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村づくり 初級編
山田一家の悲喜交々 4
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洋一達が神殿建設予定地の選定に出かけた頃、雄介は出発の準備を進めながら一人悶々と悩んでいた。
「あー!一人でグダグダ悩んでもしょうがない!」
雄介は頭をガシガシ掻きながら、意を決したようにタブレットを取り出してミミエルに連絡をとった。
「はい、ミミエルです。あら?今度は雄介さんですか?お久しぶりです」
タブレットに映ったミミエルは微笑みながら雄介に挨拶をする。
「あ、ミミエルさん、その、お忙しいのにすみません」
雄介はミミエルに恐縮しながら画面に頭をさげる。
「いえいえ、ちょうど優希さんに頼まれたお洋服を買いに行くところですから、大丈夫ですよ?」
「それで、雄介さんはどう言ったご用件ですか?」
優しく微笑んでいるミミエルに促され、雄介は意を決して話し出した。
「あの、ミミエルさんに折り入ってご相談なのですが、今朝方母から話があったと思うんですが、その、ニエル様のプレゼントなんですけど、自分には無いんですかね?」
雄介は話しながら大人気ない事を言っている自分が恥ずかしくなって、顔が赤くなっいる。
「フフッ雄介さんは自分自身が直接現場にいたのに、洋一さん、優希さんの様な『若返り』していないのが気になりますか?」
「え、いや、その、そういう訳じゃ・・・」
見返りを求めての行為では無いと心の中で納得していたが、ミミエルに本音の部分を突かれてしまい、益々恥ずかしくなる。
「その・・・すみません」
雄介が顔を真っ赤にして俯いている姿を見て、ミミエルは優しく微笑みながら話しかける。
「雄介さん、人間の心は欲深いものです。私達の様な神では無いのですから、貴方の思っている事は決して恥ずかしい事では無いですよ」
「しかし、言い出した自分が言うのも何ですが、妬みや欲をかくのは良く無いって言うじゃないですか」
「それは程度や考え方の問題ですよ。当然、他人への嫉妬や妬みは負の感情ですから、その事ばかりに囚われてしまうと、自分自身の幸せに気が付かずに不幸な人生を歩んでしまうでしょう」
ミミエルの言葉に雄介は頷く。
「ただ、自分が頑張った結果について何がしかの報酬を求める事は間違っていません。例えば、小さな子供が始めて何かできた時は、父親や母親に褒めて欲しいと求めるでしょ?」
「それは承認欲求の事ですか?」
雄介の言葉にミミエルは頷き、話を続ける。
「その通りです。少し余談になるかも知れませんが、私が地球に来て驚いたのは文明の高さと、それに翻弄されている皆さんでした」
「翻弄ですか?」
「えぇ、簡単に言うと、技術開発の速さと、皆さんの心の成長速度のギャップですかね」
「私は別の世界の住人として俯瞰して見る事が出来るので良く分かるのですが、地球世界の皆さんは小さい時から勉強と競争が始まりますね、それは私達の世界でも同じなのですが、地球の方々は情報量が多すぎて、その過程毎に起きる『小さな承認欲求』を満たす行為を疎かにしているのでは無いかと思います」
「小さな承認欲求ですか?」
「はい、簡単に言うと、情報が多すぎで他の子供と比較して『出来て当たり前』が横行し『褒められる事が少なく』なっているのだと思います。
「その結果、承認欲求が上手く発散されずに溜め込んでしまう子供が増えて、色々な事件を起こしてしまうのではと思います」
雄介はミミエルの話で、動画共有サイト等で起きている事件を思い出す。
「まぁ、確かに目を疑うような事件が増えてますね」
「えぇ、ちょっと余談が長くなってしまいましたが、要は、適度に承認欲求を満たす行為は必要だと言う事です」
雄介はそれがニエル様のプレゼントの件の事かとミミエルに聞いてみた。
「それもあるでしょうが、それ以上に雄介さんの心に引っ掛かっている事があるのでは?」
ミミエルの言葉に雄介は首をかしげる。
「気が付きませんか?雄介さんは今回の件で洋一さんや優希さんに何か言われましたか?」
「いいえ特には・・・!」
あぁ!と雄介は気が付き顔を赤くする。
雄介が理解したと解ったミミエルは、雄介に優しく語りかける。
「そんな風に恥ずかしがる必要はありませんよ。誰しも褒められたい、頼られたいと思うのは当然です。特に雄介さんは前職の影響が強いですから、無理に感情を押し込めてしまいますからね」
「いや、二十歳にもなって何とも情けない・・・」
雄介が益々恥ずかしそうに俯くが、ミミエルは優しく語りかける。
「年齢は関係ありませんよ。それに洋一さんや優希さんはちゃんと解ってますから、素直に話してごらんなさい」
