定年退職後の生活は異世界でした

青山ねこまる

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村づくり 初級編

山田雄介 西へ! 6

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 「おーい!雄介くーん!おべんとー、持ってきたぞー!」

 上空を見上げると、東の方からイーグルが飛んできており、その足の左右にはバスケットを持っている。

 「イーグル君!お弁当持ってきてくれたんだ!ありがとう!」

 「やった!お弁当!」

 雄介とエリサがイーグルに向かって大きく手を振る。

 イーグルはゆっくり旋回しながら高度を下げ、2メートルぐらいの高さで雄介達に向かって飛んでくる。

「雄介君!降ろすよ!上手く受け取って!」

 イーグルは雄介達の頭上を飛び越える軌道から、雄介とエリサに向けてバスケットを投下する。

 「うわ!っとと!」

 「おっおべんと!」

 雄介とエリサは、自分たちの前に投下されたバスケットをあわあわしながら辛うじてキャッチして「ふぅ」と息をついており、ラナは雄介とエリサを見て、自分がキャッチしなくて良かったと胸をなで下ろしていた。

 お弁当を無事に投下したイーグルは、一度大きく旋回した後、雄介達の数メートル手前に着地して、トトトっと小走りになりながら速度を落として雄介達の前に到着した。

 「ふふん!初めてのお使い任務完了!」イーグルは胸を張って嬉しそうに報告する。

 「うん。イーグル君ありがとう!ところで、これって母さんに頼まれたの?」

 「うん?優希ママさんとミリーに頼まれたんだ」

 「なに?ミリーが何だって?」

 ラルフとお昼の準備を始めていたマシューは、ミリーの名前が出た事に驚いてイーグルへ顛末を訪ねた。

 「ミリーはマシューの事が心配だから、美味しいご飯を食べて欲しいと言ってたぞ」

 「マジか!ミリー・・・アイツなんていい女なんだ」

 マシューはバスケットを抱え感動に打ち震え、その横でラナとエリサがヒューヒューと囃し立てている。

 「嫁さんねぇ・・・やっぱ俺も考えようかなぁ」

 感動して体をクネクネしているマシューを横目に、折り畳み式のテーブルをセットしながらラルフは誰にも聞こえない声で呟いていた。

 「準備出来たぜ、メシにしよう」

 雄介達はラルフのセットしたテーブルにバスケットから取り出したサンドイッチを並べ、それぞれのカップにコーヒーを注いだ。

 「わっ私の分もあるかな?」

 イーグルがサンドイッチを見ながらそわそわしている。

 「フフッ、イーグルさん。優希さんからイーグルさんの分もあるよってメモが入ってましたよ」

 ラナがイーグルへ優希が書いたメモを見せると、イーグルは満面の笑顔で「早く食べよう」とみんなを急かし始めた。

 


 木の実採集の向かった年少組が居ない静かな昼食の時間を過ごして、食後のコーヒーを楽しむ。

 うーん。こんな静かな食事は久しぶりだな。

 私は晴れ渡った空を眺めながら、優雅にコーヒーを楽しむ。

 スラ吉もアンナに連れられて散歩に出かけている。

 異世界に来る前もバタバタしてたし、こちらに来てからも忙しかったから、こんな静かな時間は久しぶりだ。

 今日はこの静かな時間を優雅に・・・

 「いつまでボーッとしとるんじゃ!今日から用水路を掘るんじゃろ!とっとと行くぞ!」

 ねじり鉢巻のダンゴがスコップを片手に仁王立ちしている。

 今日はこの静かな時間を優雅「ほら!早くせんか!」

 「・・・ハイ」




 イーグルが持って来てくれたサンドイッチをサクッと食べて、休憩もそこそこに出発する。

 「イーグル、帰る前に一つお願いがあるんだが良いか?」

 ラルフがイーグルに向かって話しかける。

 「ん?なんだ?」

 「そんな大した事じゃねぇんだが、これから向かう先に魔物が居ないか軽く見てきてくれねぇか?」

 「なんだ、そんなことか。良いぞ」

 ラルフの指差す方をみて、イーグルは軽く頷き、バサッと翼を広げて上空へ舞い上がって行った。

 「そんじゃ、俺たちもいくぞ」

 飛び立ったイーグルを確認したラルフは全員に声をかけて、森の中へ足を踏み入れた。

 


 それから二十分程進んだ所で、イーグルから二時間程先にある大きな岩場にオークが四体程居ると報告を受けて、ラルフとマシューは舌打ちをした。

 「ラルフよぉ、そこってアレだろ?」

 「あぁ、今日のキャンプ予定地だ」

 ひとつため息をついたラルフは、ラナとエリサの方を向いて「お嬢ちゃん達、これからオークを倒すが大丈夫か?」と訪ねた。

 ラナとエリサは緊張しながらも「大丈夫です」と頷く。

 それを見たラルフはひとつ頷き「イーグルありがとな、助かったぜ」とイーグルを労う。

 「では、また明日お弁当を持ってくるからな」

 イーグルは地面に置いたバスケットを器用に鍵爪に引っ掛けて村の方向へ飛んで行った。

 「そんじゃ出発だ」

 イーグルを見送った雄介は、ラルフの一声に前を向いて歩き始めた。
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