聞いてみた。

 「それで、新しく来る日本人については何か言ってたか?」

 「えぇ、名前は稲田さん。仙台に住んでらっしゃる元農家のご夫婦だそうよ」

 おぉ!農業経験者が来るのは助かるな。

 「それで、いつ頃こちらに来るんだ?」

 「それが月の魔力かどうとうかで、詳しい日程が良く解らないのよ。ただ、転移する際は事前に連絡するから待って欲しいと言ってたわ」

 困った表情で優希が答える。

 「まぁ、私達には解らない何かがあるんだろうね。よし!それじゃお昼ご飯はお終い!みんな後片付けを始めるよ」

 私は優希に頷いて、お昼休憩はお終いと皆んなに伝えてからお昼の後片付けを始めた。
 



 お昼ご飯の片付けも終わり、せめて場所だけでも決めてしまいたいと、私はダンゴとアンナ、それにルルを始めとした年少組を連れて貯水池へ向かって行った。

 「それで洋一さんよ、何処ら辺に神殿を建てる予定じゃ?」

 ダンゴの質問に、私はうーんと唸りながら周辺を見渡す。

 「池の真ん中に建てるのはどうですか?幻想的なイメージになると思うんですけどね」

 私の意見にダンゴは「はぁ?」的な顔をして、

 「こんなちっぽけな池の真ん中に建てても幻想的云々もないじゃろう、お前さんセンスが無いのう」

 ダンゴはフンッと鼻を鳴らして私の意見を却下する。

 「ムムッ、じゃあ他の子たちに聴いてみましょう?」

 私はアンナ達の方を振り返って「神殿はどの辺に建てた方がいいと思う?」と聞いてみた。

 「えぇ!私達で創造神様の神殿の場所を決めて良いんですか?」

 「あぁ、構わないよ。私的には池の真ん中がオススメだけどね」

 アンナ達は私の質問に、眉根を寄せて真剣に話し合い始める。

 それから暫くの時間、あーだこーだとアンナと年少組が話し合いをした後、結論が出たのかアンナが代表して私とダンゴの前に出て池の左奥側へ進み、ここから、こんな感じの大きさでと、木の棒で線を引き始めた。

 「ほう、お前たちは何でその場所を選んだんじゃ?」

 ダンゴの質問に、ルナとミラーが手を繋ぎながら前に出て話し始めた。

 へぇ、二人が積極的な姿を見るのは初めてだ。

 ルナとミリーの二人は元々大人しい性格らしいのだが、今回の事件で更に内向的と言うか、言葉少なくなってしまった様で優希が心配していたのだが、あのダンゴに向かって堂々と説明している姿を見ると、少しは回復してきてるのかと安心する。

 「ほうほう、池の周りを花畑にして、池を囲む様に遊歩道を作ってその先に神殿があると。なるほど、中々良い案じゃな」

 「それで、神殿への道をお花のゲートにしたいの」

 ルナとミラーの説明をダンゴは真剣に聞き入り、最後には感心した様に頷く。

 「うむ、お前さん達の説明は大変判りやすくて良く解った。これで神殿のイメージが固まったわい」

 ダンゴは感心しながら二人の頭を優しく撫でると、二人とも嬉しそうな笑顔で喜んでいる。

 二人の頭から手を離したダンゴは私の方に向き、「さて、洋一さんよぉ、儂はエルフの村への遠征が終わった後、一度自分の国へ帰ることにするぞ」と急に帰国の話を始めた。

 「へ?ダンゴさん、急にどうしたんですか!」

 私が驚いていると、ダンゴは髭をしごきながら、「この土地には職人が全然居らんからの、元々一度帰国して仲間を連れてくるつもりじゃったんじゃ」

 「それに神殿作りじゃ、今の話で石造りの神殿がイメージ出来たからな、石工職人の知り合いも連れてこないといけないからの」

 「帰国って、マシューさん達と同じ国へですか?それは危険では?」

 「いや、人間の国ではなく、儂らドワーフの国じゃ」とダンゴは首を振って答える。

 「あ!ドワーフの国って確か、あの山の麓にあるんですよね?」

 アンナが指差す方には遠くに雪の被った山脈が見える。

 「うむ、ここからだと半月程の距離じゃな」

 ダンゴが事も無げに言う。

 半月って、かなりの距離だよな。

 「まさか、一人で行くとか言わないですよね?」

 「ん?当然一人じゃが?」

 「いやいや!危ないでしょう!」

 私の心配した顔を見たダンゴは、「ガハハ!儂らドワーフ族はそんなにやわじゃないわい!儂は何度もこの森を抜けて帰国しとるわ!」と笑いながら問題ないと話しつつ、今すぐ行くわけじゃないと言って自分の家に帰って行った。
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