そんなミミエルの言葉に後押しされて、雄介は小さくハイと返事をして通話を切った。
「あー!一人でグダグダ悩んでもしょうがない!」
雄介は頭をガシガシ掻きながら、意を決したようにタブレットを取り出してミミエルに連絡をとった。
「はい、ミミエルです。あら?今度は雄介さんですか?お久しぶりです」
タブレットに映ったミミエルは微笑みながら雄介に挨拶をする。
「あ、ミミエルさん、その、お忙しいのにすみません」
雄介はミミエルに恐縮しながら画面に頭をさげる。
「いえいえ、ちょうど優希さんに頼まれたお洋服を買いに行くところですから、大丈夫ですよ?」
「それで、雄介さんはどう言ったご用件ですか?」
優しく微笑んでいるミミエルに促され、雄介は意を決して話し出した。
「あの、ミミエルさんに折り入ってご相談なのですが、今朝方母から話があったと思うんですが、その、ニエル様のプレゼントなんですけど、自分には無いんですかね?」
雄介は話しながら大人気ない事を言っている自分が恥ずかしくなって、顔が赤くなっいる。
「フフッ雄介さんは自分自身が直接現場にいたのに、洋一さん、優希さんの様な『若返り』していないのが気になりますか?」
「え、いや、その、そういう訳じゃ・・・」
見返りを求めての行為では無いと心の中で納得していたが、ミミエルに本音の部分を突かれてしまい、益々恥ずかしくなる。
「その・・・すみません」
雄介が顔を真っ赤にして俯いている姿を見て、ミミエルは優しく微笑みながら話しかける。
「雄介さん、人間の心は欲深いものです。私達の様な神では無いのですから、貴方の思っている事は決して恥ずかしい事では無いですよ」
「しかし、言い出した自分が言うのも何ですが、妬みや欲をかくのは良く無いって言うじゃないですか」
「それは程度や考え方の問題ですよ。当然、他人への嫉妬や妬みは負の感情ですから、その事ばかりに囚われてしまうと、自分自身の幸せに気が付かずに不幸な人生を歩んでしまうでしょう」
ミミエルの言葉に雄介は頷く。
「ただ、自分が頑張った結果について何がしかの報酬を求める事は間違っていません。例えば、小さな子供が始めて何かできた時は、父親や母親に褒めて欲しいと求めるでしょ?」
「それは承認欲求の事ですか?」
雄介の言葉にミミエルは頷き、話を続ける。
「その通りです。少し余談になるかも知れませんが、私が地球に来て驚いたのは文明の高さと、それに翻弄されている皆さんでした」
「翻弄ですか?」
「えぇ、簡単に言うと、技術開発の速さと、皆さんの心の成長速度のギャップですかね」
「私は別の世界の住人として俯瞰して見る事が出来るので良く分かるのですが、地球世界の皆さんは小さい時から勉強と競争が始まりますね、それは私達の世界でも同じなのですが、地球の方々は情報量が多すぎて、その過程毎に起きる『小さな承認欲求』を満たす行為を疎かにしているのでは無いかと思います」
「小さな承認欲求ですか?」
「はい、簡単に言うと、情報が多すぎで他の子供と比較して『出来て当たり前』が横行し『褒められる事が少なく』なっているのだと思います。
「その結果、承認欲求が上手く発散されずに溜め込んでしまう子供が増えて、色々な事件を起こしてしまうのではと思います」
雄介はミミエルの話で、動画共有サイト等で起きている事件を思い出す。
「まぁ、確かに目を疑うような事件が増えてますね」
「えぇ、ちょっと余談が長くなってしまいましたが、要は、適度に承認欲求を満たす行為は必要だと言う事です」
雄介はそれがニエル様のプレゼントの件の事かとミミエルに聞いてみた。
「それもあるでしょうが、それ以上に雄介さんの心に引っ掛かっている事があるのでは?」
ミミエルの言葉に雄介は首をかしげる。
「気が付きませんか?雄介さんは今回の件で洋一さんや優希さんに何か言われましたか?」
「いいえ特には・・・!」
あぁ!と雄介は気が付き顔を赤くする。
雄介が理解したと解ったミミエルは、雄介に優しく語りかける。
「そんな風に恥ずかしがる必要はありませんよ。誰しも褒められたい、頼られたいと思うのは当然です。特に雄介さんは前職の影響が強いですから、無理に感情を押し込めてしまいますからね」
「いや、二十歳にもなって何とも情けない・・・」
雄介が益々恥ずかしそうに俯くが、ミミエルは優しく語りかける。
「年齢は関係ありませんよ。それに洋一さんや優希さんはちゃんと解ってますから、素直に話してごらんなさい」
そんなミミエルの言葉に後押しされて、雄介は小さくハイと返事をして通話を切った。
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