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新人狩人編
第九話 来客は唐突に
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後日、一人と一匹は工藤彩花を探すためにグループの本部を離れた。住所は既にわかっているが今日は日曜日ということで、本人がどこにいるのか定かではない。
「失礼、工藤彩花に会いたいのですが」
「うちの娘に…ですか?」
玄関先で彩花の母と、詩織が話した。
詩織は手に植木鉢を持ち、レザー質のコートを深く被りながら礼儀正しい口調で喋った。
「娘は…今外出中ですが」
「そうですか、上がって待ってもよろしいでしょうか?」
「えっ、別に構いませんが…」
「感謝します」
「あの…貴方は誰ですか?」
「知り合いです」
幸いにも詩織は警戒されることなく家に上がれた。
詩織は家に上がると、机の上に植木鉢を置いて椅子に座り込んだ。お茶と煎餅が出されると、煎餅を一口齧った。熱いお茶が入ったコップを握ると、植木鉢にそっと注いだ。茎が一瞬身震いしたように見えたが、気づかないだろう。
「あなたは娘とどんな関係?」
煎餅を食べる詩織を見て、母が聞いた。
ハンケチで口元を拭うと、
「まぁ…先輩みたいなものです」
嘘は言っていない。
会ったことがないとはいえ、一応先輩と後輩の関係だ。
「じゃあ連絡してみるわ、お客さんが来てるって」
「わかりました」
どこかへ行くのを確認すると机の上を指で二、三回叩いた。植木鉢の土が少し動くと、小さな顔が現れた。
「行った?」
握りこぶし大のフェーちゃんだ。
「行ったけど土片付けるのだるいから、そこでしばらくいて」
「窮屈だよ~」
「暖かいからいいでしょ」
「じゃあ一時間くらいならここにいてもいいよ」
不満げに行った。
「工藤彩花…魔法少女を部下にする前代未聞の女…」
「怒ってる?」
不気味なオーラを出すフェーちゃんが聞く。
怒ってない、と一蹴すると続けて、
「ただ、ただ、気に入らないだけ」
「なんで?面白いよぉ~」
「言わなくてもあなたならわかるでしょ?」
植木鉢を睨んだ。
煎餅にヒビが走る。
刹那、詩織が机を二回指で叩いた。
同時にフェーちゃんは土の中に隠れて動かなくなった。
「お待たせ~!四時半には帰ってくるって」
「四時半…あと二十分ですね」
椅子から立ち上がると、
「トイレを使っても?」
「すぐそこよ」
「助かります」
* * *
「はぁ………」
詩織は便座に座るとため息をついた。
(工藤彩花は新人のくせに魔法少女を一人捕まえた…四千万の首を、入ってから半年も経たない青二才がどうやって捕まえたというのだ…)
組織内で実力者と謳われている詩織ですらも、加入してから三年経ってようやく一人の魔法少女を捕まえた。
嫉妬───
黒い感情が蠢く。
「嫉妬なんて…無駄なのに」
「何やってんだ私」
詩織は用を足すと水を流してトイレを出た。
リビングから話し声が聞こえた。
(誰か喋ってる…?)
小走りでリビングに行くと、植木鉢から出たフェーちゃんと彩花の母が笑顔で喋っている様子を確認出来た。
「はっ、ちょっ?!」
「しおりちゃんおかえり~」
「詩織ちゃんって言うのね~」
「えっ…と、はい」
見た目が女の子ということを除けばほとんどマンドラゴラのようなフェーちゃんを見て動じていないこの母親は何者なんだ、と詩織は思考を巡らせた。
「その……驚かないんですか?」
「驚くも何も…魔法少女がいるなら、こんな感じの生き物がいてもおかしくないわよ」
「ねー」
「ねーじゃない!何で勝手に出たのさ」
詩織が詰め寄る。フェーちゃんは目を逸らして土を撒き散らしながら母の元へと駆け寄る。
「こら、土が」
「いいのいいの、洗濯すればいいから」
「うちのペットの…フェーちゃんです」
「よろしくねフェッちゃん」
「ままよろしく~」
既に仲良くなっている。
「失礼、工藤彩花に会いたいのですが」
「うちの娘に…ですか?」
玄関先で彩花の母と、詩織が話した。
詩織は手に植木鉢を持ち、レザー質のコートを深く被りながら礼儀正しい口調で喋った。
「娘は…今外出中ですが」
「そうですか、上がって待ってもよろしいでしょうか?」
「えっ、別に構いませんが…」
「感謝します」
「あの…貴方は誰ですか?」
「知り合いです」
幸いにも詩織は警戒されることなく家に上がれた。
詩織は家に上がると、机の上に植木鉢を置いて椅子に座り込んだ。お茶と煎餅が出されると、煎餅を一口齧った。熱いお茶が入ったコップを握ると、植木鉢にそっと注いだ。茎が一瞬身震いしたように見えたが、気づかないだろう。
「あなたは娘とどんな関係?」
煎餅を食べる詩織を見て、母が聞いた。
ハンケチで口元を拭うと、
「まぁ…先輩みたいなものです」
嘘は言っていない。
会ったことがないとはいえ、一応先輩と後輩の関係だ。
「じゃあ連絡してみるわ、お客さんが来てるって」
「わかりました」
どこかへ行くのを確認すると机の上を指で二、三回叩いた。植木鉢の土が少し動くと、小さな顔が現れた。
「行った?」
握りこぶし大のフェーちゃんだ。
「行ったけど土片付けるのだるいから、そこでしばらくいて」
「窮屈だよ~」
「暖かいからいいでしょ」
「じゃあ一時間くらいならここにいてもいいよ」
不満げに行った。
「工藤彩花…魔法少女を部下にする前代未聞の女…」
「怒ってる?」
不気味なオーラを出すフェーちゃんが聞く。
怒ってない、と一蹴すると続けて、
「ただ、ただ、気に入らないだけ」
「なんで?面白いよぉ~」
「言わなくてもあなたならわかるでしょ?」
植木鉢を睨んだ。
煎餅にヒビが走る。
刹那、詩織が机を二回指で叩いた。
同時にフェーちゃんは土の中に隠れて動かなくなった。
「お待たせ~!四時半には帰ってくるって」
「四時半…あと二十分ですね」
椅子から立ち上がると、
「トイレを使っても?」
「すぐそこよ」
「助かります」
* * *
「はぁ………」
詩織は便座に座るとため息をついた。
(工藤彩花は新人のくせに魔法少女を一人捕まえた…四千万の首を、入ってから半年も経たない青二才がどうやって捕まえたというのだ…)
組織内で実力者と謳われている詩織ですらも、加入してから三年経ってようやく一人の魔法少女を捕まえた。
嫉妬───
黒い感情が蠢く。
「嫉妬なんて…無駄なのに」
「何やってんだ私」
詩織は用を足すと水を流してトイレを出た。
リビングから話し声が聞こえた。
(誰か喋ってる…?)
小走りでリビングに行くと、植木鉢から出たフェーちゃんと彩花の母が笑顔で喋っている様子を確認出来た。
「はっ、ちょっ?!」
「しおりちゃんおかえり~」
「詩織ちゃんって言うのね~」
「えっ…と、はい」
見た目が女の子ということを除けばほとんどマンドラゴラのようなフェーちゃんを見て動じていないこの母親は何者なんだ、と詩織は思考を巡らせた。
「その……驚かないんですか?」
「驚くも何も…魔法少女がいるなら、こんな感じの生き物がいてもおかしくないわよ」
「ねー」
「ねーじゃない!何で勝手に出たのさ」
詩織が詰め寄る。フェーちゃんは目を逸らして土を撒き散らしながら母の元へと駆け寄る。
「こら、土が」
「いいのいいの、洗濯すればいいから」
「うちのペットの…フェーちゃんです」
「よろしくねフェッちゃん」
「ままよろしく~」
既に仲良くなっている。
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